露天風呂付き客室の温泉宿17選|湯使いで選ぶ

露天風呂付き客室を探すとき、いちばん見落とされるのが客室の湯そのものの中身である。大浴場は源泉かけ流しでも、客室の露天風呂だけは加温・循環というつくりの宿は珍しくない。逆に、客室の湯まで含めて全浴槽を源泉だけで賄っている宿もある。

ここでは、当サイトのデータベースに登録された温泉のうち、露天風呂付き客室を備え、かつ宿泊予約の導線がある17軒を集めた。多くは客室数が10室前後の小さな宿で、大手予約サイトのランキング上位に並ぶ大型リゾートとは母集団が違う。秋田・夏瀬温泉の都わすれのように、冬は自家用車で近づけない山中の宿も含まれる。

この記事でわかること

  • 客室露天が「温泉かどうか」「全室かどうか」を見分ける確認点
  • 全室に露天風呂が付く宿と、一部の客室だけに付く宿の別
  • 17軒それぞれの泉質と湯使い(加水・加温・循環・消毒の別)を載せた個票ページ

「露天風呂付き客室」で確認したい3つの点

1. 客室の湯に温泉が引かれているか

「露天風呂付き客室」という表示は、浴槽の形式を指すもので、湯の中身までは保証しない。客室の浴槽に源泉が引かれているか、大浴場と同じ湯使いなのかは宿ごとに異なる。本記事の各宿の個票ページには、泉質と、加水/加温/循環ろ過/消毒の有無を分けて載せている。源泉温度とpHは、公表されている宿について併記している。

判断が分かれやすいのは冷鉱泉の宿だ。岐阜県下呂市の湯屋温泉 泉岳舘は源泉温度12.2℃の単純二酸化炭素泉で、加温しなければ入浴に使えない。加温はしていても加水と循環はしていないため、成分そのものは源泉のままである。「加温=薄い湯」ではない。

2. 全室に付くのか、一部の客室だけか

同じ「露天風呂付き客室あり」でも、全10室すべてに付く宿と、31室のうち3室だけという宿では予約の取りやすさがまるで違う。本記事の17軒を数で分けると次のようになる。

全室(またはそれに準じる)に付く宿

  • 夏瀬温泉 都わすれ(秋田)— 全10室
  • 蒲井温泉 いっぺん庵(京都)— 全7室の離れ
  • 湯屋温泉 泉岳舘(岐阜)— 全7室
  • アクアイグニス 片岡温泉(三重)— 全室
  • 山あいの宿 喜安屋(大分)— 全10室の離れ

過半の客室に付く宿

  • 鷹の巣温泉 鷹の巣館(新潟)— 全12室のうち8室
  • ねぼーや 志摩別邸(三重)— 全9室のうちスイート7室
  • 十兵衛の宿 十兵衛の湯(宮崎)— 全6室のうち2階の3室(1階の3室は屋内型の露天風呂付き)

一部の客室に付く宿

  • 二岐温泉 大丸あすなろ荘(福島)— 全24室のうち6室
  • 川湯温泉 冨士屋(和歌山)— 全31室のうち3室
  • 神明温泉 湯元すぎ嶋(岐阜)— 特別室
  • ほか、瀬美温泉・ゆの宿 和どう・かよう亭・小山旅館・わいた館・二匹の鬼

全室型は総客室数が5〜10室と少ない宿に集中している。週末や紅葉期は早い段階で埋まりやすい。

3. 露天か、半露天か

屋根と壁がどこまで掛かるかで、同じ「客室風呂」でも体験は変わる。本記事では、施設側が半露天と表示している宿は収録していない。北海道・山形・青森・福井にも半露天風呂付き客室の宿はあるが、露天という語の指す範囲がぶれるため、今回の17軒からは外した。

以下、17軒を北から順に挙げる。選定条件と湯使いの内訳は一覧のあとにまとめた。


1. 夏瀬温泉 都わすれ(秋田県仙北市)

秋田県仙北市、新緑と紅葉で知られる抱返り渓谷を遡った先に夏瀬温泉はある。江戸時代から地元の人々が薬湯として守ってきた湯で、宿が構えられたのは1904年(明治37年)のことだった。その後、1950年代に神代ダムが築かれると集落ごと現在地へ移り、2001年には後継者難から一度は灯が消える。廃湯となりかけたこの一軒宿を引き継いだのが、乳頭温泉郷で妙乃湯を営む会社である。改修を経て2005年8月に「都わすれ」の名で再開し、抱返り渓谷県立自然公園の只中に建つ全10室の宿として現在に至っている。周囲に人家はなく、宿へ続く市道は未舗装で幅も狭い。都を忘れる、という宿名はそのまま立地の説明になっている。 湯はナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉。低張性弱アルカリ性の高温泉で、分析表のpHは8.4、溶存物質は約890ミリグラム毎キログラムと決して濃い湯ではない。無色透明、ごくわずかに硫化水素の香りが鼻をかすめる程度で、肌当たりはあくまで柔らかい。特筆すべきは2018年9月に行われた源泉の再掘削である。泉質そのものは変わらないまま湯量と泉温が大幅に上がり、それまで40度台前半だった源泉温度は約59度に達した。この余裕が、加水も加温もせずに全浴槽をかけ流すという現在の湯づかいを可能にしている。宿の使用状況掲示は加水・加温・循環ろ過・消毒のすべてが「無」。10室ぶんの客室露天と大浴場、貸切風呂を、一切手を加えない源泉だけで賄っているということだ。 浴場の構成は宿の規模のわりに贅沢である。全10室にそれぞれ源泉かけ流しの露天風呂が付き、これは滞在中いつでも独占できる。加えて別に男女別の内湯大浴場があり、こちらは24時間利用可能で、ぬる湯と熱めの2槽に分けられている。長湯したい日はぬる湯、体を温めたい朝は熱め、と使い分けられるのがありがたい。さらに宿泊者が30分無料で借りられる貸切露天風呂があり、こちらはかなりぬるめの設定。渓谷の緑や雪を眺めながら際限なく浸かっていられる。食事は秋田の山の幸を軸にした会席で、館内は和とモダンを混ぜたしつらえ。全館Wi-Fiが通じ、リラクゼーションのマッサージも頼める。 訪ねる前に押さえておきたい実務がふたつある。ひとつは日帰り入浴で、かつては11時30分から14時(受付13時30分まで)、大人1,500円、水曜定休で受け入れていたが、2026年4月11日の公式告知により日帰り湯とランチの営業は当面休止となっている。再開は公式サイトで告知される予定なので、立ち寄りを考えるなら事前確認が必須だ。もうひとつは道である。秋田自動車道 協和ICから国道46号経由で約60分、東北自動車道 盛岡ICからは約90分、JR角館駅からは車で約30分だが、国道を折れてからの市道は未舗装かつ狭く、ガードレールのない区間もある。運転に不安があるなら角館駅発の無料送迎車(予約制)を選びたい。12月下旬から3月下旬の降雪期は交通規制がかかり、自家用車での乗り入れはそもそもできず送迎車のみとなる。新緑と紅葉の抱返り渓谷、冬の雪見露天と、季節ごとに表情が変わる宿である。
泉質
硫酸塩泉
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 8.4
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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2. 瀬美温泉 桐の花・山吹の花(岩手県北上市)

