長野県の温泉 完全ガイド|湯宿と外湯20選
長野県の温泉の特徴は、湯の数ではなく外湯文化の濃さにある。野沢温泉には13の外湯が、渋温泉には9つの外湯が、別所温泉には3つの外湯が今も残り、いずれも地元の「湯仲間」が管理してきた共同浴場だ。宿に泊まって高い湯に浸かるだけが長野の温泉ではない。
ここでは、泊まれる湯宿11軒と、旅行者が入れる共同浴場・日帰り施設9か所を合わせた20か所を、湯宿を先に、共同浴場を後に並べて紹介する。あわせて、野沢・渋・角間・安代の外湯を個票リンクの一覧としてまとめた。
この記事でわかること
- 長野に温泉が集中する地質的な理由と、山域ごとの湯の違い
- 野沢・渋・別所・下諏訪という外湯文化の温泉地の回り方
- 泊まれる湯宿11軒と共同浴場・日帰り施設9か所、さらに外湯26湯とエリア別の日帰り湯13か所の個票ページ
長野に温泉が多い理由——断層と火山、2つの熱源
長野県の中央を、糸魚川静岡構造線が南北に貫く。県内の温泉は、この大断層と、その周囲に集まる火山群という2つの熱源で説明がつく。
北信には志賀高原と草津白根の火山群があり、野沢・渋・湯田中・山田といった温泉地が並ぶ。ここに湧くのは硫黄泉と硫酸塩・塩化物泉で、湯口では硫黄の匂いが立つ。東信の八ヶ岳、西の北アルプス、南の御嶽も同じく火山性の熱を供給する。
一方、上田や青木村、下諏訪のように火山から離れた土地でも湯は湧く。断層に沿って上がってきた地下水が温められたもので、アルカリ性に振れやすい。田沢温泉 有乳湯の源泉はpH9.4、沓掛温泉はpH9.5で、湯に入るとぬるりとした肌触りがある。同じ長野県でも、北信の硫黄泉と上小のアルカリ泉では、入ったときの感触がまるで違う。
湯温にも幅がある。北信の外湯は熱く、青木村の湯はぬるい。長く浸かって話し込む湯と、短く入って上がる湯が、県内で共存している。
外湯文化の温泉地——野沢・渋・別所・下諏訪
野沢温泉(下高井郡野沢温泉村)
村の中心に「麻釜(おがま)」という熱湯の湧出地があり、住民が野菜を茹でる場として今も使う。村内に13の外湯があり、いずれも湯仲間と呼ばれる住民組織が掃除と管理を担う。旅行者も入れるが、入浴料は決まっておらず賽銭箱への寸志が慣例だ。湯はいずれも硫黄泉で、pHは8〜9のアルカリ側に寄る。
渋温泉(下高井郡山ノ内町)
石畳の温泉街に9つの外湯が並ぶ。原則として宿泊者に鍵が配られる仕組みで、9番目の「大湯」だけは日帰りでも入れる時間帯が設けられている。面白いのは、同じ渋温泉の源泉でも外湯ごとに性格が違うことだ。初湯・大湯・笹の湯・綿の湯はpH4.3〜4.5の酸性側、七操の湯・松の湯・竹の湯・目洗の湯はpH7.5前後の中性で、湯の色も匂いも変わる。
別所温泉(上田市)
塩田平の丘に開けた、「信州の鎌倉」と呼ばれる古湯。大湯・石湯・大師湯という3つの外湯があり、いずれもpH8.5の単純硫黄泉だ。石湯は岩をそのまま浴槽にした造りで、池波正太郎の小説にちなむ石碑が入口に立つ。上田電鉄別所線の終点にあり、車がなくても行ける数少ない温泉地である。
下諏訪温泉(諏訪郡下諏訪町)
中山道と甲州街道が合流する宿場町に湧く。旦過の湯と新湯はいずれもpH8.7で、旦過の湯は高温で知られる。諏訪大社下社の門前という立地で、JR中央本線の下諏訪駅から歩ける。
湯田中渋温泉郷と地獄谷(下高井郡山ノ内町)
横湯川沿いに9つの温泉地が連なる総称が湯田中渋温泉郷だ。その最奥に地獄谷温泉があり、隣接する野猿公苑では猿が湯に浸かる。長野電鉄の湯田中駅が起点になる。湯田中駅から長電バスで約40分上がった志賀高原には熊の湯があり、含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(pH7.5)が源泉かけ流しで注がれる。
信州高山温泉郷(上高井郡高山村)
松川渓谷に沿って、山田・七味・松川渓谷・蕨・子安の湯が点在する。山田温泉の大湯は含硫黄の塩化物・硫酸塩泉で、渓谷の紅葉と組み合わせて訪ねる人が多い。
白骨温泉と浅間温泉(松本市)
白骨は含硫黄の炭酸水素塩泉が空気に触れて白濁する湯で、松本の市街から乗鞍高原へ向かう山中にある。一方の浅間温泉は松本駅からバスで約20分の近さで、アルカリ性単純温泉が湧く。同じ市内でありながら、山の湯と町の湯という対照をなす。
掲載した20か所の選び方
条件は3つある。
- 旅行者が実際に入れること(宿泊者専用の湯と、通年で閉鎖している湯は本編の番号付きリストから外した)
- 泉質・pH・源泉かけ流しの別が、施設ごとの個票ページで確認できること
- 北信・東信・中信・南信に散らし、一つの温泉郷に偏らせないこと
