信州・長野県は、全国でも有数の温泉王国として知られており、その多彩な泉質と豊かな自然環境に恵まれた秘湯の宝庫です。今回は、山深い秘境に湧く野湯から、歴史と風情を感じる一軒宿まで、長野県の知られざる秘湯を厳選してご紹介します。
1. 七味温泉 紅葉館(上高井郡高山村)
標高1,200mの高地に位置する信州高山温泉郷の一角、七味温泉。その中でも紅葉館は、源泉かけ流しの湯が自慢の一軒宿だ。温泉は70℃と30℃の2本の源泉をブレンドすることにより化学反応が起こり、炭色の黒い湯花が生成される珍しい温泉で、この辺では珍しい存在である。
宿名の通り、四季折々の美しい紅葉を眺めながら入浴できる露天風呂は格別で、特に秋の紅葉シーズンには息をのむような美しさを見せる。加温、加水なしの源泉100%の湯は、温泉本来の力を存分に味わうことができる。
- 泉質:単純硫黄泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1
- 源泉温度:70℃・30℃の2源泉
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
2. 屋敷温泉 秀清館(下水内郡栄村)
長野県最北端の村「栄村」の秋山郷にある屋敷温泉。日本の秘境100選にも登録される山奥の地で、秋山郷唯一の硫黄泉として知られる秘湯の一軒宿だ。
泉質は含硫黄‐ナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩泉で、温度や日光などにより湯色が無色透明・エメラルドグリーン・乳白色に変化するのが特徴。内湯からは中津川渓谷の景観を楽しめ、露天風呂からは四季折々の風景を満喫できる。平家の隠し湯とも呼ばれ、歴史ロマンにも満ちた秘湯だ。
- 泉質:含硫黄‐ナトリウム・カルシウム‐塩化物・硫酸塩泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1(混浴)
- 源泉温度:54.4℃
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:可(10:00-15:00)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業(冬期は要確認)
3. 高峰温泉 ランプの宿(小諸市)
標高約2,000mの高地に立つ一軒宿で、冬期は雪上車に乗らないと行くことができない秘湯の趣が漂う"ランプの宿"として知られている。浅間連峰を望む絶景と心癒される温泉が魅力の山の一軒宿だ。
特に「雲上の野天風呂」からは、高峯渓谷や中央アルプスの稜線まで見渡せる壮大な景色が広がり、雲海や夕焼けに染まる山々が日常を忘れさせてくれる。源泉かけ流しのぬる湯と加温された湯船があり、冷温交互浴で血行促進や疲労回復が期待できる。
- 泉質:カルシウム、ナトリウム炭酸水素塩泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=2、野天風呂=1(宿泊者限定)
- 源泉温度:源泉そのまま(ぬる湯)・加温浴槽
- 日帰り入浴:不可(宿泊者専用)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業(冬期は雪上車でのアクセス)
4. 小谷温泉 山田旅館(北安曇郡小谷村)
江戸時代建築の本館を含む6棟が国の登録有形文化財に指定されている歴史ある湯治宿。武田信玄の家臣によって発見された元湯の源泉は現夢の湯(ウツツノユ)と呼ばれ、日本の名湯として明治時代にドイツでの温泉万博に出品したという格式ある温泉だ。
ラドンを含む重曹泉が滝のように流れ込み、飲用は特に肝臓や糖尿病に効果があり、浴用は傷や火傷に効くほか、子宝の湯とも言われている。江戸、明治、大正、平成とそれぞれの時代に建築された建物が軒を連ね、昔ながらの湯治場の風情を大切に残している。
- 泉質:ナトリウム炭酸水素塩泉(重曹泉)
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=2、展望風呂・露天風呂
- 源泉温度:44℃前後
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
5. 毒沢鉱泉 神の湯(諏訪郡下諏訪町)
信玄の隠し湯と言われた秘湯をもつ自然に包まれた一軒宿。鉄分とミョウバンを多く含む橙色の源泉「毒沢鉱泉」は飲用もでき、胃腸病や貧血等に良いとされる。温泉名の由来は諸説あるが、その効能の高さから戦前には売薬許可を得て医薬品として販売されていたほどだ。
黒を基調とした和風モダンの建物が洗練された印象を与える旅館で、お風呂からは杉や檜が眺められる静寂な環境。夕食は竹籠に盛られた山里料理が自慢で、昔から計り知れないパワーをもつ温泉として知られている。
- 泉質:鉄分・ミョウバンを含む鉱泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1
- 源泉温度:冷鉱泉
- 日帰り入浴:要確認
