火の国熊本は、九州でも有数の温泉天国として知られています。阿蘇山の恵みを受けた豊富な湯量と多様な泉質、そして雄大な自然に囲まれた秘湯から歴史ある温泉地まで、多彩な温泉体験が楽しめます。今回は、熊本県内の特におすすめの温泉地と宿泊施設を10か所厳選してご紹介します。野湯から宿泊可能な秘湯まで、幅広くカバーした内容となっています。
1. 黒川温泉 旅館 山河(阿蘇郡南小国町)
阿蘇外輪山の麓、標高700mに位置する黒川温泉の中でも特に静寂に包まれた立地にある一軒宿。黒川温泉街からさらに車で5分ほど奥に入った3000坪の雑木林の中にひっそりと佇んでいる。
館内には「薬師の湯」(単純硫黄泉)と「美肌の湯」(ナトリウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉)の2つの自家源泉があり、7つの趣の異なる湯船で100%源泉かけ流しの温泉を楽しめる。特に混浴露天風呂は青みがかった透明な湯が特徴で、森の中に溶け込むような開放感が味わえる。
客室は16室で、内風呂付きや離れなど多様なタイプを用意。夕食は地元小国郷の旬の食材を使った本格会席料理で、特に山女魚の塩焼きが絶品として評判。
- 泉質:単純硫黄泉、ナトリウム塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=2、露天=5、貸切=3
- 源泉温度:45.1度
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:不可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
2. 地獄温泉 青風荘(阿蘇郡南阿蘇村)
文化元年(1803年)開湯の歴史ある温泉地。阿蘇五岳の一つ、烏帽子岳の中腹、標高750mの山中に位置する。2016年の熊本地震と土石流災害を乗り越え、2021年に全面再開を果たした復興の象徴的な宿。
最大の魅力は「すずめの湯」と呼ばれる足元湧出の奇跡の湯。浴槽の底から青みがかった乳白色の温泉が湧き上がり、加水・循環一切なしの究極の源泉かけ流しを体験できる。現在は着衣入浴スタイルで運営されており、老若男女すべての人が気軽に楽しめる。
他にも「たまごの湯」「元の湯」など複数の源泉があり、それぞれ異なる泉質と効能を持つ。宿泊施設は本館、離れ、曲水舎の3つの棟で構成され、明治中期の木造建築の雰囲気を残しながらも現代的な快適さを提供している。
- 泉質:単純酸性硫黄泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=3、露天=2
- 源泉温度:約50度
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:可(大人1,800円)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業(火曜定休)
3. 人吉温泉 元湯(人吉市)
九州の小京都と呼ばれる人吉市の市街地にある昭和9年創業の共同浴場。人吉城跡から徒歩約7分という便利な立地にありながら、昔ながらの銭湯の雰囲気を色濃く残している。
創業者が夢で温泉が湧く光景を見たことから掘削を始めたという逸話を持つ。弱アルカリ性の源泉は約50度で、少し加水して適温に調整している。湯口から大量に流れ出るお湯は黒っぽい色合いで、長湯する常連客も多い。番台に座るおじいちゃんとの会話も楽しみの一つ。
人吉温泉には約50の源泉があり、市内には5つの共同浴場が点在している。元湯はその中でも80年以上の歴史を持つ代表格で、地元住民の社交場として愛され続けている。2020年の熊本豪雨で被害を受けたが、リフォーム工事を経て同年10月に新装オープンした。
- 泉質:弱アルカリ性単純温泉
- 源泉かけ流し(一部加水)
- 浴槽:内湯のみ(男女別各1)
- 源泉温度:約50度
- 入浴料:200円
- 営業時間:6:00~22:00
- 定休日:元日
- 宿泊:不可
4. 杖立温泉 米屋別荘(阿蘇郡小国町)
