岡山県の秘湯・名湯 12選 — 足元湧出のアルカリ泉が息づく美作の湯を巡る

岡山県の秘湯・名湯 12選 — 足元湧出のアルカリ泉が息づく美作の湯を巡る

岡山県は、中国山地の懐に抱かれた美作地方を中心に、全国屈指のアルカリ性温泉が密集する知られざる温泉県だ。湯原・奥津・湯郷からなる「美作三湯」は古くからその名を馳せてきたが、真の魅力は三湯の周辺に点在する足元湧出の名湯群にある。川底から自然に湧き上がる砂湯、江戸時代から湯治客を受け入れてきた共同浴場、1日4組限定の完全予約制の秘湯——いずれもpH9.0を超えるアルカリ性単純温泉で、肌触りはとろりとした「美人の湯」ばかりだ。吉備高原には藩主が開発した冷鉱泉が残り、県境の西粟倉村にはラジウム泉の元湯が静かに湧く。今回は、そのなかから特に個性際立つ12か所を厳選した。


1. 湯原温泉 砂湯(岡山県 真庭市)

湯原温泉 砂湯
引用:真庭観光WEB
湯原温泉 砂湯は、岡山県真庭市の湯原ダム直下、旭川の河川敷に自然湧出する天然の大露天風呂である。その歴史は古く、平安時代の名僧・性空上人が重病の際に夢枕で天童に導かれてこの湯に辿り着き、病を癒したという伝説が残る。さらに遡れば、弥生時代中期にたたら製鉄に従事する人々が湯治場として利用していたとする説もあり、千年以上にわたって人々の身体を癒し続けてきた由緒ある温泉である。「砂湯」の名は、川底の砂を噴き上げながら温泉が湧き出す独特の光景に由来している。 泉質はアルカリ性単純温泉で、pHは約9.0という高いアルカリ性を示す。源泉温度は約45℃で、足元から直接湧き出す源泉かけ流しの湯は、地中から一度も空気に触れていない新鮮そのものである。全国でも50〜60か所程度しか存在しない「足元湧出温泉」のひとつであり、その希少性は温泉愛好家の間で高く評価されている。メタケイ酸を豊富に含む湯はとろりとした肌触りが特徴で、入浴後は肌がしっとりと潤う美肌の湯として名高い。 浴場は「美人の湯」「子宝の湯」「長寿の湯」と名付けられた3つの湯船からなり、それぞれ異なる温度を楽しむことができる。混浴の露天風呂で、24時間無料で開放されているのも大きな魅力である。目の前にそびえる湯原ダムの巨大な壁と、旭川のせせらぎに囲まれた開放的なロケーションは、まさに野趣あふれる温泉体験を提供してくれる。温泉評論家・野口冬人氏による全国露天風呂番付では「西の横綱」に格付けされており、その名声は全国に轟いている。 女性向けには湯浴み着のレンタル(日帰り2,000円、宿泊者500円)が用意されており、タオル巻きでの入浴も認められているため、混浴に不安がある方でも安心して楽しめる。毎週水曜日の午前中は清掃のため入浴不可となるが、それ以外は終日利用可能である。
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2. 真賀温泉 真賀温泉館(岡山県 真庭市)