結果は湯宿11軒と共同浴場・日帰り施設9か所になった。番号順は、宿泊できる施設を先に、日帰りの共同浴場を後に置いている。
1. 渋温泉 金具屋(長野県下高井郡山ノ内町)
もっと山深い湯へ——長野の秘湯
本記事は「旅行者が入れること」を条件にしたため、登山道を歩かないと届かない湯や、宿泊予約のできない野湯は外している。長野県の秘湯13選では、到達そのものが体験になる湯を取り上げた。標高約2,150mの本沢温泉「雲上の湯」や、夏山シーズンだけ営業する白馬鑓温泉。高瀬川源流に自然湧出する湯俣温泉も収めた。
https://www.tan-ken.com/ja/blog/74k76s9s_yqc
総まとめ——長野の湯めぐりの組み立て方
長野県は南北に約210kmある。志賀高原と木曽は同じ県内でも車で数時間離れており、一度の旅で県内を横断しようとすると移動だけで終わる。山域を一つか二つに絞りたい。
【北信・山ノ内】 長野電鉄の湯田中駅が起点になる。駅前の楓の湯、歩いて回れる渋温泉の外湯、少し離れた安代・角間の外湯、そして地獄谷温泉 後楽館が、いずれも半日圏に収まる。志賀高原の熊の湯へは湯田中駅から長電バスで約40分で、車で上がるなら11月〜4月中旬はスタッドレスタイヤが要る。公共交通だけで外湯めぐりが成立する、県内でも数少ないエリアだ。
【野沢温泉】 JR飯山駅からバスで約25分。村の中に13の外湯が徒歩圏で散らばっており、宿に荷物を置いて浴衣で回るのが定番の過ごし方になる。外湯は住民の共同管理なので、掃除当番の時間帯は入れないことがある。
【上田・青木・丸子】 上田電鉄別所線の終点が別所温泉で、3つの外湯が徒歩圏にある。青木村の田沢温泉 有乳湯と沓掛温泉 小倉乃湯、丸子の霊泉寺温泉と鹿教湯温泉は、上田駅からバスか車で約30分〜1時間の距離だ。北陸新幹線が使えるので、東京からの日帰りも成立する。
【松本・白骨・乗鞍】 松本駅を起点に、市街の浅間温泉なら約20分、白骨温泉と乗鞍高原なら車かバスで約1時間半かかる。白骨と乗鞍は標高が高く、冬季は道路規制が入る。
【八ヶ岳】 赤岳鉱泉と夏沢鉱泉は登山の拠点を兼ねた宿で、いずれも徒歩でのアプローチが前提になる。赤岳鉱泉の入浴は5月末〜10月末に限られる。茅野駅から美濃戸口・桜平までのアクセス手段と、山道を歩く時間を含めて計画したい。
外湯は入浴料の支払い方が土地ごとに違う。券売機のところ、料金箱に入れるところ、寸志のところがある。小銭を用意しておくと迷わない。営業時間・清掃休止・冬季の道路状況は変わりうるため、各施設の個票ページと公式情報で最新の状態を確認してほしい。
よくある質問(FAQ)
Q. 外湯は旅行者でも入れますか。
温泉地によって扱いが違う。野沢温泉の13の外湯と別所温泉の3つの外湯は、旅行者も入れる。渋温泉の外湯は原則として宿泊者に鍵が配られる仕組みで、日帰りで入れるのは大湯のみとなる時間帯が設けられている。角間・安代の外湯も運用が変わることがあるため、現地の掲示か観光協会の案内を確認したい。
Q. 外湯の入浴料はいくらですか。
料金体系は温泉地ごとに異なる。野沢温泉の外湯は料金箱への寸志が慣例で、下諏訪・別所・青木村などは数百円の定額を券売機か料金箱で支払う方式が中心だ。金額は改定されることがあるため、各施設の個票ページで確認してほしい。
Q. 車がなくても回れますか。
回れるエリアは限られるが、確実にある。代表格は、長野電鉄湯田中駅からの渋・湯田中・地獄谷と、上田電鉄別所線終点の別所温泉だ。湯田中駅からは志賀高原の熊の湯へも長電バスで約40分で行ける。JR下諏訪駅から歩ける下諏訪温泉と、JR飯山駅からバスで入る野沢温泉も加えたい。一方、高山村・秋山郷・八ヶ岳の宿は、車か登山を前提に考えたほうがよい。
Q. 源泉かけ流しの湯はどれですか。
本記事の20か所のうち18か所が源泉かけ流しである。赤岳鉱泉と夏沢鉱泉は標高2,000m級の山小屋で、加温や循環濾過を行っている。外湯一覧の26湯はいずれも源泉かけ流しだ。
Q. 冬でも行けますか。
北信の外湯めぐりは冬こそ本番で、雪の温泉街を浴衣で歩く風景が見られる。ただし白骨・乗鞍・八ヶ岳は道路規制や冬季閉鎖が入る。雪道の運転に不安があるなら、鉄道で行ける野沢・渋・別所・下諏訪に絞るのが安全だ。
注意事項
- 本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ・営業期間等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。