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
6. 鹿教湯温泉 河鹿荘(上田市)
鹿に姿を変えた文殊菩薩が、信仰心の厚い猟師に温泉の場所を教えたという開湯伝説がある鹿教湯温泉。河鹿荘は、全てかけ流しの源泉100%の温泉を楽しめる湯治宿で、混浴渓流露天風呂・貸切風呂・展望風呂を備える。
江戸時代から湯治場として栄えてきた歴史ある温泉地で、国民保養温泉地(環境庁指定)のひとつ。弱アルカリ性単純温泉で、無色透明でクセがなくやわらかいお湯が特徴。温泉で炊いたご飯はアルカリイオンにより甘みのある美味しいご飯になると評判だ。
- 泉質:弱アルカリ性単純温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=2、露天=1(混浴)、貸切風呂
- 源泉温度:約40℃
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
7. 中房温泉(安曇野市)
29本の源泉を有し14種類の湯巡りが楽しめる温泉好きにはたまらない宿で、北アルプスの中腹に位置し、個性違いの多彩な露天風呂が揃う。中房温泉の一番高い位置にある野天風呂「月見の湯」など、江戸、明治、大正、平成、それぞれの時代に建築された建物が軒を連ね、昔ながらの湯治場の風景を醸し出している。
燕岳登山の基地としても知られ、登山後の疲れを癒すのに最適。源泉はほとんどが90度以上の高温で、すべて加水・加温をせずに自然のエネルギーで冷却し、適温に下げているため、温泉本来の泉質を肌で感じることができる。
- 泉質:単純硫黄泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=数カ所、露天=多数(14種類の湯巡り)
- 源泉温度:90℃以上(自然冷却)
- 日帰り入浴:可(日帰り専用野天風呂「湯原の湯」)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
8. 湯俣温泉 晴嵐荘(大町市)
高瀬ダムの上流、湯俣川と水俣川の合流付近、標高1,534mにある山小屋で、高瀬ダムから約10キロの距離を歩いて行かなければならないまさに秘湯中の秘湯だ。
歩いたご褒美に極上の景色と掛け流しのにごり湯が待っており、晴嵐荘から20分ほど上流に向かえば、川沿いに野湯スポットと国の天然記念物に指定されている「噴湯丘」もある。手つかずの大自然と温泉を満喫するのにこれほど好条件の場所は稀だろう。
- 泉質:単純硫黄温泉(硫化水素型)
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1
- 源泉温度:50.2℃
- 日帰り入浴:可(500円)
- 宿泊:可(1泊2食付14,000円~)
- 営業期間:4月下旬~11月上旬
9. 葛温泉 温宿かじか(大町市)
高瀬渓谷の畔にひっそりと佇む信州の秘湯で、湯量が豊富で泉質が良いと古くから登山客に親しまれてきた。春夏秋冬の"自然と一体化"した露天風呂では、湯の花が舞い、心地よいほのかな硫黄の匂いが漂う。
開放感あふれる大自然の中で、かけ流しの湯に浸かる贅沢さは格別。木々との距離は限りなく近く、自然との一体感を感じられる。日々違った表情を見せ、入浴するたびに新しい発見がある生きている自然の中での温泉体験だ。
- 泉質:単純硫黄泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1
- 源泉温度:約50℃
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業(冬期要確認)
10. 中の湯温泉旅館(松本市)
1915年(大正4年)に創業の山合いの一軒宿で、穂高連峰が臨め、焼岳登山の中の湯コースの登山基地としても大変便利。上高地エリアで唯一の通年営業の宿として、冬の上高地観光の拠点としても重要な役割を果たしている。
目の前には雄大な日本アルプスが広がり、原生林に囲まれた静かな環境で秘湯の会の上質な天然温泉を楽しめる。ロビーの大きな窓から眺める自然の壮観な景観は、山人でなくとも圧倒される迫力がある。
- 泉質:単純硫黄温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=1、露天=1
- 源泉温度:約60℃
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
まとめ
長野県の秘湯は、それぞれに異なる魅力と歴史を持っています。山深い場所にあるからこその豊かな自然環境、古くから湯治場として愛され続けてきた歴史、そして何より源泉かけ流しの上質な温泉が共通の特徴です。
野湯での自然との一体感から、歴史ある湯宿での時代を超えた趣まで、多様な温泉体験を提供してくれる長野県の秘湯。日常の喧騒を離れ、本物の温泉とその土地ならではの自然や文化に触れる旅は、きっと心に残る特別な体験となることでしょう。
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