夏油川のせせらぎに寄り添うように建つ瀬美温泉「桐の花・山吹の花」は、夏油温泉・入畑温泉・水神温泉・夏油高原温泉とともに「夏油高原温泉郷」を形づくる一軒宿である。前身の「瀬目乃湯」が昭和初期に姿を消したのち、その源泉を求める志を三代にわたり受け継いだ者たちがいたが不首尾に終わった。これを聞き及んだ江釣子村の菊池由見氏が資金を投じ、1959年12月に夏油川左岸で掘削を再開。翌1960年5月、深度280メートルから泉温42.5度・毎分99立方メートルの湯が自噴し、420メートルまで掘り進めたのちに開業した。「瀬美温泉」という名は一般公募で決まったもので、地名の「瀬目」を「せみ」と読み替えたことに由来する。 館内には性質の異なる3本の源泉「美人の湯」「夢の湯」「長寿の湯」が湧いており、いずれもメタケイ酸を豊富に含むアルカリ性単純温泉で、泉温は42〜46度、湧出量は毎分745リットルに達する。なかでも「美人の湯」はとろりとした化粧水のような肌ざわりと、かすかな鉄分・硫黄の香りが特徴で、入浴後は肌がすべすべになると女性を中心に人気が高い。3源泉とも加水・加温・循環をいっさい行わない源泉100%かけ流しで、神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性、慢性皮膚病、疲労回復などに効くとされる。 浴場は3本の源泉を使い分けた6つの内湯に加え、混浴1つを含む3つの露天風呂、貸切風呂を備え、渓流を望む露天風呂付きの客室も用意されている。夏油高原の山々に抱かれた立地で、旅館脇を流れる清流のせせらぎを聞きながら湯に浸かる時間は格別だ。本館・新館合わせて37〜38室、1泊2食付き10,000円台からとリーズナブルに宿泊でき、地元の四季の食材を活かした郷土料理も魅力のひとつである。 日帰り入浴は大人1,200円、小学生400円、幼児(3歳以上)200円(別途入湯税150円)で、10時から20時(最終受付19時)まで利用できる。春の新緑、秋の紅葉、冬の雪景色と四季折々の自然が楽しめるため、夏油高原の紅葉狩りやスキーと組み合わせた旅程もおすすめだ。なお2026年7月現在、獣害の影響で「長寿の湯」(内湯・露天)が休業中、「夢の湯」「美人の湯」も一部時間短縮での営業となっているため、訪問前に営業状況を確認しておくと安心である。
泉質
アルカリ性単純温泉
温度
42℃ ~ 46℃
湧出
掘削自噴
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1200円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:0010:00 - 20:00
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3. 二岐温泉 大丸あすなろ荘(福島県岩瀬郡天栄村)

二岐温泉 大丸あすなろ荘
引用: 二岐温泉 大丸あすなろ荘 HP
福島県岩瀬郡天栄村の標高800メートルに位置する二岐温泉は、平安時代の安和2年(969年)に開湯した歴史ある温泉だ。「秘湯」という言葉が誕生した温泉地としても知られ、大丸あすなろ荘の館主は日本秘湯を守る会の名誉会長を務める。 最大の名物は、自噴泉甌穴(おうけつ)風呂である。昔川底だった岩盤から源泉が直接噴出する珍しい湯船で、宿泊者は時間帯を区切って男女交代で入浴できる。二俣川の渓流沿いには男女別の露天風呂も完備されており、ブナの原生林に囲まれた野趣あふれる空間で、極上の源泉かけ流しを堪能できる。 夕食は地元の山菜や川魚をふんだんに使った郷土料理が中心で、自然回帰型の旅を楽しめる。
泉質
カルシウム-硫酸塩泉
温度
42℃ ~ 54℃
供給
源泉かけ流し
pH値
pH 8.8
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 700円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:3011:00 - 14:30
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4. 秩父温泉 ゆの宿 和どう(埼玉県秩父市)

秩父七湯のなかでも最も古い歴史を持つ和銅鉱泉。その名は、奈良時代の慶雲5年(708年)にこの地で自然銅が発見され、朝廷に献上されたことに由来する。この銅は日本最古の通貨「和同開珎」の鋳造に使われ、年号も「和銅」に改元されたほどの歴史的大事件であった。和銅鉱泉は武田信玄が和銅金山を開発した戦国時代から湯治場として利用されており、近郷の人々が目薬や切り傷の治療に用いて特効があったことから「薬師の湯」と呼ばれてきた。現在、和銅鉱泉を源泉として使用しているのは「ゆの宿 和どう」のみであり、まさに唯一無二の温泉宿である。 泉質は弱アルカリ性低張性冷鉱泉で、源泉温度はわずか10.5℃、pH7.7の弱アルカリ性である。無色透明無味無臭という穏やかな湯は、一見すると特徴がないように思えるが、その分肌への刺激が少なく、敏感肌の方や小さな子どもでも安心して入浴できる。神経痛、リウマチ、冷え性、皮膚病、ストレス、切り傷などに効能があるとされ、古来より「薬師の湯」として湯治客に親しまれてきた所以である。冷鉱泉のため加温して提供されるが、源泉の成分はしっかりと保たれている。 浴場は2種類あり、秩父地方で産出される蛇紋石を贅沢に使った岩風呂「岩鏡」と、樹齢2000年の古代檜を用いた檜風呂「檜扇」が毎日男女入替で楽しめる。どちらも内湯と露天風呂を備え、横瀬川の清流を眺めながらの入浴は格別の趣がある。さらに貸切風呂「茱萸(ぐみ)」では、カップルや家族でプライベートな湯浴みを満喫できる。貸切岩盤浴「ヒーリングストーンスパ」も備え、温泉とあわせて心身のリフレッシュが図れる。露天風呂付き客室も用意されており、客室にいながら和銅鉱泉を独占できる贅沢な滞在が可能である。 日帰り入浴は大人1,000円で11:00〜14:00に受付しているが、混雑状況によりお断りの場合もあるため、当日または前日の電話確認が推奨される。池袋から西武特急で約89分、秩父鉄道に乗り換えて和銅黒谷駅からは宿の無料送迎で約5分と、都心からのアクセスも良好。車では関越自動車道の花園ICから約45分で、52台分の無料駐車場を完備する。秩父市街と長瀞の中間に位置しているため、秩父神社や長瀞ライン下り、三峯神社などの観光と組み合わせた旅行計画が立てやすい。春は芝桜の丘、秋は紅葉、冬は秩父夜祭と、四季を通じて秩父の魅力を堪能できる拠点としても最適である。
泉質
弱アルカリ性低張性冷鉱泉
温度
40℃ ~ 42℃
加温
加温あり
pH値
pH 7.7
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:0011:00 - 14:00
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5. 鷹の巣温泉 鷹の巣館(新潟県岩船郡関川村)

