【秘湯】霊峰白山と能登半島に抱かれる石川県の秘湯10選

秘湯

石川県は、日本三名山のひとつである霊峰白山を擁し、その山麓には数多くの秘湯が点在している。加賀百万石の伝統が息づく温泉文化と、豊かな自然が育んだ上質な湯を求めて、全国から温泉愛好家が訪れる。今回は、野湯から宿泊可能な秘湯まで、石川県の隠れた名湯を紹介する。

1. 岩間温泉 山崎旅館(白山市)

白山の北側、標高1,000mを越える崖っぷちの林道沿いに佇む、秘湯中の秘湯として知られる一軒宿。日本三名山のひとつ白山の山ふところ、新岩間温泉として明治時代から続く歴史ある温泉宿だ。

宿までのアクセスは白山白川郷ホワイトロード経由で、山深い場所に位置するため、テレビのない静かな環境で過ごしたい人に最適。温泉は源泉温度約50度で、加水・加温・循環を一切行わない100%源泉かけ流しの贅沢な湯だ。

浴槽は内湯が男女別に各1つ、そして屋根が一切ない開放的な混浴露天風呂が1つある。混浴露天風呂では湯巻着用が必須で、夜には満天の星空のもと、天の川を眺めながらの入浴が楽しめる。泉質はナトリウム-塩化物泉で、胃腸病やリウマチ、婦人病などに効果があるとされる。

食事は山奥ながらA5ランクの飛騨牛ステーキプランも用意されており、山の幸と贅沢な食材を組み合わせた料理が味わえる。なお、山崎旅館から登る新岩間温泉ルートの途中には噴泉塔や川沿いの野湯も見られるが、2017年の落石事故以降、元湯・噴泉塔に向かう道は一般車両進入禁止となっている。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=2(男女別各1)、露天=1(混浴)
  • 源泉温度:約50度
  • 加水・加温なし
  • 日帰り入浴:可(大人700円、11:00-18:00、水曜定休)
  • 宿泊:可(1泊2食付10,800円~)
  • 営業期間:4月下旬~11月上旬(ホワイトロードの開通期間に準ずる)

2. 中宮温泉 にしやま旅館(白山市)

白山国立公園白山中宮道入口、標高700mにある中宮温泉は、古くから「鳩の湯」「胃腸の湯」として親しまれてきた秘湯だ。白山の開祖・泰澄大師が傷ついた白鳩が谷川で羽を癒しているのを見つけ、川底から湯が湧いているのを発見したと伝えられる、1,300年以上の歴史を持つ温泉だ。

にしやま旅館は明治2年(1869年)開業の老舗旅館で、日本秘湯を守る会の会員宿でもある。鉄筋5階建ての建物だが、昔ながらの古風な木造りの浴場が魅力で、内湯と露天風呂は男女別に各1つずつ備える。露天風呂から眺める対岸の山々やブナ林の景観は心洗われるものがある。

泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、源泉温度は63度。加水・加温・塩素消毒を一切行わない100%天然温泉だ。この温泉は飲泉も可能で、胃腸に特効があるとされ、朝食の温泉粥は独特の風味があり好評を博している。

料理は山の宿らしく、地元の山で採れた山菜、川魚、きのこ等、昔ながらの素朴な山国料理を家族で真心を込めて提供している。白山白川郷ホワイトロードの絶景を観賞しながら、世界遺産の白川郷や五箇山への道をたどる旅の拠点としても便利だ。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=2(男女別各1)、露天=2(男女別各1)
  • 源泉温度:63度
  • 加水・加温・塩素消毒なし
  • 日帰り入浴:可(大人700円、10:30-14:30)
  • 宿泊:可(1泊2食付16,650円~)
  • 営業期間:通年営業(冬期11月下旬~4月上旬休業)

3. 湯川温泉 龍王閣(七尾市)

七尾市の山奥、のどかな山里に佇む一軒宿で、日本温泉遺産を守る会に認定されている本物の秘湯だ。七尾駅から車で15~20分、崎山地区へ向かう山道を進むと現れる。

最大の特徴は、石川県唯一の天然ラドン含有温泉であること。自家源泉はナトリウム・カルシウム-塩化物泉(含有ラドン)で、泉温46度。加温・加水を一切行わず、地下600mから自噴する源泉を100%かけ流しで直接浴槽に注いでいる。塩素も一切使用していない。

成分総計20,000mg以上という驚異的な濃度で、通常10,000mgを超える温泉でさえ少ないといわれる中、この数値は全国的にも極めて稀少だ。湯船には黄色い湯の花が浮かび、21の効能があるとされる。冷え性、やけど、痔、慢性皮膚病、運動麻痺など幅広い症状に効果があり、飲用では便秘にも良いとされる。

浴槽は小さめで大人3~4人で一杯になる大きさだが、これは源泉の高いクオリティを保つための工夫。無理に大きくしてしまうことで温泉のクオリティを下げないため、創業時から変わらぬスタイルを貫いている。

