【秘湯】宮崎県の秘湯10選 神話の里に湧く、知られざる名湯巡り

秘湯

宮崎県は、天孫降臨伝説が息づく神話の里として知られ、霧島連山の麓には数多くの温泉が点在している。中でも秘湯と呼ばれる温泉は、豊かな自然に抱かれ、訪れる人々を癒してきた。高濃度炭酸泉や鉄泉など、個性豊かな泉質が楽しめる宮崎県の秘湯を紹介する。

1. 湯之元温泉(高原町)

天孫降臨伝説の地、霧島連山の麓に位置する高原町の奥霧島温泉郷。その中でも湯之元温泉は、明治35年(1902年)創業の歴史ある温泉である。

源泉は1784年(天明4年)に湧出したと伝えられ、日本最古級の炭酸泉として知られる。泉質は高濃度炭酸泉で、源泉温度は22度の冷泉。加温すると透明から飴色に変化するのが特徴だ。浴槽に手を入れると、シュワシュワと気泡が肌を包み込み、次第に身体が温まっていく。全国随一の炭酸濃度を誇り、血行促進効果が高いと評判である。

露天風呂からは岩瀬川のせせらぎが聞こえ、山間の静けさに包まれながら湯浴みを楽しめる。飲用も可能で、慢性消化器病や糖尿病、痛風などに適応するとされる。

  • 泉質:高濃度炭酸泉(ナトリウム-炭酸水素塩泉)
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂
  • 源泉温度:22度
  • 加温あり、加水なし
  • 日帰り入浴:可(大人500円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業(第1・3水曜定休、祝日の場合は翌日)

2. 極楽温泉 匠の宿(高原町)

高千穂峰の麓、標高約1,000mに佇む奥霧島温泉郷の温泉宿。大正初期に開業し、約100年の歴史を持つ。

宿の創業者が「人々を癒せる極楽のような場所をつくりたい」との想いから、この地に温泉を掘りあて「極楽温泉」と名付けた。最大の特徴は、約20トンもの一枚岩をくりぬいた一彫石風呂。重厚感ある岩風呂に、黄金色に輝く鉄泉が満たされる光景は圧巻である。

泉質は高濃度炭酸泉と鉄泉の二種類を楽しめる。黄金色の鉱泉風呂と透明な炭酸泉を交代浴することで、温浴効果がより高まるとされる。露天風呂やサウナ、貸切風呂も備え、にごり湯百選にも選ばれた名湯だ。

料理は宮崎の食材を厳選した山河料理で、囲炉裏を囲んで山女魚や宮崎牛を楽しめる囲炉裏会席も人気である。

  • 泉質:高濃度炭酸泉、含鉄泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂、貸切風呂
  • 源泉温度:22度(炭酸泉)
  • 加温あり
  • 日帰り入浴:可(大人400円、6時~22時、水曜は6時~10時、15時~22時)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

3. 白鳥温泉 上湯(えびの市)

西郷隆盛が征韓論に敗れた後、心身を癒すため3ヶ月間滞在したという歴史ある温泉。えびの高原から県道30号線を市街地に向けて下る途中、標高約600mの白鳥山中腹に位置する。

展望露天風呂からは、約34万年前に形成された加久藤カルデラを起源とする加久藤盆地が眼下に広がり、えびの市街を一望できる。泉質は単純酸性泉で、木の香り漂う情緒豊かな風呂が並ぶ。

特徴的なのは、天然の蒸気を利用した蒸し風呂。本館とは別棟にあり、温泉の地熱を活かした蒸気でじっくりと身体を温める。裏山には「白鳥温泉地獄」と呼ばれる噴気孔があり、もくもくと噴き出す温泉の蒸気に大地のエネルギーを感じられる。

併設された白鳥茶屋では、秘伝の出汁を使ったうどんや天然温泉卵を味わえる。温泉の由来は、日本武尊(ヤマトタケル)の化身である白鳥が飛来したという神話にちなむ。

  • 泉質:単純酸性泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂、蒸し風呂
  • 源泉温度:約60度
  • 加水・加温なし
  • 日帰り入浴:可(大人310円(市内在住)、500円(市外))
  • 宿泊:不可
  • 営業期間:通年営業(7時~20時)