新潟県の北端、山形県境にほど近い関川村を、荒川が深い峡谷を刻みながら流れている。その荒川峡の渓谷沿いにひっそりと湧くのが鷹の巣温泉であり、なかでも鷹の巣館は、長い吊り橋を渡った対岸にたたずむ秘湯の一軒宿である。傷ついた大鷹が河原の湯だまりで羽を休め水浴びをしていたのを舟人が見つけ、そこに温泉が湧いていることを知った——そんな開湯伝説が、この宿の名の由来として語り継がれている。「日本秘湯を守る会」に名を連ねる、まさに秘湯と呼ぶにふさわしい宿だ。 湯は、ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。源泉温度は54℃と高く、pHは約7.3の中性泉で、毎分360リットルという豊富な湧出量を誇る。加水も加温も減温もせず、循環も消毒も行わない完全な源泉かけ流しで、館内すべての浴槽に自家源泉が惜しみなく注がれている。無色透明ながら塩味と芒硝の成分をたたえた湯は、身体を芯から温め、湯上がりの温もりが長く続く。かけ流しの鮮度をこれほど贅沢に味わえる宿は多くない。 約3000坪という広大な敷地には、造りも大きさもそれぞれ異なる別荘式の離れが点在する。全12室のうち8室には露天風呂が付き、渓谷のせせらぎと四季の緑や紅葉を独り占めしながら、誰にも気兼ねなく湯浴みを楽しめる。食事は旬の素材を生かした郷土料理が部屋出しで供され、離れという独立した空間でくつろぐ時間は、日常を忘れさせる静けさに満ちている。内湯2・露天2の共同浴場も源泉かけ流しである。 訪れるなら、新緑がまぶしい初夏と、荒川峡が錦に染まる紅葉の秋がとりわけ美しい。この宿は日帰り入浴を行っておらず、湯も食事も空間もすべて宿泊者だけに開かれた特別な場所である。宿泊料金は1室2名・朝夕食付で15,750円から。アクセスは日本海東北自動車道の荒川胎内ICから車で約30分、あるいはJR米坂線の越後下関駅からタクシーで約8分。吊り橋を渡った先で、日常と隔てられた静寂の湯宿が迎えてくれる。
泉質
ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
温度
42℃ ~ 54℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 7.3
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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6. 山中温泉 かよう亭(石川県加賀市)

加賀の山あいを流れる大聖寺川。その渓谷に沿って開けた山中温泉は、松尾芭蕉が「奥の細道」の旅で足を止め、名湯として讃えた古い湯の町である。その東の外れ、観光客が行き交う鶴仙渓の遊歩道からもう一段高い場所に、山中温泉 かよう亭はある。約1万坪の自然林に、客室はわずか10室。この宿の前身は、収容200名・54室を誇る大型ホテルだった。昭和48年(1973年)のオイルショックを目の当たりにしたオーナーの上口昌徳氏は、規模を追う経営に背を向けて旅館を畳み、5年の歳月をかけて昭和53年(1978年)に10室の小宿として再出発させた。開業後しばらくは客足に恵まれなかったというが、宣伝を一切しない姿勢を貫くうちに文化人や旅慣れた客の口伝えで知られるようになり、現在は宿泊客の約7割がリピーターだという。 湯は山中温泉が集中管理する混合源泉から引く、カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉である。源泉温度は48〜50℃、pHは8.5前後の弱アルカリ性。無色透明で香りはほとんどなく、しっとりと肌に馴染む硫酸塩泉ならではの湯ざわりが特徴だ。きりきずや末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症のほか、筋肉や関節の慢性的な痛み、疲労回復にも効能があるとされる。客室に備えられた内風呂・露天風呂は24時間の源泉かけ流しで、時間を気にせず好きなだけ湯に浸かれる。男女別の大浴場は加水をせずにかけ流しと循環を併用する運用で、加温は冬季のみ。硫黄のような主張の強い個性を持つ湯ではないぶん、長く浸かっても疲れにくく、何度も湯に入る滞在に向いている。 かよう亭の魅力は、湯そのもの以上に「静けさの設計」にある。大浴場の窓の外には自然林が広がり、渓流のせせらぎが絶えず届く。客室数が10室しかないため、大浴場に足を運んでも他の客と会わないことが珍しくない。予約制の貸切風呂は無料で利用でき、露天風呂付き、あるいは温泉内風呂付きの客室も選べる。食事は個室の食事処か部屋食で供され、加賀の海と山から届く旬の素材を、地元作家の器に盛って出す。器も含めて土地の文化を味わわせるという発想は、上口氏が構想した「日本の風景・風土・地元文化を五感で感じる宿」というコンセプトの延長線上にある。館内には売店の喧騒もカラオケもなく、ただ森と湯と食事だけが用意されている。 宿泊は1泊2食付で1名62,700円〜88,500円(別途入湯税150円)。1名1室利用は10,800円増、年末年始やゴールデンウィーク、お盆は特別料金となる。チェックインは13:00と早く、チェックアウトは12:00と遅いため、丸一日近くを宿の中で過ごせる時間設計になっている。日帰り入浴は受け付けていないので、この湯を味わうには泊まることが前提だ。アクセスは北陸自動車道 加賀ICから車で約20分、小松空港からは約30分。公共交通ではJR加賀温泉駅から加賀温泉バスの山中温泉行きで約30分、下車後徒歩約4分。タクシーなら加賀温泉駅から約20分・約4,200円で、宿に手配を頼める。訪れるなら、新緑が渓谷を覆う5〜6月と、鶴仙渓の紅葉が色づく10月下旬〜11月中旬が特に美しい。雪に沈む冬もまた、この宿の静けさが最も際立つ季節である。
泉質
カルシウム-硫酸塩泉
ナトリウム-硫酸塩泉
温度
48℃ ~ 50℃
供給
一部かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 8.5
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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7. 湯屋温泉 泉岳舘(岐阜県下呂市)