宿泊予約サイト「じゃらんnet」の利用者が選ぶ「お風呂の良かった宿」で近畿・北陸の旅館部門1位に輝いた実績を持つ。能登の海の幸と山の幸を味わえる料理も評判だ。

  • 泉質:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(含有ラドン)
  • 源泉かけ流し(自噴泉)
  • 浴槽:内湯(小浴槽)
  • 源泉温度:46度
  • 加水・加温・塩素消毒なし
  • 日帰り入浴:可(大人600円、8:30-20:00、火曜定休)
  • 宿泊:可(1泊2食付24,000円~)
  • 営業期間:通年営業

4. 深谷温泉 元湯石屋(金沢市)

金沢市の北部、森本丘陵を流れる深谷川沿いに佇む、寛政元年(1789年)創業の老舗旅館。金沢駅から車でわずか約20分という好立地ながら、山里の静けさ漂う別世界が広がる。百万石の城下町金沢の奥座敷、深谷温泉の元湯として開湯200年の歴史を持つ由緒ある宿だ。

最大の見どころは、大正時代に建てられた野外能舞台で、室町時代から続く能楽を山あいの幻想的な舞台で鑑賞できる。江戸時代より続く加賀藩ゆかりの老舗旅館として、純和風の客室、水芭蕉の咲く庭園、年代ものの調度品など、むかしの佇まいをそのまま残している。

温泉は太古の昔、草木の滋養が溶け込んだ亜炭層を通って湧出するモール泉で、琥珀色をした珈琲のような色合いが特徴。泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉で、低張性弱アルカリ性冷鉱泉。源泉温度12度の鉱泉を加温しているが、メタケイ酸を豊富に含み、滑らかな湯触りが特徴で「美肌の湯」として知られる。宮本武蔵が傷を治癒したとの言い伝えも残る。

内湯と露天風呂があり、大きな窓や露天風呂から四季折々の風景が楽しめる。料理は加賀野菜や日本海の魚介を使った会席料理で、金沢伝統の治部煮や能登牛なども味わえる。

  • 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉(モール泉)
  • 浴槽:内湯、露天風呂
  • 源泉温度:12度(加温あり)
  • 日帰り入浴:可(大人1,000円)
  • 宿泊:可(1泊2食付25,300円~)
  • 営業期間:通年営業

5. 白峰温泉 総湯(白山市)

日本三霊山のひとつである白山のお膝元、国の重要伝統的建造物群保存地区に指定されている白峰地区の中心に位置する日帰り温泉施設。江戸時代は幕府の直轄地だった歴史ある地域にあり、地元木材を活用して建てられた温泉施設だ。

最大の特徴は、全国でも希少な「純重曹泉」であること。天然温泉100%の源泉を利用し、泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉。ローションのようにとろみのある肌触りが特徴で、湯上がりには肌が絹のようにツルツルになることから「絹肌の湯」「美人の湯」との別名がある。

大浴場の眼下には手取川が流れ、露天風呂は岩風呂と檜風呂があり週替わりで楽しめる。露天風呂からは四季折々の山々の風景が眺められ、特に紅葉の季節は格別だ。館内にはサウナも併設され、2階には休憩スペースやマッサージチェアもあり、ゆっくりと寛げる空間となっている。

白峰は白山登山の拠点としても知られ、登山客が多く訪れる。また、伝統的な建築が今なお残る街並み散策と合わせて訪れるのもおすすめだ。

  • 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉(純重曹泉)
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂(岩風呂・檜風呂週替わり)
  • サウナあり
  • 日帰り入浴のみ(大人750円、小学生360円、幼児260円)
  • 営業時間:平日12:00-21:00、土日祝10:00-21:00(受付最終20:30)
  • 定休日:火曜日(祝日の場合は翌日)、年末年始

6. 白山杉の子温泉(白山市)

金沢と白山麓を結ぶ国道157号線沿いにある日帰り温泉。昔、観音様のお告げに従って掘ってみると温泉が出たとの言い伝えがある、知る人ぞ知る隠れた名湯だ。

浴場内にはヒノキの小さな湯船が2つあり、こじんまりとした落ち着いた雰囲気が漂う。泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉(低張性・アルカリ性・高温泉)で、加水や加温などは一切ない100%天然温泉だ。

保温効果に優れ、湯上がり後は体がポカポカになると評判。痛みの緩和効果やリラックス効果も高く、遠くからやってくる常連客も多い。規模は小さいながらも、本物の温泉を求める温泉愛好家から高い評価を得ている。

料金も大人460円とリーズナブルで、地元の人々にも愛される温泉だ。白山麓の自然に囲まれた静かな環境で、純粋な温泉を楽しめる。

  • 泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯2つ
  • 加水・加温なし
  • 日帰り入浴のみ(大人460円、小学生130円、小学生未満50円)
  • 営業時間:10:00-20:00(最終受付19:30)
  • 定休日:火曜日

7. めおと岩温泉 ラクヨウ(白山市)

国道157号線沿いにある日帰り温泉施設。手取川中域にある高さ約10mの2つの奇岩「めおと岩」付近を源泉とし、豊富な湯量を誇る。施設名の「ラクヨウ」は落葉を意味し、自然との調和を感じさせる。

