登山でしか行けない秘湯10選【2026年版】|絶景の山岳温泉ガイド
車では行けない。歩いた人だけが湯船にたどり着ける。そんな「登山秘湯」を、全国から10か所厳選した。標高2,100mの雲上露天から、片道2泊3日を要する日本最奥の湯、室堂から徒歩12分で到達できる日本最高所の温泉まで、難易度別に並べている。
この記事でわかること。
- 登山秘湯10湯の標高・コースタイム・難易度・日帰り入浴の可否(比較表つき)
- 自分の登山レベルと季節に合った湯の選び方
- 山の温泉に入るために必要な装備・安全対策・現地でのマナー
なお本記事の施設データ(泉質・料金・営業期間・アクセス)は各温泉の個票ページに集約している。各見出しのリンクから確認してほしい。
登山秘湯の魅力——「到達感」と「絶景」は歩いた分だけ濃くなる
登山秘湯の価値は、湯そのものよりも「そこへ至る過程」にある。数時間から数日歩き、汗と疲労を抱えて湯船に沈む瞬間の解放感は、車で横づけできる温泉では再現できない。標高2,000m級から見下ろす雲海、遮るもののない星空、朝焼けに染まる稜線——それらを湯に浸かりながら眺められる場所は、日本にそれほど多くない。
登山計画に温泉を組み込むと、山行そのものの性格も変わる。ピークハントが目的の縦走に一泊の湯を挟めば、行程に緩急が生まれる。本記事は登山者、そして「歩いてでも入りたい」と考える温泉好きの双方に向けて、難易度順に整理した。
比較表|10湯の標高・コースタイム・難易度
登山口からの片道所要時間と難易度で並べた一覧。難易度は体力・技術・行程日数を総合した目安である。
# | 温泉名 | 所在 | 標高 | 登山口からの片道 | 難易度 | 日帰り入浴 | 営業期間の目安 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 富山県 | 約2,100m | 折立から2泊3日 | ★★★★★ | 可(無料) | 7月中旬〜9月下旬 | |
2 | 長野県 | 約2,100m | 猿倉から4〜5時間 | ★★★★★ | 可 | 7月上旬〜9月下旬 | |
3 | 長野県 | 約2,150m | 稲子湯から2〜3時間 | ★★★★☆ | 可 | 通年(野天風呂は積雪期要確認) | |
4 | 長野県 | 約1,534m | 高瀬ダムから約3時間 | ★★★☆☆ | 可(野湯) | 7月上旬〜10月下旬 | |
5 | 新潟県 | 約1,475m | ロッジから各湯5〜20分 | ★★☆☆☆ | 可 | 3月中旬〜10月下旬 | |
6 | 富山県 | 約2,410m | 室堂から徒歩12分 | ★☆☆☆☆ | 可 | 4月中旬〜11月下旬 | |
7 | 岩手県 | 約1,126m | 車で到達可(栗駒山登山口) | ★☆☆☆☆ | 可 | 4月下旬〜11月上旬 | |
8 | 新潟県 | 約880m | 徒歩約1時間(ツアー) | ★★☆☆☆ | ツアーのみ | 6月上旬〜11月上旬 | |
9 | 栃木県 | 約1,100m | 女夫渕から1〜2時間 | ★★☆☆☆ | 可 | 通年 | |
10 | 草の湯 | 岩手県 | 約1,000m | 歩道入口から約30分 | ★☆☆☆☆ | 可(野湯) | 4月下旬〜10月下旬 |
料金・泉質・かけ流しの別など詳細データは各個票ページに記載している。営業期間・日帰り入浴の受付は年や天候で変わるため、訪れる前に必ず公式情報を確認してほしい。
【超上級者向け】本格的な登山を要する秘湯4選
1. 高天原温泉(富山県)|日本で最も遠い温泉

標高約2,100m/折立から2泊3日/難易度★★★★★
北アルプス最深部、黒部川源流域に湧く。「日本一遠い温泉」と呼ばれ、最短でも2泊3日の本格的な縦走を要する。川沿いの露天風呂は男湯・女湯・混浴の3つ。ミルキーブルーの湯が陽を受けて光る様は、ここまで歩いた者だけへの報酬である。
雲ノ平からの360度の展望、遮蔽物のない星空、そして到達そのものの達成感。一生に一度の目的地として語られ続けている湯だ。宿泊は高天原山荘(要予約)。