岐阜県下呂市小坂町、御嶽山の麓を流れる清流沿いに湯屋温泉という小さな温泉地がある。開湯は室町時代中期、いまから約480年前。病に苦しむ武士が薬師如来のお告げに導かれてこの泉を見つけ、病を癒したのが始まりと伝わる。以来、この地は「胃薬よりも炭酸泉」と言われるほど飲泉文化が根付いた湯治場として栄え、鉱泉で炊いた粥を寒中に食べれば一年間無病息災という言い伝えも残る。宿3軒と飲泉場だけの静かな温泉街にあって、泉岳舘は代々「湯守」として自家源泉を守り続けてきた宿である。 この湯の正体は、日本の温泉のわずか0.5%といわれる天然炭酸泉だ。泉質は単純二酸化炭素冷鉱泉(低張性弱酸性冷鉱泉)で、遊離二酸化炭素は1,203.8mg/kgと療養泉の基準(1,000mg/kg)を超える高濃度。ただし源泉温度は12.2℃の冷鉱泉で、普通に沸かせば炭酸は抜けてしまう。四代目当主は十数年をかけ、炭酸ガスを残したまま加温する独自技術を確立した。ぬる湯にじっと10〜15分浸かれば、肌に泡が付き、血流が上がって身体の芯からじわじわと温まってくる。保健所許可済みの飲泉は天然サイダーそのもので、源泉コーヒーや源泉ハイボールといった楽しみ方もこの宿ならではだ。 宿は全7室のみの小さな構えで、2026年には全客室が天然炭酸泉の露天風呂付きに生まれ変わった。大浴場を持たず、川音を聞きながら好きなときに何度でも部屋の湯に浸かる——「湯と過ごす、ただひたすらに」という宿のコンセプトがそのまま形になっている。宿泊者専用の貸切露天風呂は無料で、夜はろうそくの灯りで星見露天も楽しめる。食事は飛騨牛と高冷地野菜を源泉でしゃぶしゃぶする名物「炭酸泉しゃぶしゃぶ」など、飲める源泉を持つ宿ならではの温泉料理が並ぶ。 日帰り入浴は行っておらず、宿泊専用(1泊2食付き14,300円〜、入湯税150円別途)。アクセスは高山ICから国道41号経由で約40分、JR飛騨小坂駅からは無料送迎(要予約)が利用できる。冬季はスタッドレスタイヤが必須だ。ぬる湯の炭酸泉は一年を通して楽しめるが、新緑や紅葉の季節は清流の景色がいっそう映える。日本三名瀑を含む滝めぐりで知られる小坂の巌立峡や下呂温泉と組み合わせて、身体の内と外から炭酸泉を味わう滞在をおすすめしたい。
泉質
単純二酸化炭素泉
温度
38℃ ~ 42℃
湧出
動力揚湯
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 5.6
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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8. 神明温泉 湯元すぎ嶋(岐阜県関市)

岐阜県関市板取。奥美濃の山あいを刻む板取川の上流、集落もまばらな谷筋に神明温泉 湯元すぎ嶋はある。歴史ある湯治場ではない。平成9年(1997年)、この地のボーリングで毎分117リットルの湯を掘り当てたことから開かれた、比較的新しい温泉である。それでも宿が「秘湯」と呼ばれるのは、日本秘湯を守る会の会員宿として、山深い一軒宿の静けさと湯そのものの質を守り続けてきたからだろう。建物は築百年を超える古民家をわざわざ探し出して移築したもので、飛騨の大工が組み上げた黒光りする梁と柱が、開業からの年月よりもずっと長い時間を感じさせる。 源泉名は「神明温泉」。掲示された温泉分析書によれば、泉質はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性低温泉)、源泉温度30.9℃、pH8.89、湧出量は毎分117リットルである。数字の上では体温より低い「低温泉」だが、この宿の価値はその低さにこそある。無色透明の湯には硫黄と硫化水素のかすかな香りが漂い、pH8.9近いアルカリ性がもたらすとろりとした肌ざわりは、湯に入った瞬間に指先で分かるほど明瞭だ。温泉好きがこの宿をわざわざ名指しするのは、この湯ざわりゆえである。 浴槽ごとに湯の扱いを変えているのが、すぎ嶋の面白いところだ。内湯には「熱湯」と「ぬる湯」の二槽があり、大きい浴槽は加水も消毒もせず41℃前後に加温したかけ流し、小さい浴槽は源泉をそのまま注ぐ非加温かけ流しである。30℃台の生の源泉に身を沈め、冷えてきたら隣の加温槽に移る——この往復こそが、ぬる湯を持つ宿ならではの入り方だ。岩組みの露天風呂は加温循環ろ過で供され、さらに「高賀山」「明神山」と名づけられた2つの貸切露天風呂があり、宿泊者は滞在中に各1回ずつ利用できる。入口の温度計で好みの湯加減に調整できるのもありがたい。 日帰り入浴は11:00〜15:00(最終受付14:30)、大人800円・子供400円。昼食を利用すれば大人500円・子供300円に割引され、貸切風呂は3,000円で借りられる。宿泊は全12室、1泊2食付き18,000円〜27,000円程度で、囲炉裏を囲む「いろり会席」では板取川のあまごや岩魚、鮎、飛騨牛が供される。アクセスは東海北陸自動車道・美濃ICから約60分。近年人気の「モネの池」から車で約25分の位置にあり、板取川の新緑と紅葉の季節が特に美しい。公共交通ではJR岐阜駅から岐阜バス板取線で約2時間と便数も限られるため、車での訪問が現実的である。冬季は積雪があり、12月〜3月はJR岐阜駅からの送迎(要予約)も用意されている。
泉質
アルカリ性単純温泉
温度
31℃ ~ 41℃
湧出
掘削自噴
供給
一部かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 8.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 800円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:0011:00 - 15:00
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9. アクアイグニス 片岡温泉(三重県三重郡菰野町)

アクアイグニス 片岡温泉は、三重県三重郡菰野町の湯の山温泉郷に2012年10月に誕生した「癒し」と「食」の複合温泉リゾートである。その前身は、地元で長年親しまれてきた片岡温泉であった。後継者不在で廃業の危機に瀕していたこの温泉を、株式会社アクアイグニス代表の立花哲也氏が譲り受け、日本を代表するパティシエ辻口博啓氏、イタリアンの巨匠奥田政行氏、和食の名匠笠原将弘氏らを迎え入れ、約49,000平方メートルの広大な敷地に全く新しいコンセプトのリゾートを作り上げた。鈴鹿山脈の豊かな自然に抱かれた立地は、都会の喧騒から離れた静謐な癒しの空間を提供している。 片岡温泉の最大の魅力は、地下1,200メートルから湧き出す天然温泉を100%源泉かけ流しで楽しめることにある。泉質はアルカリ性単純温泉(低張性アルカリ性高温泉)で、pH8.5のアルカリ性を示し、源泉温度は45.2℃、湧出量は毎分780リットルと極めて豊富である。加水・加温・循環を一切行わない純粋な源泉かけ流しは全国的にも珍しく、温泉愛好家から高い評価を受けている。ほのかな硫黄の香りが漂うなめらかな湯はとろりとした肌触りが特徴で、不要な角質を除去し毛穴の汚れを落とす美肌効果から「美人の湯」として親しまれている。 浴場は片流れの檜天井が印象的な内風呂と、目の前に青々とした竹林が広がる露天風呂(竹林風呂)で構成されている。モダンで洗練された空間設計はアートのような美しさを持ち、自然光が差し込む開放的な内風呂では四季の移ろいを感じながら湯に浸かることができる。竹林風呂では風にそよぐ竹の葉音を聞きながら、都会では味わえない静寂のひとときを過ごせる。施設内には辻口博啓のコンフィチュール アッシュやマリアージュ ドゥ ファリーヌ、奥田政行のサーラ ビアンキ アルケッチァーノ、笠原将弘の笠庵 賛否両論といった一流の飲食店が揃い、入浴後の食の楽しみも格別である。 日帰り入浴は平日大人600円・土日祝800円と手頃な料金で、早朝6時から深夜24時まで営業しており年中無休である。名古屋から近鉄特急と湯の山線を乗り継いで約50分、新名神高速道路菰野ICからわずか5分という好アクセスも魅力のひとつ。週末は混雑するため、早朝や平日の利用がおすすめである。春は桜、夏は新緑、秋は紅葉、冬は雪化粧した鈴鹿山脈の眺望と、四季折々の表情を楽しめる。周辺には御在所ロープウエイや湯の山温泉の旅館街もあり、日帰りから宿泊まで充実した温泉旅を満喫できる。
泉質
アルカリ性単純温泉
温度
42℃ ~ 45.2℃
方式
源泉かけ流し(加水・加温・循環なし)
pH値
pH 8.5
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 600円/子供 300円
営業時間
月火水木金土日祝
06:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:0006:00 - 24:00
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10. ねぼーや 志摩別邸(三重県志摩市)