天保14年(1843年)創業の老舗旅館で、開湯1700年の歴史を持つ杖立温泉に佇む。弘法大師空海の伝説にちなんで名付けられた温泉地で、杖立川の渓谷沿いに温泉宿が軒を連ねる独特の景観を形成している。
泉質はアルカリ塩泉で「べっぴんの湯」とも呼ばれ、適度な滑りがあり美肌効果が高い。温泉の蒸気を利用した天然サウナ「むし湯」も名物で、地元では風邪をひいた際に喉を潤すために利用されている。
客室は離れ形式でわずか6室の小規模宿。内湯には五右衛門風呂があり、露天風呂や蒸し風呂など多彩な入浴スタイルが楽しめる。料理は地元食材を活かした会席料理で、特に山女魚の塩焼きが好評。プリン販売も行っており、名物の杖立プリンの一つとして人気。
- 泉質:ナトリウム-塩化物泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:内湯=2、露天=2、蒸し湯=1、家族風呂=複数
- 源泉温度:約98度
- 日帰り入浴:可(大人600円)
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
5. 平山温泉 お宿 湯の蔵(山鹿市)
山鹿市の奥座敷と呼ばれる平山温泉に位置する全室露天風呂付きの離れの宿。1300年の歴史を持つ「やまが温泉郷」の一つで、古くから医治効用の高い良質の温泉として親しまれている。
泉質はアルカリ性単純硫黄泉で、化粧美容液のようなとろりとした肌触りが特徴。戦国武将の加藤清正も汗疹を治したとされる美肌の湯として知られている。
客室は寿亭、福亭、禄亭の3つの棟に分かれ、すべて専用の露天風呂を備える。天然温泉100%の源泉かけ流しで、好きな時に温泉を楽しめる。宿泊者専用の大露天風呂もあり、のどかな田園風景を眺めながらの入浴は格別。
食事は月替わりの懐石料理で、市場から直送される新鮮な活き物など旬の素材を使用。ミシュランガイドにも掲載された評価の高い宿として、日帰り入浴も受け付けている。
- 泉質:アルカリ性単純硫黄泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:各客室露天風呂、大露天風呂、内湯
- 源泉温度:60度
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
6. 小天温泉 那古井館(玉名市)
明治元年創業で、夏目漱石の名作「草枕」の舞台となった歴史ある温泉旅館。明治30年の年末に漱石が宿泊し、その体験をもとに「草枕」が執筆された文学ファン必見の宿。
2018年に全館リニューアルを行い、江戸時代末期の梁をそのまま残しながらも、現代の快適さを兼ね備えたレトロモダンな雰囲気を実現。客室は草枕の間など漱石ゆかりの名前が付けられ、文学的な雰囲気を演出している。
温泉は150年前から変わらず湧き続ける毎分300リットルの豊富な源泉かけ流し。泉質は無色透明で刺激のない源泉温度38.5度の単純アルカリ泉で、絹のような肌触りが特徴。漱石が「温泉や水滑らかに去年の垢」と俳句で称賛した湯を現在も楽しむことができる。
- 泉質:単純アルカリ泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:大浴場、露天風呂、客室露天風呂(一部)
- 源泉温度:38.5度
- 加水・加温なし
- 日帰り入浴:要確認
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
7. 天草下田温泉 望洋閣(天草市)
天草諸島の下島西海岸に位置し、「日本の夕陽百選」にも選ばれた東シナ海の絶景を望む温泉ホテル。約700年前に白鷺が傷を癒したという開湯伝説を持つ下田温泉を代表する宿の一つ。
温泉は源泉かけ流しで「沸かさず、薄めず、循環せず」の三原則を徹底。肌がつるつる・すべすべになる美肌の湯として評判で、天草灘の地層の摩擦熱から湧く特殊な温泉。火山性でも非火山性でもない珍しいカテゴリーに分類される。
客室は和室、洋室、メゾネットなど多彩なタイプを用意し、海側の部屋からは美しい夕陽が一望できる。天草の新鮮な海の幸をふんだんに使った料理も自慢で、特に天草名物の車海老や天然うになどの海鮮料理が絶品。