4. 白鳥温泉 下湯(えびの市)

白鳥温泉上湯から約500m下った場所にある姉妹施設。上湯が観光客に人気なのに対し、下湯は地元の人々に愛される温泉である。

自然の中に遊び心を取り入れた魅力ある施設で、森林を吹き抜ける爽やかな風を感じながら入る庭園風露天風呂が人気。内湯、蒸し風呂、貸切風呂も備える。

敷地内には与謝野鉄幹・晶子文学碑があり、昭和4年7月に夫婦でえびの高原を訪れた際、下湯に立ち寄って詠んだ歌が刻まれている。また、多目的グラウンドやアウトドア気分を味わえるケビンなど宿泊施設も充実しており、アクティビティと温泉を組み合わせた滞在が楽しめる。

  • 泉質:単純酸性泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂、蒸し風呂、貸切風呂
  • 源泉温度:約60度
  • 日帰り入浴:可(大人310円(市内)、500円(市外))
  • 宿泊:可(ケビン)
  • 営業期間:通年営業

5. 京町温泉 玉泉館(えびの市)

大正4年(1915年)創業の老舗温泉旅館。宮崎県随一の温泉地として知られる京町温泉郷の中心に位置し、JR吉都線京町温泉駅から徒歩約2分という好立地にある。

名物は「すっぽんぽん風呂」の愛称で親しまれる露天風呂。ごつごつとした岩風呂の脇にはたぬきの置物が鎮座し、奥には洞窟風呂が続く独特な造りとなっている。湯の色はきれいなブルーで、源泉掛け流しの単純泉がとろりとした肌触りで身体を包む。

館内には種田山頭火が訪れた際に詠んだとされる句が飾られており、レトロで昭和の雰囲気漂うロビーや廊下には水彩画や油絵が並ぶ。まるで実家のように寛げる和室・洋室の客室で、24時間入浴可能な温泉を堪能できる。

  • 泉質:単純温泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯(男女別)、露天風呂(貸切)、家族風呂
  • 日帰り入浴:可(大人300円、11時~20時)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業(不定休)

6. えびの高原温泉(えびの市)

標高約1,200mという九州で最も高い場所にある温泉。霧島連山に囲まれた高原地帯に位置し、夏でも涼しく、トレッキングや登山の拠点として人気がある。

泉質は炭酸水素塩泉で、肌をピリッと刺激する酸性泉。リウマチや慢性湿疹などに効果が高いとされる。えびの高原ホテルをはじめとする複数の宿泊施設で温泉を楽しめる。

源泉温度は約43度で、源泉掛け流しの湯を露天風呂や内湯で堪能できる。露天風呂からは韓国岳をはじめとする霧島連山の雄大な景色が広がり、夜には満天の星空が楽しめる。登山やトレッキングで疲れた身体を癒すには最適な温泉だ。

近隣にはえびの高原温泉キャンプ村もあり、天然温泉とキャンプを組み合わせたアウトドア体験ができる。

  • 泉質:炭酸水素塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂、家族風呂
  • 源泉温度:約43度
  • 塩素消毒あり
  • 日帰り入浴:可(施設により異なる)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

7. 北郷温泉 べっぴんの湯の宿 丸新荘(日南市)

日南海岸の奥座敷と呼ばれる北郷温泉郷に位置する温泉宿。鵜戸神宮などがある日南海岸と城下町飫肥の間、猪八重渓谷の緑と田園風景が広がる静かな環境にある。

地下800mから湧出する51度の天然温泉は、炭酸水素塩泉で「べっぴんの湯」の愛称で親しまれる美肌の湯。肌をしっとりと包み込むぬるぬるとした感触が特徴で、美肌効果が高いと女性に人気である。飲用も可能で、慢性消化器病や糖尿病、痛風、肝臓病などに適応するとされる。

内湯と露天風呂にたたえられる茶褐色の湯は、豊富な湯量を誇る源泉掛け流し。女性露天風呂はひっそりと落ち着いた造り、男性は岩風呂式露天風呂となっている。

料理は宮崎の山海の幸を活かした会席で、毎年恒例の伊勢海老祭りや宮崎牛の陶板焼きが評判である。

  • 泉質:炭酸水素塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂
  • 源泉温度:51度
  • 日帰り入浴:可(大人500円、11時~19時50分)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業(不定休)