三重県志摩市の漁村にひっそりと佇む「ねぼーや 志摩別邸」は、その名の通り「朝寝坊」をコンセプトにした温泉宿である。敷地内から湧き出す自家源泉「志摩の国温泉 朝寝坊の湯」は、毎日100トンもの豊富な湧出量を誇り、全9室というこぢんまりとした規模だからこそ実現できる贅沢な源泉かけ流しの湯を提供している。2024年9月のグランドオープンを経て、全7室に温泉露天風呂付き客室を備えた新生・志摩別邸は、伊勢志摩の隠れ家的温泉宿として注目を集めている。 泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩冷鉱泉で、pH7.4の中性泉である。源泉温度は18.6℃と冷鉱泉のため加温して提供されるが、炭酸水素イオンを豊富に含むやわらかな湯は「美肌の湯」としての評価が高い。入浴すると肌がしっとりとすべすべになる感触が特徴で、体を芯から温めてくれる。神経痛や筋肉痛、関節痛、五十肩、冷え性、疲労回復など幅広い効能が期待でき、何度でも入りたくなる肌に優しい泉質である。 館内には趣の異なる5つの貸切風呂が用意されている。自然石を配した岩露天風呂「天の光湯」、二人用の円形陶器風呂「陶海の湯」、坪庭を眺める檜風呂「檜美の湯」、そして5〜6名まで対応可能な家族風呂「浜姫榊」と「紀伊潮菊」である。約2,000坪の広大な芝生庭園では、伊勢志摩の澄んだ夜空に輝く星空を眺めることができ、昭和モダンを基調としたロビーでは時間を忘れてくつろげる。食事は伊勢志摩の新鮮な地魚を中心にした会席料理で、洋食から和食までバリエーション豊かなオールエイジ対応の美食が楽しめる。 日帰り入浴は貸切風呂50分制で、2名2,200円から利用可能(12:00〜17:00、要事前問合せ)。近鉄鵜方駅からタクシーで約15分、無料送迎も事前予約で利用できる。伊勢神宮からは車で約40分の距離にあり、伊勢参りと組み合わせた旅程も人気である。英虞湾のリアス式海岸が織りなす美しい景観や、真珠養殖で知られる志摩の海の幸を存分に堪能できる立地も魅力のひとつ。何もしない贅沢を味わえる、伊勢志摩の小さな隠れ宿である。
泉質
ナトリウム-塩化物泉
炭酸水素塩冷鉱泉
温度
18.6℃ ~ 42℃
方式
加温あり・源泉かけ流し
pH値
pH 7.4
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 2200円/子供 1100円
営業時間
月火水木金土日祝
12:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:0012:00 - 17:00
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11. 蒲井温泉 いっぺん庵(京都府京丹後市)

京都府の最北西端、京丹後市久美浜町蒲井。日本海を見下ろす静かな高台に、1日7組だけを迎える離れの温泉宿「蒲井温泉 いっぺん庵」がある。宿名は鎌倉時代に諸国を巡り歩いた時宗の開祖・一遍上人に由来するとされ、その名にふさわしく、俗世から一歩離れてこもるための宿として磨き上げられてきた。徒歩わずか3分の蒲井浜、そして安産・子宝の信仰を集める福島神社を擁するこの地で、宿の湯は古くから「子宝の湯」として親しまれている。 湯は自家源泉「長者の湯」から引くナトリウム・カルシウム塩化物泉である。うっすらと白く濁ったにごり湯で、大浴場から客室の露天風呂に至るまで100%源泉かけ流しで供給される。塩化物泉ならではの保温効果は高く、湯から上がったあとも体の芯までぽかぽかと温もりが続くのが特徴だ。神経痛や冷え性、関節痛、婦人病、疲労回復などに効能があるとされ、丹後の海辺で肌に塩の膜をまとうような湯浴みを堪能できる。 この宿の最大の魅力は、全7室すべてが独立した離れであり、そのいずれにもヒノキの内湯と源泉かけ流しの露天風呂が備わっている点にある。他の客を気にすることなく、好きな時間に何度でも自分だけの湯に浸かれる贅沢は、おこもり滞在の醍醐味そのものだ。加えて大浴場や貸切風呂、岩盤浴、24時間楽しめるにごり湯も用意され、湯めぐりにも事欠かない。食事は丹後の海の幸を主役にした会席で、冬は松葉ガニ、夏は白いか、通年でアワビが供される。 宿泊は1泊2食付29,160円からで、チェックインは15:00、チェックアウトは11:00。日帰り入浴は基本的に行っておらず、湯はゆっくりと泊まって味わうのがふさわしい。車なら京都縦貫道の与謝天橋立ICから国道178号経由で約60分、駐車場は無料で7台分。公共交通では京都丹後鉄道の久美浜駅やJR豊岡駅からの無料送迎(要予約)が利用できる。夏は海水浴、冬はカニと、日本海の四季をまるごと味わう拠点として、静かな時間を求める旅人に応える宿である。
泉質
ナトリウム-塩化物泉
供給
源泉かけ流し
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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12. 川湯温泉 冨士屋(和歌山県田辺市)

