佐賀県は、九州の中でも温泉文化が深く根付いた地域であり、1300年以上の歴史を持つ古湯から、日本三大美肌の湯に数えられる名湯まで、個性豊かな温泉地が点在している。本記事では、佐賀県内の秘湯や歴史ある温泉を10件紹介する。
1. 古湯温泉 鶴霊泉(佐賀市)
佐賀市富士町の嘉瀬川沿いに佇む古湯温泉は、約2100年前に秦の始皇帝の命を受けた徐福が発見したと伝えられる古湯だ。その中でも鶴霊泉は、江戸時代に傷ついた鶴が脛を浸して傷を癒したという伝説が残る。
泉質はアルカリ性単純温泉で、pH9.5を超える高アルカリ性が特徴。無色透明でぬるぬるとした柔らかい肌触りの湯は「美肌の湯」とも呼ばれている。名物は天然砂湯で、岩盤から湧き出す温泉の上に砂を敷いた珍しい浴槽となっている。
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯、砂湯、貸切庭園風呂
- 源泉温度:36度
- 加水・加温:加温あり(冬季)
- 日帰り入浴:可(大人1000円)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
2. 古湯温泉 ONCRI/おんくり(佐賀市)
2012年にオープンした古湯温泉の中でも比較的新しい施設。背振山の麓、嘉瀬川清流沿いに位置し、自然豊かな環境の中で温泉を楽しめる。
泉質は単純弱放射能泉で、1日43トンもの豊富な湧出量を誇る自家源泉を使用している。湯処「SHIORI」では、露天風呂をはじめ、箱蒸し風呂、陶器風呂、寝湯など15種類の多彩な浴槽を備える。温泉はぬる湯として知られ、泉温は38度と少しぬるめだが、身体に負担がかからずリラックス効果が高い。
- 泉質:単純弱放射能泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯、露天風呂、箱蒸し風呂、陶器風呂など15種類
- 源泉温度:38度
- 加水・加温:あり
- 日帰り入浴:可(大人1000円)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
3. 熊の川温泉 湯泉郷 温泉館 湯招花(佐賀市)
古湯温泉からやや下流の嘉瀬川沿いにある熊の川温泉は、弘仁12年(821年)に弘法大師が発見したと伝えられる。湯招花は、地下1050メートルから毎分500リットルという西九州最大級の豊富な湧出量を誇る。
泉質は単純弱放射能泉で、ラドンの含有量が九州でも有数。ラドン含有量は16.4マッヘと療養泉基準値の2倍あり、放射能泉としては希少な存在だ。温度は43度で、肌触りはマイルドでヌルヌル感は強くなく、湯上がりはさらっとしている。
- 泉質:単純弱放射能泉(低張性アルカリ性高温泉)
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯(檜大浴場・岩大浴場)、露天風呂、家族風呂
- 源泉温度:43度
- 加水・加温:気温の低い時のみ加温あり
- 日帰り入浴:可(大人1200円)
- 宿泊:不可(日帰り専用施設)
- 営業期間:通年営業
4. 嬉野温泉(嬉野市)
島根県の斐乃上温泉、栃木県の喜連川温泉と並んで「日本三大美肌の湯」に数えられる名湯。奈良時代に編纂された『肥前風土記』にも記載が残る古湯で、江戸時代には長崎街道の宿場町として栄えた。
泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、源泉温度は85度から95度と高温。ナトリウムを多く含む重曹泉が肌の余分な皮脂を落とし、角質化した皮膚を滑らかにする。無色透明でトロトロとした浴感が特徴で、美肌効果が高いとされる。
温泉街には60軒余りの宿が建ち並び、豊玉姫神社や足湯「シーボルトのあし湯」など見どころも多い。名物の温泉湯豆腐は、アルカリ性の温泉水で煮込むことでとろける食感になる。
- 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
- 源泉温度:85~95度
- 効能:リューマチ、神経痛、皮膚病、婦人病など
- 日帰り入浴:各施設により異なる
- 宿泊:可(温泉街に60軒以上の宿)
- 営業期間:通年営業
5. 武雄温泉(武雄市)
約1300年前の『肥前国風土記』にも記載がある歴史ある温泉。神功皇后や宮本武蔵、シーボルトが入浴したという記録も残る。
武雄温泉のシンボルは、竜宮城を思わせる朱塗りの楼門。東京駅を設計した辰野金吾の設計で、大正4年(1915年)に建築され、国の重要文化財に指定されている。釘を一本も使わない天平式楼門として知られる。
泉質はアルカリ性単純温泉で、源泉温度は約52度。無色透明で柔らかな湯ざわりが特徴で、保温性に優れ美肌の湯としても有名。楼門の奥には「元湯」「蓬莱湯」「鷺乃湯」の公衆浴場があり、貸切風呂として利用できる「殿様湯」は江戸時代の鍋島藩主専用の浴場だった。
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 源泉温度:52度
- 効能:神経痛、筋肉痛、関節痛、疲労回復など
- 日帰り入浴:可(元湯450円、蓬莱湯550円など)
- 宿泊:可(温泉街に20数軒の宿)
- 営業期間:通年営業
6. たら竹崎温泉(藤津郡太良町)
