静岡県の秘湯10選——伊豆から南アルプスの源流へ
静岡県の伊豆半島は、日本でも指折りの温泉密集地である。半島そのものが、かつて南方の海に浮かんでいた火山島が、フィリピン海プレートに乗って本州へ衝突してできた特異な土地だ。火山活動と、いく筋も走る断層。この二つの恵みが、狭い半島の各所に多彩な湯を湧かせてきた。修善寺や湯ヶ島のある中伊豆から、下田を擁する南伊豆、駿河湾へ落ち込む西伊豆まで、泉質も景観も一様ではない。
伊豆はまた、文学の舞台でもある。川端康成は湯ヶ島温泉の湯本館に長く逗留し、この地で得た記憶が『伊豆の踊子』へと結実した。旅する踊子の一行が湯に浸かった湯ヶ野温泉の福田家も、小説にその名を刻む。いずれも日本秘湯を守る会に名を連ねる宿だ。
半島を離れると、県中部の山深くにも湯は湧く。安倍川の源流域には梅ヶ島温泉が、大井川の上流には寸又峡温泉と南アルプス赤石温泉があり、いずれも三千メートル級の峰が連なる南アルプスの懐に抱かれている。海辺の温泉とは対照的な、山峡の秘湯である。
静岡の湯は、伊豆半島と南アルプス山麓という、成り立ちの異なる二つの舞台にまたがる。今回は、そのなかから特に個性際立つ10か所を厳選した。中伊豆から南下し、西伊豆の海辺を経て、安倍川・大井川の源流へと遡る順に紹介する。
1. 修善寺温泉 新井旅館(静岡県伊豆市)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11:30 - 14:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
2. 湯ヶ島温泉 湯本館(静岡県伊豆市)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 12:00 - 14:30 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
3. 湯ヶ野温泉 福田家(静岡県賀茂郡河津町)
4. 観音温泉(静岡県下田市)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| × | × | × | × | × | × | × | × |
5. 桜田温泉 山芳園(静岡県賀茂郡松崎町)
6. 大澤温泉 野天風呂 山の家(静岡県賀茂郡松崎町)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 09:00 - 21:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
7. 沢田公園露天風呂(静岡県賀茂郡西伊豆町)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 09:00 - 19:00 | ◯ | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
8. 梅ヶ島温泉 湯の宿いちかわ(静岡県静岡市葵区)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10:00 - 15:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
9. 南アルプス赤石温泉 白樺荘(静岡県静岡市葵区)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 10:00 - 18:00 | ◯ | × | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
10. 寸又峡温泉 翠紅苑(静岡県榛原郡川根本町)
| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 11:30 - 20:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
総まとめ——静岡の湯を巡る前に知っておきたいこと
静岡の秘湯は、中伊豆・南伊豆・西伊豆・安倍川と大井川の源流という4つのエリアに分けると計画を立てやすい。伊豆半島は鉄道とバスで回れる区間があるが、源流部の山峡はレンタカーが前提になる。移動の性格が大きく異なる点を、まず押さえておきたい。
【中伊豆】 修善寺温泉の新井旅館は、明治5年(1872年)創業の宿である。大正から昭和にかけて建てられた木造建築15棟が、国の登録有形文化財に指定されている。湯は源泉を生かした浴槽と循環を併用しており、館全体が源泉かけ流しというわけではない。この点は誤解のないよう押さえておきたい。伊豆箱根鉄道駿豆線の修善寺駅からバスで向かうのが基本だ。同じ中伊豆の湯ヶ島温泉には、川端康成ゆかりの湯本館がある。作家が逗留した部屋が今も残り、日本秘湯を守る会の一軒として湯治の趣を伝える。宿泊が中心のため、日帰り入浴の可否は事前に確認したい。
【南伊豆】 河津町の湯ヶ野温泉にある福田家は、『伊豆の踊子』の舞台として知られる河津川沿いの宿だ。春には河津桜で賑わう一帯にあり、こちらも日本秘湯を守る会に加盟している。下田市の観音温泉は、高アルカリ性の自家源泉を持つ美肌の湯として名高い。pHの高い湯は肌当たりがなめらかで、飲泉やボトル水でも知られる。山あいに宿泊棟が点在する滞在型の温泉である。
【西伊豆】 松崎町には、源泉かけ流しの秘湯が二つある。桜田温泉の山芳園と、那賀川沿いに建つ大澤温泉 野天風呂 山の家だ。いずれも観光地の喧騒から離れた立地で、湯そのものを目当てに訪れる宿である。同じ西伊豆でも、西伊豆町の沢田公園露天風呂は性格が異なる。駿河湾の断崖上に設けられた町営の公衆露天で、宿泊はなく立寄り入浴のみを受け付ける。男女別の浴槽から相模灘ならぬ駿河湾を一望でき、夕日の名所としても知られる。ただし湯づかいの詳細は公式に明示がないため、源泉かけ流しかどうかの断定は避けたい。
【安倍川・大井川の源流と南アルプス】 梅ヶ島温泉の湯の宿いちかわは、安倍川の最上流部に湧く山あいの宿である。静岡市街から北へ車で1時間ほど遡った渓谷にあり、アルカリ性の柔らかな湯が特徴だ。大井川水系に移ると、静岡市葵区の奥、畑薙ダムに近い南アルプス赤石温泉 白樺荘がある。茶臼岳や赤石岳への登山口に位置し、南アルプスを歩く人の拠点として親しまれてきた。市街から遠く、公共交通の便は限られるため、車での訪問が現実的だ。寸又峡温泉の翠紅苑は、「夢の吊り橋」で知られる寸又峡の玄関口に建つ。大井川鐵道の千頭駅からバスでアクセスできる。ただし大浴場は循環と塩素消毒を併用しているため、湯づかいそのものよりも、山峡の景観や散策とあわせて楽しむ湯と考えたい。
エリアをまたいで移動する場合、伊豆半島と南アルプス山麓は同じ静岡県ながら車で数時間離れている。二泊三日以上でエリアを絞って計画するのが現実的だ。いずれの施設も、日帰り入浴の受付可否や営業時間・料金、冬季の道路状況などは変わりうる。訪問前に各施設の公式サイトや観光協会で最新の情報を確認しておきたい。
※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。