川湯温泉は、熊野本宮大社の南西を流れる大塔川の河原を掘れば、どこでも湯が湧き出すという全国でも珍しい温泉地である。冨士屋はその川湯温泉で最も長い歴史を持つ旅館で、江戸時代の創業とされる。熊野三山を目指す参詣者が中辺路を歩いた時代から、この川辺の湯は旅の疲れを癒やす場であり続けてきた。現在も日本秘湯を守る会の会員宿として、世界遺産・熊野古道をたどる人々を迎えている。 湯は無色透明のナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉で、和歌山県温泉協会は液性を中性と記載している。源泉温度については情報が分かれており、宿の公式サイトが「地下8メートルから湧き上がる70度の源泉」と説明するのに対し、和歌山県温泉協会と日本秘湯を守る会はいずれも62度としている。なお「単純温泉73度」という数字を見かけることがあるが、これは河原一帯に湧く川湯温泉の源泉を指した説明であり、冨士屋の分析値ではない。いずれの値にせよそのままでは熱すぎるため加水して適温に整えているが、循環ろ過は行わず、館内すべての浴槽が源泉かけ流しである。 浴場は内湯2、露天3の計5か所。紀州特産の槇を用いた槇風呂、大理石風呂、そして大塔川に面した野趣あふれる露天風呂と、趣の異なる湯船を巡ることができる。チェックイン後に予約する貸切露天風呂もあり、家族連れや二人旅でも気兼ねなく湯を楽しめる。客室は全31室で、うち3室には専用の露天風呂が付く。部屋はいずれも大塔川に向いており、川面から湯煙が立ちのぼる光景や、山あいの澄んだ夜空を眺めながら過ごせる。 最大の見どころは、12月から2月末にかけて宿の目の前の河原に出現する幅約50メートルの大露天風呂「仙人風呂」である。冬にしか現れないこの巨大な湯船は水着着用で無料開放され、宿泊者は宿から歩いてそのまま向かうことができる。ただし冨士屋自体は日帰り入浴を受け付けておらず、館内の湯を味わうには宿泊が必要となる。宿泊料金は1室2名利用で1名あたり16,500円から27,500円(1泊朝夕食付)が目安。アクセスは阪和自動車道 南紀田辺ICから国道311号経由で約90分、公共交通機関ならJR紀伊田辺駅から龍神バスで約2時間、「川湯温泉」バス停下車すぐである。熊野本宮大社まで車で5分ほどなので、参拝と組み合わせた一泊が組みやすい。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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13. 栃木温泉 小山旅館(熊本県阿蘇郡南阿蘇村)

阿蘇カルデラの南、南阿蘇村河陽に湧く栃木温泉は「とちぎ」ではなく「とちのき」と読む。開湯は300年前にさかのぼり、江戸時代から原生林に囲まれた湯治場として人を集めてきた。小山旅館はその栃木温泉で創業200年余りを重ねてきた老舗である。公式サイトは、西郷隆盛やヘレン・ケラーもこの湯を利用したと伝えている。第二次世界大戦末期の1945年7月には、疎開させられたカトリック聖職者およそ40人がこの宿に集められたという記録も残る。名湯であると同時に、近代熊本の記憶が幾重にも積み重なった場所である。 2016年4月の熊本地震は、この宿から日常を奪った。立野一帯は阿蘇大橋の崩落によって交通が寸断され、小山旅館も被災して営業を中止する。再び湯が満たされたのは、5年の歳月を経た2021年8月のことだった。新阿蘇大橋の開通により、熊本市街からの道も再びつながっている。湯は動力揚湯に頼らない自然湧出で、掲示泉質はナトリウム・マグネシウム・カルシウム-硫酸塩・炭酸水素塩泉(低張性中性温泉)。無色透明の湯を、南阿蘇村温泉旅館組合は「湯量豊富なかけ流しの湯」と表現する。リウマチ、神経痛、皮膚病、貧血症への効能が挙げられている。 この宿の最大の個性は、浴槽から見上げる景色にある。宿名にもなっている鮎返りの滝は落差およそ40メートル。白川水系の水が北向山原生林の岩壁を一気に落ちる姿を、男女それぞれの大浴場に付く滝見露天風呂から間近に望むことができる。鮎ですら遡ることができずに引き返したという滝の名の由来を、水音を聞きながら実感できる距離感である。ほかに檜風呂と岩風呂の2種類の貸切風呂があり、宿泊者は無料で使える。客室は全21室で、露天風呂付きの部屋も選べる。 日帰り入浴は大人500円、小学生以下250円と手頃で、家族湯は60分2,000円(休日2,500円)。受付は12:00から16:00とする資料が多いが17:00までとするものもあり、月曜・火曜は休みとされるため、立ち寄る場合は事前に電話で確認しておきたい。宿泊は1泊2食付15,400円からで、夕食には阿蘇のあか牛を使った料理が供される。駐車場は23台・無料。JR立野駅からは事前連絡で約10分の送迎がある。新緑と滝の水量が増す初夏、そして原生林が色づく晩秋が特に美しい季節である。
泉質
カルシウム(・マグネシウム)・ナトリウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉
湧出
自然湧出
供給
源泉かけ流し
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 500円/子供 250円
営業時間
月火水木金土日祝
12:00 - 16:00休業休業12:00 - 16:0012:00 - 16:0012:00 - 16:0012:00 - 16:0012:00 - 16:0012:00 - 16:00
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14. わいた温泉 わいた館(熊本県阿蘇郡小国町)

わいた温泉 わいた館
引用:わいた温泉 わいた館HP
熊本県阿蘇郡小国町の涌蓋山(わいたさん)の麓に位置する「湯宿 小国のオーベルジュわいた館」は、わいた温泉郷のはげの湯温泉に属する秘湯の宿です。標高約700メートルの高原に位置し、阿蘇くじゅう国立公園の雄大な自然に囲まれた静かな環境にあります。最大の特徴は、日によって乳白色や淡いコバルトブルーに色が変わる神秘的な濁り湯です。 泉質はナトリウム-塩化物泉(低張性アルカリ性高温泉)で、源泉温度96.5℃、pH8.5のアルカリ性。天然の保湿成分であるメタケイ酸を461.4mg/kgと極めて高濃度に含み(通常50〜100mgで美肌効果ありとされる)、「美人湯」として知られています。すべての浴場が100%源泉かけ流しで、天空の湯(屋上露天風呂)、竹林の湯(竹林に囲まれた露天風呂)、笹の湯(半露天風呂)、涌蓋の湯(内湯)、湯畑の湯(混浴露天風呂・湯浴み着着用)、寝湯など多彩な浴場を備えています。
泉質
ナトリウム-塩化物泉
温度
40℃ ~ 45℃
供給
源泉かけ流し
pH値
pH 8.5
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 811円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
09:00 - 21:0009:00 - 21:00休業休業09:00 - 21:0009:00 - 21:0009:00 - 21:0009:00 - 21:0009:00 - 21:00
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15. 渓谷の宿 二匹の鬼(大分県玖珠郡九重町)