8. 御池の湯(高原町)

奥霧島温泉郷の一角、御池キャンプ村に隣接する家族風呂専門の温泉施設。2012年3月に開業し、2023年10月にリニューアルオープンした。

源泉は1969年に湧出した自噴温泉で、地下316mから毎分300リットルが湧き出る。古くは霧島東温泉の名で湯治場として親しまれてきた。全13室が貸切の家族風呂となっており、内湯のみの部屋、露天風呂付きの部屋、さらにサウナ付きの部屋まで用途に応じて選べる。

人気の露天風呂付き家族風呂は、内湯・露天・水風呂の3つのお風呂を備え、内湯は客ごとに湯の張替を行い、露天は31度の源泉100%掛け流し、水風呂は18度に設定されている。夏はプール感覚でも楽しめると子供にも好評だ。

サウナ付き家族風呂では「サウナ→水風呂→外気浴」の最高のループを楽しめ、休憩スペースにはテレビや冷蔵庫、電子レンジも完備されている。

  • 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂(家族風呂のみ、全13室)
  • 源泉温度:31度(露天)
  • 日帰り入浴:可(平日11時~22時、土日祝10時~22時、家族風呂料金)
  • 宿泊:不可
  • 営業期間:通年営業(火曜定休)

9. 湯の谷温泉(宮崎市)

宮崎市高岡町の山間部に位置する一軒湯。創業は1792年(寛政4年)と古く、200年以上の歴史を持つ隠れた秘湯である。

裏から湧き出る冷鉱泉を加温して使用しており、泉質は炭酸水素塩泉。とろみのある肌触りで、「超ヌルヌルの湯」として温泉愛好家の間で知られる。湯上がりはさっぱりとした爽快感が得られる。

かつては旅館も営業していたが、現在は日帰り入浴専門施設として地元の人々や秘湯ファンに親しまれている。昭和の雰囲気が残る建物は、大淀川沿いの静かな環境に佇み、ひっそりとした秘湯の風情を漂わせる。

受付では野菜や煎餅などの販売も行われ、昔ながらの温泉場の雰囲気を楽しめる。話好きなご夫婦が営んでおり、温泉の由来について印刷した資料を記念にくれることもある。

  • 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉(冷鉱泉)
  • 加温あり
  • 浴槽:内湯
  • 源泉温度:約20度
  • 日帰り入浴:可(大人420円)
  • 宿泊:不可
  • 営業期間:通年営業

※現在の営業状況については、事前に確認することをおすすめします。

10. 皇子原温泉健康村(高原町)

天孫降臨伝説の地、皇子原公園に隣接する温泉施設。神武天皇がお生まれになった地とされる皇子原に位置し、神話と歴史のロマンを感じられる温泉である。

奥霧島温泉郷の一つで、泉質は炭酸水素塩泉。内湯と露天風呂を備え、霧島連山を望む開放的な眺望が魅力である。館内には食事処もあり、地元の食材を使った料理を楽しめる。

皇子原公園内には、神武天皇をお祀りする皇子原神社や産場石などの史跡が点在し、散策と温泉を組み合わせた一日を過ごせる。春には桜、秋には紅葉が美しく、四季折々の自然を堪能できる。

高千穂峰登山の拠点としても利用され、登山後の疲れを癒す温泉として親しまれている。

  • 泉質:炭酸水素塩泉
  • 浴槽:内湯、露天風呂
  • 日帰り入浴:可(9時~19時30分)
  • 宿泊:不可
  • 営業期間:通年営業(火曜定休)

おわりに

宮崎県の秘湯は、霧島連山の恵みを受けた多彩な泉質と、神話の時代から続く歴史を持つ。高濃度炭酸泉や鉄泉、美肌の湯など、それぞれに個性があり、訪れる人々を癒してきた。

天孫降臨の地で湧き出る温泉に浸かり、神話のロマンと自然の恵みを感じながら、ゆったりとした時間を過ごしてみてはいかがだろうか。


※情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。