2. 白馬鑓温泉(長野県)|標高日本一の自然湧出量を誇る雲上の露天

標高約2,100m/猿倉から4〜5時間/難易度★★★★★
白馬鑓ヶ岳の中腹、標高2,100m地点に自然湧出する。硫黄の香りととろみのある湯、そして白馬三山を正面に望む露天風呂。夜は満天の星、早朝はご来光を湯船から拝める。大出原のお花畑など、道中の高山植物も見どころだ。
2026年シーズンの状況:白馬村観光局の登山道情報(2026年7月10日時点)によると、鑓温泉ルートは通行可能で、鑓温泉上部に雪渓は残るものの特段の危険箇所はないとされている。一方、猿倉駐車場は令和8〜9年度の路面復旧工事のため利用できない(県道白馬岳線・二股〜猿倉は2026年4月24日に開通済み)。また小屋側からは、残雪と悪天候の影響で建設作業に遅れが出ており、当面は売店・喫茶を縮小して営業する旨が告知されている。マイカー以外のアクセス手段の確保を含め、白馬館・白馬村観光局の最新情報を必ず確認してから計画したい。

3. 本沢温泉(長野県)|日本最高所の野天風呂「雲上の湯」

標高約2,150m/稲子湯から2〜3時間/難易度★★★★☆
八ヶ岳連峰、硫黄岳と天狗岳の間に位置する。野天風呂「雲上の湯」は標高2,150mの日本最高所。泉質の異なる湯を2つ持ち、野天は酸性泉、内湯はナトリウム・カルシウム—硫酸塩・炭酸水素塩温泉である。
通年営業の温泉宿としては日本最高所にあたり、冬の雪見風呂を目当てに訪れる登山者も多い。ただし積雪期は本格的な冬山装備が前提で、野天風呂の利用可否も状況次第となる。八ヶ岳縦走の拠点としても使いやすい。

4. 湯俣温泉(長野県)|エメラルドグリーンの川湯と国指定天然記念物
標高約1,534m/高瀬ダムから約3時間/難易度★★★☆☆
槍ヶ岳の北側、高瀬川の源流部に湧く野湯。国の天然記念物に指定された噴湯丘(ふんとうきゅう)で知られ、緑がかった湯が川へ流れ出す光景は他に類を見ない。河原を自分で掘って湯船をつくれる、野趣そのものの温泉である。
槍ヶ岳北鎌尾根への起点でもあり、登山者の通過点として古くから使われてきた。増水時は河原の湯船が消えるため、天候と水量の見極めが必須だ。

【中級者向け】山歩きと組み合わせたい山岳温泉4選
5. 蓮華温泉(新潟県)|4つの野天風呂をめぐる
標高約1,475m/ロッジから各湯5〜20分/難易度★★☆☆☆
白馬岳の新潟県側の登山基地。蓮華温泉ロッジの周囲に「黄金湯」「仙気の湯」「薬師湯」「三国一の湯」の4つの野天風呂が点在し、それぞれ源泉も泉質も異なる。脱衣所のない自然そのままの湯船から、白馬三山の稜線を一望できる。
ロッジまでは糸魚川方面からバスまたは車で到達できるが、野天風呂へは山道を登る必要がある。湯めぐりだけでも半日の行程になる。
6. みくりが池温泉(富山県)|日本最高所の天然温泉

標高約2,410m/室堂から徒歩12分/難易度★☆☆☆☆
立山黒部アルペンルートの室堂平に建つ、日本最高所の天然温泉。地獄谷の源泉を引いた白濁の硫黄泉で、無加水・無加温のかけ流しである。室堂ターミナルから徒歩12分と到達難易度は低く、本格的な登山をしない人でも立山連峰の絶景と山の湯を味わえる。
登山秘湯の入口として最適な一湯。ただし標高2,400m超であり、天候の急変と高山病には注意したい。

7. 須川高原温泉(岩手県)|栗駒山の登山口に湧く1,100年の古湯
標高約1,126m/車で到達可/難易度★☆☆☆☆
栗駒山の岩手県側登山口に位置する。1,100年以上の歴史を持つ古湯で、湧出直後は透明感のある青みを帯びた湯が、時間の経過とともに白濁していく。毎分数千リットル規模の湧出量を誇り、大浴場から露天まで全て源泉かけ流しである。
温泉そのものへは車で到達できるが、栗駒山登山の前後に組み込む使い方が本領。下山後すぐに強酸性の湯へ入れる山は多くない。

