岐阜県の秘湯10選——奥飛騨から御嶽の山ふところへ
岐阜県の温泉は、県土の北半分を占める飛騨山地が生んだ。3,000m級の峰が連なる北アルプスと、独立峰の霊峰・御嶽山。二つの巨大な山塊のふもとに、山あいの湯が点在する。なかでも北アルプス南麓の奥飛騨温泉郷は、源泉数が140本を超える国内有数の温泉密集地である。平湯・福地・新平湯・栃尾・新穂高の5つの温泉地からなり、蒲田川や高原川の谷筋に沿って一軒宿と露天が散らばる。
湯が豊かなのは、この一帯が今も生きた火山の懐にあるからだ。北アルプスの焼岳は活火山であり、地下の熱が周囲の谷に高温の湯を送り出している。槍見館の源泉は63℃、平湯の湯には硫化水素のにおいが立つ。県の南に目を移すと、御嶽山の中腹、標高1,800mに濁河温泉が湧く。日本でも指折りの高所の温泉地で、単純硫黄泉が24時間こんこんと流れ続ける。御嶽の西麓、小坂の谷には炭酸を含む湯屋温泉があり、飲泉の湯治場として古くから知られてきた。
飛騨の秘湯は、湯だけの土地ではない。福地温泉の一帯は日本有数の化石産出地で、数億年前の海の生き物が山中の地層から出る。合掌造りや朴葉みそに代表される山里の暮らしも、雪深いこの土地が育んだものだ。湯に浸かりながら、足もとの地質と、そこに根づいた山の文化を同時に味わえる。それが岐阜の秘湯の奥行きである。
今回は、宿泊できる山里の一軒宿を中心に、奥飛騨温泉郷から御嶽山麓まで10か所を厳選した。まず泊まって湯を堪能したい宿を挙げ、最後に立ち寄りで楽しめる野湯を添える。
1. 新穂高温泉 槍見の湯 槍見館(岐阜県高山市)
2. 福地温泉 湯元長座(岐阜県高山市)
3. 福地温泉 山里のいおり 草円(岐阜県高山市)
4. 新平湯温泉 奥飛騨百姓座敷の宿 藤屋(岐阜県高山市)
5. 濁河温泉 旅館 湯元館(岐阜県下呂市)
6. 濁河温泉 湯の谷荘(岐阜県下呂市)
7. 湯屋温泉 泉岳舘(岐阜県下呂市)
8. 新穂高温泉 新穂高の湯(岐阜県高山市)

9. 奥飛騨温泉郷 栃尾温泉 荒神の湯(岐阜県高山市)

10. 奥飛騨温泉郷 平湯温泉 平湯民俗館 平湯の湯(岐阜県高山市)

総まとめ——岐阜の秘湯を巡る前に知っておきたいこと
岐阜の秘湯は、高山市の奥飛騨温泉郷と、下呂市の御嶽山麓という二つのエリアに大きく分かれる。どちらも山深く、公共交通よりも車での移動が現実的だ。計画の前に、この地理をまず押さえておきたい。
【奥飛騨温泉郷(高山市)】 北アルプス南麓に広がる温泉郷で、平湯・福地・新平湯・栃尾・新穂高の5温泉地からなる。玄関口は平湯温泉のバスターミナルで、松本・高山・新宿方面からの高速バスが発着する。ここを起点に各温泉地への路線バスが延びるため、車がなくても回れる区間はある。宿泊なら、蒲田川沿いの一軒宿・槍見の湯 槍見館が、大正14年(1925年)創業の老舗だ。源泉温度63℃の単純温泉を掛け流しにし、名峰・槍ヶ岳を望む露天を備える。福地温泉には、囲炉裏を囲む山里の宿・湯元長座と、離れ主体の山里のいおり 草円がある。福地はヌルスベ感のある単純硫黄泉が湧き、一帯は化石の産地としても知られる。新平湯温泉の藤屋は、飛騨の農家屋敷の造りを生かした百姓座敷の宿である。いずれも宿泊が中心のため、日帰り入浴の可否や時間は各宿へ事前に確認したい。
【御嶽山麓・下呂市小坂】 霊峰・御嶽山の中腹、標高1,800mに濁河温泉がある。日本でも屈指の高所の温泉地で、御嶽登山の拠点にもなってきた。旅館 湯元館と湯の谷荘の2軒があり、単純硫黄泉を源泉掛け流しで引く。標高が高いぶん、山道は冬季に閉ざされる期間があり、営業日や道路状況を必ず確認してから向かいたい。同じ小坂の谷、標高の低い位置には湯屋温泉 泉岳舘がある。炭酸を含む鉄分の多い湯で、飲泉の湯治場として長い歴史を持つ。奥飛騨と御嶽山麓は同じ岐阜県ながら車で数時間離れており、一度の旅で両方を欲張るより、エリアを絞って二泊三日以上で組むのが無理のない計画だ。
【立ち寄りの野湯】 湯めぐりの合間には、奥飛騨の開放的な露天を組み合わせたい。新穂高温泉の蒲田川河畔にある新穂高の湯は、旅雑誌の表紙を何度も飾ってきた混浴の野湯だ。栃尾温泉の荒神の湯も川のほとりの露天で、いずれも寸志・協力金制で利用する。平湯温泉の平湯民俗館 平湯の湯は、合掌造りの民俗館に併設された立ち寄り湯である。これらは無人・簡素な施設が多く、清掃時間や季節営業に左右される。訪れる前に営業状況を調べておくと安心だ。
いずれの施設も、日帰り入浴の受付可否や営業時間・料金、冬季の道路状況などは変わりうる。訪問前に各施設の公式サイトや観光協会で最新の情報を確認しておきたい。
よくある質問
Q. 岐阜の秘湯は日帰りでも入れますか。 奥飛騨温泉郷の新穂高の湯・荒神の湯・平湯の湯は立ち寄り専用の野湯・共同湯で、日帰りで利用できる。一方、槍見館や福地・濁河の宿は宿泊が中心で、日帰り入浴は時間帯が限られるか受け付けない日もある。湯そのものを堪能するなら宿泊がおすすめだ。可否は各宿へ事前に確認したい。
Q. 奥飛騨温泉郷へのアクセスは。 玄関口は平湯温泉のバスターミナルで、松本・高山・新宿方面から高速バスが発着する。ここから各温泉地へ路線バスが延びるが、本数は多くない。福地・新平湯・新穂高の各宿や野湯を効率よく巡るなら、レンタカーが便利だ。
Q. 濁河温泉はどのくらい標高が高いのですか。冬も行けますか。 濁河温泉は御嶽山の中腹、標高約1,800mに位置し、日本でも屈指の高所の温泉地である。標高が高いぶん、アクセス路は冬季に通行止めとなる期間がある。訪問時期は宿の営業日と道路状況を必ず確認してほしい。
Q. 混浴の露天や野湯の作法は。 新穂高の湯や荒神の湯のような川沿いの野湯は、昔ながらの混浴スタイルが残る。女性は水着や湯浴み着の着用が推奨される場合が多い。料金は寸志・清掃協力金制で、料金箱に入れて利用する。タオルや小銭を持参すると安心だ。
注意事項
本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。