温泉は国民保養温泉地に指定されており、健全な保養地として環境大臣が認定した信頼性の高い温泉地でもある。
- 泉質:ナトリウム塩化物泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:大浴場、露天風呂
- 源泉温度:約60度
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
8. 天草下田温泉 湯本の荘 夢ほたる(天草市)
魚屋直営という珍しい形態の温泉宿で、天草西海岸で獲れた新鮮な海の幸をリーズナブルな価格で提供することで知られている。下田温泉の中でも特に魚介料理にこだわりを持つ宿として人気。
温泉は天然温泉100%で「沸かさず、薄めず、循環なし」の完全なかけ流し。毎日湯抜きして浴槽を清掃しているため、常に清潔で新鮮な温泉を楽しめる。下田温泉最大級の露天風呂を誇り、自然に囲まれた開放的な入浴が可能。
料理は魚屋直営の強みを活かし、天草生うに、伊勢海老、あわび、車海老、渡り蟹などの高級食材を贅沢に使用。特に3月から5月の「天草生うに三昧」期間中は、うに料理6品が付いた特別プランも用意される。
フロントとロビーにはカウンターバーを併設し、地元の方との交流の場としても機能している家族的な雰囲気の宿。
- 泉質:単純温泉
- 源泉かけ流し
- 浴槽:大浴場、露天風呂、客室露天風呂(一部)
- 源泉温度:約50度
- 日帰り入浴:可
- 宿泊:可
- 営業期間:通年営業
9. 阿蘇内牧温泉(阿蘇市)
阿蘇外輪山の直下に広がる温泉郷で、130を超える源泉を持つ九州屈指の温泉地。明治時代から湯治場として栄え、現在でも多くの宿泊施設と共同浴場が点在している。
特徴的なのは「町湯」と呼ばれる日帰りの共同浴場めぐりで、100円からという手頃な価格で様々な泉質の温泉を楽しめる。地元住民の生活に根ざした温泉文化が色濃く残り、観光客と地元民の交流の場としても機能している。
泉質は単純温泉から硫黄泉まで多岐にわたり、それぞれの源泉で異なる効能を体験できる。多くの宿には温泉ソムリエも在籍し、温泉の効能や正しい入浴法についてアドバイスを受けることができる。
阿蘇の雄大な自然に囲まれ、阿蘇五岳の絶景を望みながらの温泉入浴は格別。熊本市内からのアクセスも良く、阿蘇観光の拠点としても最適な立地にある。
- 泉質:単純温泉、硫黄泉など多様
- 源泉かけ流し(施設により異なる)
- 日帰り入浴:可(100円~)
- 宿泊:可(複数の宿泊施設あり)
- 営業期間:通年営業
10. 菊池温泉(菊池市)
熊本県北部に位置し、九州屈指の景勝地「菊池渓谷」の下流に広がる美肌の湯として有名な温泉地。温泉湧出からまだ60年余りと歴史は浅いが、日本名湯百選に選ばれた良質な湯で知られている。
泉質はアルカリ性単純温泉で、とろとろとした独特の肌触りから「美肌の湯」「化粧の湯」と呼ばれ、特に女性から高い人気を誇る。神経痛、関節痛、筋肉痛の緩和などにも効能があるとされている。
温泉街には立ち寄り湯を設けている旅館やホテルが多く、日帰りでも十分に温泉を満喫できる。多くの施設で源泉かけ流しの温泉を楽しめ、それぞれ異なる趣の浴場が用意されている。
春には約3,000本の桜が咲き誇る菊池公園や、8月の菊池白龍まつりなど、温泉以外の観光資源も豊富。四季を通じて様々な楽しみ方ができる温泉地として人気を集めている。
- 泉質:アルカリ性単純温泉
- 源泉かけ流し(施設により異なる)
- 日帰り入浴:可(施設により料金異なる)
- 宿泊:可(複数の宿泊施設あり)
- 営業期間:通年営業
まとめ
熊本県の温泉は、阿蘇山の恵みによる豊富な湯量と多彩な泉質が最大の魅力です。野湯のような秘境感あふれる温泉から、文学ゆかりの歴史ある温泉宿、新鮮な海の幸と組み合わせた天草の温泉まで、それぞれに独自の個性と魅力があります。
どの温泉も源泉かけ流しにこだわり、加水・加温・循環を最小限に抑えた自然そのままの温泉を楽しむことができます。雄大な阿蘇の自然、歴史と文化、そして温かいおもてなしとともに、心身ともに癒される温泉旅行をお楽しみください。
※情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。