大分県玖珠郡九重町、鳴子川が長い歳月をかけて刻んだ九酔渓(鳴子川渓谷)の奥に、渓谷の宿 二匹の鬼は静かに佇む。九酔渓は約2kmにわたって原生林と断崖が続く九州屈指の紅葉の名所であり、その谷あいに離れを点在させた一軒宿である。周囲には人工の音がなく、聞こえてくるのは渓流のせせらぎと木々のざわめきばかりで、俗世から切り離されたような滞在ができる。 湯は、ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉。pHは6.9とほぼ中性で、肌あたりはやわらかい。美肌をもたらすとされるメタケイ酸を豊富に含む炭酸水素塩泉で、宿は沸かし・加水・ろ過を行わない源泉かけ流しを掲げる。神経痛や筋肉痛、関節痛、冷え性、疲労回復、慢性皮膚病などに適応があるとされ、湯上がりの肌はしっとりと整う。 浴場は、渓谷を見渡す男女別の展望露天風呂を中心に、家族風呂と貸切風呂を備える。いずれの湯船からも四季折々に表情を変える九酔渓の景観を独り占めでき、新緑と紅葉の季節はとりわけ美しい。客室は「夢静香」「桂の秀」「花別荘」など趣の異なる離れが用意され、露天風呂付きの部屋もある。夕食には大分和牛のしゃぶしゃぶを中心とした会席が供され、渓谷の宿ならではの滋味を味わえる。 立ち寄り湯は6才以上200円、家族風呂は1室60分1,000円と手頃で、営業は11:00〜16:00(最終受付15:00)。ただし不定休で宿泊客が優先されるため、日帰り利用の際は事前に電話で確認したい。アクセスは大分自動車道の九重ICから車で約20分、JR久大本線の豊後中村駅からはタクシーで約15分。同駅や高速バス九重ICバス停からは宿の無料送迎も利用でき、車のない旅でも訪ねやすい。
泉質
ナトリウム・カルシウム(・マグネシウム)-炭酸水素塩泉
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 6.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 200円/子供 200円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:0011:00 - 16:00
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16. 山あいの宿 喜安屋(大分県玖珠郡九重町)

大分県九重町、標高約1,000メートルの高原に広がる筋湯温泉は、天徳2年(958年)の開湯と伝わる千年以上の歴史を持つ温泉郷である。筋を痛めた者が湯に浸かって癒したことが名の由来とされ、高さ約3メートルから湯が落ちる名物「うたせ大浴場」で古くから湯治客を集めてきた。その温泉街から山あいへ少し入った一軒宿が、2006年に開業した「山あいの宿 喜安屋」である。土壁と黒塗りの木塀が古民家の風情を漂わせ、日本秘湯を守る会の加盟宿として静かな滞在を求める旅人に選ばれてきた。 喜安屋の湯は、無色透明でなめらかなナトリウム-塩化物泉である。pHは約7.9の弱アルカリ性で、古い角質をやさしく落とすことから美肌の湯として知られる。源泉は八丁原の地熱熱水を含む集中配湯で、豊富な湯量を生かした源泉かけ流し。あまりの湯量ゆえ、浴用だけでなく客室の暖房にも温泉が利用されるほどである。加温や循環ろ過は行わず、夏場に湧水を足す程度で、鮮度の高い湯をそのまま楽しめる。 全10室はいずれも離れ形式で、檜や石など趣の異なる露天風呂が客室ごとに付く。加えて男女別の内湯と露天を備えた大浴場、貸切で使える風呂も整い、宿全体で湯めぐりを楽しめる構えだ。食事は個室のダイニングで、大分・九重・阿蘇の山の幸を生かした素朴な田舎料理が供される。派手さはないが、混合林に囲まれた敷地に平屋が点在する佇まいは、まさに大人の秘湯宿と呼ぶにふさわしい。 訪れるなら、九重連山や九酔渓が錦に染まる秋の紅葉期がとりわけ美しい。アクセスは大分自動車道 九重ICから四季彩ロードを経て車で約30分、黒川温泉からも約20分と近い。公共交通の便は限られ、周辺にタクシーも乏しいため、レンタカーでの来訪が現実的である。宿泊は1泊2食付きでおおむね18,700円から。日帰り入浴は10:00〜17:00に40分500円で受け付けるが、休業する場合もあるため、立ち寄りを予定する際は事前に確認しておきたい。
泉質
ナトリウム-塩化物泉
温度
42℃ ~ 76℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 7.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 500円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:0010:00 - 17:00
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17. 十兵衛の宿 十兵衛の湯(宮崎県えびの市)

宮崎県の最西端、熊本と鹿児島に挟まれた盆地の町えびの市に、京町温泉郷はある。開湯は大正末期とされ、昭和の初めには放浪の俳人・種田山頭火がこの湯の街を訪れた記録が残る。かつては九州の湯治客で賑わった温泉街も、いまは静かな佇まいを取り戻しているが、その一角に建つ「十兵衛の宿」は、宿・日帰り湯・うどん店を同じ敷地にまとめた、いささか変わった構成の温泉施設である。宿の隣に建つ日帰り入浴施設が「十兵衛の湯」であり、宿泊しなくても、この地の湯をたっぷりと味わうことができる。 湯の正体は、地下460メートルから汲み上げられる自家源泉「十兵衛温泉」。泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉で、公式表示によれば源泉温度67.4度の低張性・弱アルカリ性・高温泉である。注目すべきは、その成分構成だ。肌の角質をやわらげる炭酸水素塩、湯上がりの保温を担う硫酸塩と塩化物という、いわゆる「三大美人泉質」をひとつの湯に併せ持つ。宮崎県内でもこの組み合わせは珍しく、宿が「宮崎で唯一の泉質」と謳う所以でもある。しかも全浴槽が源泉かけ流し。加水・循環に頼らない湯づかいは、豊富な湧出量あってこそ成り立つ贅沢である。 十兵衛の湯の浴場構成は、日帰り施設としてはかなり充実している。広々とした大浴場に加え、開放感のある露天岩風呂、木の香りが立つ檜の露天風呂、そして九州では見かけることの少ない蒸し風呂まで備える。さらに予約制の貸切露天風呂が3室あり、家族連れやカップルが人目を気にせず湯を独占できる。駐車場の一角には誰でも無料で入れる足湯も置かれ、うどんを待つ間に一浴びという地元流の使い方も定着している。宿泊側は全6室のみの小規模構成で、1階は室内露天風呂付き、2階は専用露天風呂付きと、どの部屋にも湯船が付く。 日帰り入浴は9:00から23:00まで(22:30受付終了)と長く、大人550円・中学生400円・小人350円・幼児無料という良心的な価格設定。年中無休のため、旅程を組みやすいのもありがたい。貸切露天風呂は10:30〜14:30の時間帯で60分2,000円、要予約なので事前の電話が確実だ。アクセスは九州自動車道えびのICから国道268号で約5分、JR吉都線の京町温泉駅からは徒歩20分ほど。駐車場は85台分が無料で、霧島連山やえびの高原の観光と組み合わせる立ち寄り湯としても使い勝手がよい。湯上がりに併設の十兵衛うどんで一杯すすって帰る——それが、この施設のいちばん正しい楽しみ方かもしれない。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物・硫酸塩泉
温度
67.4℃ ~ 67.4℃
湧出
動力揚湯
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 550円/子供 350円
営業時間
月火水木金土日祝
09:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:0009:00 - 23:00
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掲載17軒の選び方

選定条件は3つに絞った。

  1. 露天風呂付き客室(露天風呂付きの離れを含む)を備えることが、施設情報から確認できること
  2. 宿泊予約の導線があること。日帰り専用施設は対象外とした
  3. 泉質と湯使いが個票ページで確認できること(源泉温度・pHは公表がある宿のみ)