8. 梶山元湯(新潟県)|洞窟の中に湧く稀有な湯
標高約880m/徒歩約1時間(ツアー)/難易度★★☆☆☆
雨飾山の麓、天然の洞窟内に湧く温泉。現在は地元ガイドによる体験ツアーでのみ入浴でき、個人での自由な入浴はできない。ぬるめの炭酸を含む湯で、肌触りはやわらかい。洞窟という空間で湯に浸かる経験は、国内でもごく限られた場所でしか得られない。
ツアーは季節限定・要予約。開催状況は年により変わるため、事前に主催者へ確認すること。
【初中級者向け】歩いて入る秘境温泉郷2選
9. 奥鬼怒温泉郷(栃木県)|関東最後の秘湯
標高約1,100m/女夫渕から徒歩1〜2時間/難易度★★☆☆☆
一般車両が入れない山中に4軒の宿が点在する、「関東最後の秘湯」と呼ばれる温泉郷。女夫渕の駐車場から遊歩道を1〜2時間歩く(宿泊者は送迎車を利用できる場合がある)。原生林に囲まれた自然湧出のかけ流しで、鬼怒沼湿原へのハイキングと組み合わせる人も多い。
登山秘湯の中では珍しく通年営業で、宿泊のハードルが低い。冬は雪の回廊のような遊歩道を歩いて到達することになる。


10. 草の湯(岩手県)|八幡平の森に湧く野湯
標高約1,000m/歩道入口から徒歩約30分/難易度★☆☆☆☆
八幡平国立公園内、ブナの森の奥に湧く天然の野湯。乳白色の湯をたたえた素朴な湯船に浸かりながら、八幡平の自然に包まれる。近くには「新草の湯」もあり、温泉ハイキングとして歩ける。
管理された施設ではなく、遊歩道の状況や熊の出没状況によっては近づけないこともある。訪れる前に地元自治体・ビジターセンターの情報を確認してほしい。
番外編|歩いてしかたどり着けない「泊まれる」秘湯
10選には入らないが、車を降りてから歩く必要がある宿泊可能な秘湯を挙げておく。登山とセットで組む一泊の候補として使いやすい。