イベントなども多彩に開催する市民派の温泉で、浴槽もゆったりとしている。泉質はカルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉で、さらりとした肌触りが特徴。神経痛や関節痛、五十肩などの改善や病後回復、疲労回復に効き目があるとの評判だ。

登山やスキーの帰りに訪れる常連客で賑わい、のびのびお湯に浸ってリラックスできる。大人400円という手頃な料金設定も魅力で、気軽に立ち寄れる温泉として親しまれている。

  • 泉質:カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
  • 浴槽:内湯
  • 日帰り入浴のみ(大人400円、こども100円、幼児50円)
  • 営業時間:15:00-21:00(土日祝12:00-21:00)
  • 定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)

8. 千丈温泉 清流(白山市)

手取川の支流のほとりにあり、食事や宿泊、各種アクティビティも提供する温泉施設。三方岩岳登山口まで徒歩30分ほどの距離にあり、登山の疲れを癒すのに最適な温泉だ。

広々とした大浴場からは四季折々の風景が眺められる。泉質はアルカリ性単純温泉でpH8.9と高いアルカリ性を示し、無色透明のお湯だ。肌触りがまろやかで、肌の余分な油分や角質を優しく落としてくれる。

ゴシゴシこする必要がなく、ゆっくり浸かるだけで肌がすべすべになると、老若男女を問わず愛されている。宿泊施設も併設されており、ゆっくりと滞在することも可能だ。

  • 泉質:アルカリ性単純温泉
  • 浴槽:大浴場
  • 日帰り入浴:可(大人500円、こども300円、幼児無料、10:00-16:00)
  • 宿泊:可
  • 定休日:火・水曜日(スキーシーズンは火曜休のみ)

9. 手取温泉 バードハミング鳥越 弘法の湯(白山市)

手取峡谷近くの緑豊かな山間にあり、大きなバーベキュー場やテニスコート、レストランなどもあるレジャー施設内の日帰り温泉施設。金沢市内から車で約40分とアクセスも良好だ。

温泉は手取5号泉と手取6号泉の複合温泉になっており、泉質はナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉。リウマチ性疾患や動脈硬化症、高血圧症、神経痛、関節痛、五十肩などさまざまな病気に効き目があるとされる。

サウナも併設されており、充実した設備が魅力。家族連れで遊んだ後の癒しや休息に最適の立ち寄り温泉で、約150台収容可能な広い駐車場も完備している。料金も大人400円とリーズナブルだ。

  • 泉質:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩温泉(複合泉)
  • 浴槽:内湯、サウナあり
  • 日帰り入浴のみ(大人400円、こども100円、幼児50円)
  • 営業時間:12:00-21:00
  • 定休日:水曜日(祝日の場合は翌日)

10. 岩間の噴泉塔群(白山市・野湯)

岩間温泉 山崎旅館から登る新岩間温泉ルートの途中、徒歩約1時間の場所に位置する、川床に熱泉を噴き上げる噴泉塔群。白山登山の上級者コースの途中にあり、途中には川沿いの野湯も見られる秘境中の秘境だ。

高さ数メートルにも達する噴泉塔は、温泉成分が長年にわたって堆積してできた自然の造形物で、白山の火山活動を今に伝える貴重な存在。周辺には複数の野湯があり、野趣あふれる温泉体験ができる。

ただし、2017年10月に落石事故があり、元湯・噴泉塔に向かう道は一般車両進入禁止となっている。訪れる際は必ず最新の情報を確認し、十分な装備と経験を持って臨む必要がある。野湯マニアや温泉愛好家の間では伝説的な存在として知られるが、安全面には十分な配慮が必要だ。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 野湯(整備なし)
  • アクセス:山崎旅館から徒歩約1時間
  • 注意:一般車両進入禁止区域あり、最新情報の確認必須

まとめ

石川県の秘湯は、霊峰白山の恵みを受けた良質な温泉が数多く存在する。日本秘湯を守る会の会員宿から、地元の人々に愛される共同浴場、そして野湯まで、多彩な温泉文化が息づいている。

特に白山周辺の温泉は、源泉かけ流しで加水・加温・塩素消毒なしの本物の温泉が多く、温泉愛好家から高い評価を得ている。能登半島の湯川温泉のように、石川県唯一の天然ラドン含有温泉など、希少な泉質も楽しめる。

金沢の奥座敷・深谷温泉のように、加賀藩ゆかりの歴史と文化を感じられる温泉宿もあり、温泉と合わせて石川の伝統文化に触れることができる。白峰温泉のような重要伝統的建造物群保存地区の中にある温泉では、古き良き日本の風景とともに良質な湯を楽しめる。

季節によって営業期間が限られる温泉も多く、特に白山周辺の温泉は冬期休業や、白山白川郷ホワイトロードの開通期間(例年6月~11月)に営業時間が左右されることもある。訪問前には必ず各施設に最新の営業状況を確認することをおすすめする。

石川県の秘湯は、都会の喧騒を離れ、自然と温泉の恵みに包まれながら、心身ともにリフレッシュできる貴重な場所だ。本物の温泉を求める旅人にとって、石川県は間違いなく訪れる価値のある温泉天国といえるだろう。


※情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。

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