有明海西岸、多良岳の麓に湧き出る温泉。亀の瀬温泉、たら竹崎温泉、太良嶽温泉の3つの温泉の総称で、地下約1300メートルから汲み上げた源泉を使用している。
泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉で、泉温は45.5度。無色透明でやや塩味のある湯が特徴で、肌をしっとりなめらかにする美肌効果がある。効能は神経痛、五十肩、慢性消化器痛、冷え性、疲労回復など。飲用は痛風、糖尿病、肝臓病に効能があるとされる。
9軒の温泉宿がほぼすべて有明海を一望できる絶好のロケーションに位置し、展望自慢の宿が多い。さざめく波音を背景に、朝日や夕暮れ時の美しい景色を眺めながらの入浴は格別だ。太良町のキャッチフレーズは「月の引力が見える町」で、日本一の干満差(最大6メートル)を持つ有明海の景観も楽しめる。名物は竹崎カニと竹崎カキ。
- 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩泉
- 源泉温度:45.5度
- 効能:神経痛、五十肩、冷え性、疲労回復など
- 日帰り入浴:各施設により異なる
- 宿泊:可(温泉街に9軒の宿)
- 営業期間:通年営業
7. 古湯温泉 佐賀風雅(佐賀市)
古湯温泉の中でも嘉瀬川のせせらぎが聞こえる静かな立地に位置する宿。古湯温泉特有のぬる湯(38.6度)を楽しめる。
泉質はpH9.69のアルカリ性単純温泉で、美肌の湯として名高い。とろりとした肌あたりが特徴で、露天風呂では季節の風景とともに清流の音が心を整え、夜は星空、朝は柔らかな光に包まれながら贅沢なひとときを過ごせる。
館内ではバーも併設されており、佐賀の地酒やお茶を片手に静かに語らうこともできる。宵のひとときから柔らかな光が差し込む朝まで、時の移ろいと共に過ごす処となっている。
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯、露天風呂
- 源泉温度:38.6度
- 加水・加温:なし
- 日帰り入浴:要確認
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
8. 熊の川温泉 お宿 夢千鳥(佐賀市)
熊の川温泉郷に位置する宿で、弘仁12年(822年)に弘法大師が発見したと伝えられる温泉を楽しめる。昭和41年に国民保養温泉地の指定を受けており、1200年以上の歴史を持つ。
泉質は天然ラドン温泉で、日本でも有数なラドン含有量を誇る。静かな山間の緑が広がる癒しの場所で、日帰り入浴やお食事、宿泊など思いのままにくつろげる。離れのお部屋も用意されており、プライベートな時間を過ごすことができる。
店主が朝5時から丹念に心を込めて作る名物「豆腐料理」も評判が高い。
- 泉質:天然ラドン温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯、家族風呂
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
9. 武雄温泉 御宿 竹林亭(武雄市)
15万坪の大庭園に隣接し、450坪の敷地に客室はわずか11室という贅沢な造りの宿。江戸後期より続く数寄屋建築と大庭園の「庭屋一如」が美しい。
竹林に囲まれた露天風呂からは、宿泊者だけが味わえる贅沢な眺めが素晴らしく、夜はライトアップされまた一段と風情がある。武雄温泉の柔らかな泉質を、静かで落ち着いた空間の中でゆっくりと堪能できる。
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 浴槽:内湯、露天風呂
- 源泉温度:52度前後
- 日帰り入浴:要確認
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
10. 嬉野温泉 萬象閣敷島(嬉野市)
全室に半露天風呂または露天風呂が完備された嬉野温泉の上質な宿。客室のお風呂にも温泉が引き込まれており、好きな時に好きなだけ日本三大美肌の湯を楽しめる。
100年以上前から湧き出る自家源泉を使用し、受け継がれてきた技術と伝統に時代の感性を添えた懐石料理も人気。佐賀牛付き上級会席が評判で、朝夕ともに個室風の食事処で提供される。
大浴場では嬉野温泉特有のナトリウム-炭酸水素塩泉のトロトロとした湯を堪能でき、美肌効果を実感できる。
- 泉質:ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯、露天風呂、全客室に半露天風呂または露天風呂
- 源泉温度:85~95度
- 日帰り入浴:要確認
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
まとめ
佐賀県には、1300年以上の歴史を持つ古湯から日本三大美肌の湯まで、多彩な温泉が点在している。古湯温泉や熊の川温泉のような山間の静かな秘湯、嬉野温泉や武雄温泉のような賑わいのある温泉街、そして有明海を望むたら竹崎温泉など、それぞれに個性がある。
いずれの温泉も源泉かけ流しや天然温泉にこだわり、美肌効果の高い泉質を誇る。佐賀県を訪れた際には、ぜひこれらの温泉で心身ともにリフレッシュしてほしい。
※情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。