季節別ガイド|いつ、どの湯へ行くか
春(4〜6月):みくりが池温泉、蓮華温泉が候補。残雪と新緑のコントラストが美しい時期だが、高所には雪が残り軽アイゼンが必要な場面もある。標高差による気温変化が大きく、防寒着は必携。
夏(7〜9月):ほぼ全ての湯が営業する最盛期。高山植物と雲海を狙うならこの時期になる。混雑するため山小屋の予約は早めに。日中は半袖でも過ごせるが、夜間は冷える。
秋(10〜11月):本沢温泉、みくりが池温泉が狙い目。山岳紅葉と湯の組み合わせは一年で最も絵になる。朝晩の冷え込みが厳しく、初雪の可能性も考慮したい。
冬(12〜3月):通年営業の本沢温泉、奥鬼怒温泉郷が選択肢。ただし本沢温泉は本格的な雪山装備と経験が前提で、初中級者が単独で目指す山ではない。
装備チェックリスト
登山装備
- 登山靴(足首を支えるミドルカット以上)
- レインウェア上下(透湿防水素材)
- ザック(日帰り30L/宿泊50L以上)
- ヘッドランプ(予備電池を含む)
- 地図・コンパス(GPSアプリも併用)
- ファーストエイドキット
衣類
- ベースレイヤー(速乾素材。綿は避ける)
- 中間着(フリースなど)
- 防寒着(ダウンジャケット等)
- 帽子・手袋
温泉まわりの持ち物
- 速乾タオル(山小屋では販売がない場合が多い)
- 着替え(下着を含む)
- サンダル(露天まで歩く用)
- ビニール袋(濡れた衣類用)
- 現金(山の温泉は現金のみのことがほとんど)
あると役立つもの:トレッキングポール、日焼け止め・サングラス、行動食、携帯酸素(高所対策)。
安全対策|山の温泉で最も大切なこと
登山計画と届出:登山届を提出し、家族に行程を共有する。緊急連絡先と各山小屋の連絡先は事前に控えておく。山岳保険への加入を強く勧める。
気象判断:登山用の天気予報で稜線の風速まで確認する。悪天候時に無理をしない、雷が近づいたら即座に避難する、視界不良なら引き返す——この3つを守るだけで事故の多くは避けられる。
高山病:頭痛・吐き気・めまいが出たら高度を上げない。ゆっくり歩き、こまめに水分を取る。症状が改善しなければ下山する。標高2,400mのみくりが池温泉、2,100m級の白馬鑓・高天原では現実的なリスクである。
入浴時の注意:長時間の登山直後は脱水気味になっている。入浴前後の水分補給を欠かさず、湯あたりを避けるため長湯はしない。かけ湯をしてから入り、自然湧出の湯船では石鹸・シャンプーを使わない。混浴の露天ではタオル巻きや湯浴み着の可否が施設ごとに異なるため、掲示に従う。
まとめ|レベル別のおすすめ
はじめての登山秘湯:みくりが池温泉(室堂から徒歩12分)、須川高原温泉(車で到達可)、草の湯(徒歩30分)。歩く時間が短く、撤退も容易だ。
中級者:蓮華温泉、奥鬼怒温泉郷、本沢温泉。半日程度の歩行に耐えられるなら射程に入る。本沢温泉は日本最高所の野天という明確な目的地になる。
上級者:白馬鑓温泉、湯俣温泉、そして高天原温泉。特に高天原は2泊3日の縦走を要し、装備・体力・天候判断のすべてが揃って初めて到達できる。
歩いてしか行けない湯は、装備と計画が揃えば誰にでも開かれている。逆に言えば、準備を欠いた者には決してたどり着けない。安全を最優先に、山の秘湯という体験を楽しんでほしい。
よくある質問
Q1. 登山初心者でも入れる秘湯はありますか。 みくりが池温泉は室堂ターミナルから徒歩12分、須川高原温泉は車で登山口まで到達できる。草の湯も歩道入口から30分程度である。まずはこのあたりから始め、蓮華温泉や奥鬼怒温泉郷へ広げていくとよい。
Q2. 日帰りで行ける登山秘湯はどれですか。 みくりが池温泉、須川高原温泉、草の湯は日帰りで十分楽しめる。本沢温泉や蓮華温泉も体力次第で日帰り可能だが、行程に余裕を持たせたい。高天原温泉は宿泊前提と考えてほしい。
Q3. 予約は必要ですか。支払いは現金だけですか。 日帰り入浴は基本的に予約不要だが、宿泊は必ず事前予約が必要である。夏季の山小屋は早期に埋まるため、1〜2か月前の手配を勧める。山中の温泉は現金のみのことが多く、キャッシュレス決済を前提にしないほうがよい。
Q4. 営業期間はいつですか。 多くの山岳温泉は7月〜9月を中心に営業する。本沢温泉と奥鬼怒温泉郷は通年、みくりが池温泉は4月中旬〜11月下旬と幅が広い。いずれも残雪や天候で前後するため、公式情報での確認が前提となる。
Q5. 女性一人でも大丈夫ですか。混浴が不安です。 登山経験があれば単独行も可能だが、行程の長い湯ほど複数人での訪問を勧める。混浴の露天がある施設でも、女性専用の湯船や時間帯を設けている場合が多い。宿泊すれば日帰り客の少ない朝夕に入りやすい。各施設の浴場構成は個票ページで確認できる。
Q6. 温泉の効能はどう考えればよいですか。 本記事で紹介した多くは療養泉の基準を満たしており、神経痛・筋肉痛・関節痛などが適応症として挙げられている。ただし適応症は効果を保証するものではなく、体調や持病によっては入浴を避けるべき場合もある。判断に迷うときは医師に相談してほしい。
Q7. 携帯電話は通じますか。 標高の高い場所や谷筋では電波が不安定、あるいは圏外になる。緊急時に備え、登山届の提出と家族への行程共有を必ず行い、モバイルバッテリーを携行すること。
※各温泉の営業状況・アクセス・料金は変更される場合がある。掲載内容はリサーチ時点の情報であり、訪問前に各施設および自治体・山小屋の公式情報を必ず確認してほしい。




