結果として、日本秘湯を守る会の会員宿が5軒入った(大丸あすなろ荘・鷹の巣館・湯元すぎ嶋・冨士屋・喜安屋)。二岐温泉 大丸あすなろ荘は同会の発祥の宿で、現当主は同会の名誉会長を務める。残りは離れ形式の小規模宿と、渓谷や海に面した一軒宿が中心になった。

湯使いで見ると、17軒のうち14軒が個票上「源泉かけ流し」に分類される。残る3軒のうち、かよう亭と湯元すぎ嶋は大浴場が一部かけ流しで、かよう亭の客室の湯は24時間源泉かけ流しとなる。ゆの宿 和どうは冷鉱泉を加温して使う。

エリアで見た17軒の並び

【東北】 秋田県仙北市の夏瀬温泉 都わすれは、抱返り渓谷のさらに上流に一軒だけ建つ。国道から宿へ向かう市道は未舗装でガードレールのない区間があり、12月下旬から3月下旬は交通規制で自家用車が入れない。この期間は角館駅からの予約制送迎車を使う。岩手県北上市の瀬美温泉は夏油高原温泉郷の一角で、JR北上駅から夏油温泉行きのバスで約40分(運賃800円)。ただしこのバスは1日数便のみの運行なので、時刻表を先に押さえておきたい。

【関東近郊】 埼玉県秩父市のゆの宿 和どうは、池袋駅から西武特急で西武秩父駅まで約89分、そこから秩父鉄道で和銅黒谷駅へ移り、駅から宿の送迎に乗る。首都圏から鉄道と送迎だけで着く露天風呂付き客室の宿として、17軒のなかでは最も移動が短い。

【北陸・中部】 新潟県関川村の鷹の巣館は駐車場から吊り橋を渡って入る造りで、日帰り入浴は行っていない。岐阜の2軒は方角が離れている。下呂市小坂町の泉岳舘は高山ICから約40分、関市板取の湯元すぎ嶋は美濃ICから約60分で、同じ県内でも同一行程には組みにくい。冬季はいずれも冬用タイヤが要る。

【東海・近畿】 三重県の2軒は性格が対照的だ。菰野町のアクアイグニス 片岡温泉は近鉄湯の山温泉駅から徒歩約8分の複合施設、志摩市のねぼーや 志摩別邸は鵜方駅からタクシー約15分の漁村の宿になる。京都府京丹後市の蒲井温泉 いっぺん庵は1日7組限定で、久美浜駅から無料送迎がある。和歌山県田辺市の川湯温泉 冨士屋は熊野本宮大社から南西へ約3km、熊野参詣と組み合わせやすい位置にある。

【九州】 5軒が阿蘇・九重・えびのに分布する。熊本の小山旅館(南阿蘇村)とわいた館(小国町)、大分の二匹の鬼と喜安屋(ともに九重町)は、車なら1日で移動できる範囲に収まる。ただし喜安屋は最寄りのバス停から約8kmあり、周辺にタクシーが乏しいためレンタカーが前提になる。宮崎県えびの市の十兵衛の湯は九州自動車道えびのICから約5分と、九州5軒のなかでは最も車で寄りやすい。

予約前に押さえておきたいこと

人数・食事の条件がある宿がある。 大分の喜安屋は1名での予約と素泊まり・自炊を受け付けていない。熊本のわいた館は中学生以下の宿泊と連泊ができない。客室数が5〜10室の宿では、こうした条件が設定されていることがある。

日帰りでは客室露天に入れない。 当然のようだが、客室の露天風呂は宿泊者のためのものである。加えて、鷹の巣館・かよう亭・泉岳舘・冨士屋は日帰り入浴そのものを受け付けておらず、いっぺん庵も基本的に受け付けていない。都わすれは2026年4月11日の公式告知で日帰り入浴とランチの営業を当面休止しており、現在の入浴は宿泊者専用となる。

送迎の要否を先に確認する。 都わすれ(角館駅)・泉岳舘(飛騨小坂駅)・和どう(和銅黒谷駅)・いっぺん庵(久美浜駅)・志摩別邸(鵜方駅)・小山旅館(立野駅)・二匹の鬼(豊後中村駅)は、いずれも要予約の送迎がある。逆に言えば、予約せずに駅へ着くと足がない。

料金・営業時間・送迎ダイヤは改定される。各宿の個票ページと公式情報で最新の状態を確認してほしい。

よくある質問(FAQ)

Q. 露天風呂付き客室の湯は、必ず源泉かけ流しですか。

そうとは限らない。本記事の17軒でも湯使いは分かれる。加水・加温・循環ろ過・消毒の4項目すべてが「なし」と個票に記録されているのは、夏瀬温泉 都わすれ・瀬美温泉・鷹の巣温泉 鷹の巣館・渓谷の宿 二匹の鬼の4軒である。一方でかよう亭は、客室の湯が24時間源泉かけ流しで大浴場は一部かけ流しという構成になる。各宿の個票ページで、この4項目を個別に確認できる。

Q. タトゥーがあっても入れますか。

客室に露天風呂が付いていれば、他の入浴客と同じ湯船を使わずに済む。ただし大浴場の可否は宿ごとの規定によるため、予約前に各施設へ確認したい。本記事には掲載施設のタトゥー規定を載せていない。

Q. 一人で泊まれますか。

宿による。大分の喜安屋は1名予約を受け付けていない。石川のかよう亭は1名1室利用で10,800円の追加料金が設定されている。小規模な宿ほど1室あたりの利用人数に条件が付きやすい。

Q. 冬でも行けますか。

秋田の都わすれは12月下旬から3月下旬まで交通規制がかかり、自家用車では入れない。角館駅からの送迎車を利用する。岐阜の泉岳舘と湯元すぎ嶋は冬用タイヤかチェーンが必要で、泉岳舘の伊那IC経由の山岳ルートは冬季の通行が推奨されていない。関東近郊で冬の移動を気にせず行くなら、鉄道で完結する秩父のゆの宿 和どうが選択肢になる。

Q. 半露天風呂付き客室とは何が違いますか。

屋根や壁の掛かり方の違いで、明確な業界基準はない。本記事は施設側が「露天風呂付き」と表示している宿に絞って収録した。半露天でよければ選択肢はさらに広がるため、各予約サイトの表示条件も合わせて見るとよい。

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本記事と収録が重なる宿については、県別の秘湯記事でも湯を取り上げている。二岐温泉 大丸あすなろ荘は福島県の秘湯、鷹の巣温泉 鷹の巣館は新潟県の秘湯、湯屋温泉 泉岳舘は岐阜県の秘湯、蒲井温泉 いっぺん庵は京都府の秘湯、秩父温泉 ゆの宿 和どうは埼玉県の秘湯で、それぞれ周辺の湯とあわせて紹介している。

注意事項

  • 本記事に掲載している情報(客室構成・入浴料金・営業時間・泉質データ・送迎の有無等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。

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