真賀温泉 真賀温泉館
引用:真庭観光WEB
岡山県真庭市の山あいを流れる旭川の支流沿いに、ひっそりと佇む真賀温泉館は、約700年の歴史を誇る湯治場である。後醍醐天皇の時代、伯耆船上山の戦いに敗れた武将がこの湯で傷を癒したという伝説が残り、江戸時代には勝山藩・津山藩の藩主が湯治に通った由緒ある名湯である。藩主が入浴の際に幕を張って庶民の目を遮ったことから「幕湯」の名がついたとされ、その歴史は400年以上に及ぶ。昭和55年に発行された全国療養温泉番付では西の前頭三枚目にランクされるなど、その療養効果は古くから高く評価されてきた。 真賀温泉館の最大の魅力は、足元湧出の源泉かけ流しにある。浴槽の底にある岩盤の割れ目から直接温泉が湧き出すという、全国的にも極めて珍しい入浴体験ができる。泉質はアルカリ性単純泉でpH9.4、源泉温度は約39.5度とぬるめで、毎分205リットルが自然湧出している。無色透明でほぼ無臭の湯は、肌に触れるとつるつるとした絹のような感触で、まさに天然の美肌の湯である。加水・加温・循環を一切行わない完全な源泉かけ流しで、湧き出したばかりの新鮮な源泉をそのまま堪能できる贅沢さがある。 名物の幕湯は約1.6m×2mという驚くほどコンパクトな混浴岩風呂で、「日本一狭い混浴風呂」とも称される。深さは約1.2mあり、立ったまま入浴するという独特のスタイルである。竹筒から源泉が流れ込み、足元の岩盤の裂け目からはポコポコと気泡が立ち上る。定員はわずか数名で、狭い空間に凝縮された温泉の魅力は他に類を見ない。男湯・女湯の普通湯でも竹筒から源泉が注がれ、体に細かい気泡がまとわりつくヴェールのような感覚を楽しめる。貸切風呂も3室あり、家族やカップルでゆったりと源泉を楽しめる。
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3. 般若寺温泉(岡山県 真庭市)

4. 郷緑温泉 郷緑館(岡山県 真庭市)

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5. 奥津温泉 奥津荘(岡山県 苫田郡鏡野町)

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6. 奥津温泉 東和楼(岡山県 苫田郡鏡野町)

7. 奥津温泉 池田屋河鹿園(岡山県 苫田郡鏡野町)

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8. 湯原温泉 元禄旅籠 油屋(岡山県 真庭市)

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9. 湯原温泉 八景(岡山県 真庭市)

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10. 小森温泉(岡山県 加賀郡吉備中央町)

小森温泉は岡山県のほぼ中央、吉備中央町の山間に静かに佇む一軒宿の温泉である。その起源は江戸時代中期の享保17年(1732年)に遡り、岡山藩主・池田継政が湯治場として開発したことに始まる。しかし温泉の発見はさらに古く、一羽の鷺が傷を癒すために湧き湯に浸かっていたのを里人が見つけたのがきっかけと伝えられている。源泉近くの山には薬師堂が建てられ、「霊泉」として地域の人々に崇められてきた。藩営の湯治場として莫大な費用と人員を投じて本格的な湯屋が建設されたが、源泉に清水が混入する事態が起き、わずか数年で閉鎖を余儀なくされた。長い空白期間を経て昭和28年(1953年)頃に再興され、現在に至るまで約290年の歴史を紡いでいる。 小森温泉の泉質はアルカリ性単純温泉で、pH9.4という高いアルカリ性を誇る。源泉温度は28.1℃の冷鉱泉であり、加温して適温で提供される。無色透明の湯は肌触りがなめらかで、入浴後に肌がつるつるになると評判の「美人の湯」である。湯面には白い湯の花が静かに浮かび、天然温泉ならではの風情を醸し出している。洗い場の蛇口からも温泉が出るほど湯量に恵まれ、贅沢な源泉かけ流しを堪能できる。アトピー性皮膚炎、神経痛、筋肉痛、関節痛などに効能があるとされ、古くから湯治の湯として親しまれてきた。
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11. 湯の瀬温泉(岡山県 加賀郡吉備中央町)

12. あわくら温泉 元湯(岡山県 英田郡西粟倉村)

あわくら温泉は岡山県の最北東部、鳥取県との県境に位置する西粟倉村に湧く温泉である。その発見は鎌倉時代にまで遡ると伝えられ、狩人に撃たれた狸が数日後に元気な姿で山に帰っていくのを不思議に思った村人が川辺を探索したところ、湯が湧き出ていたのを見つけたという伝承が残っている。さらに、赤牛が泉源で暴れたために泉温が下がって冷泉になったという興味深い言い伝えも語り継がれている。元湯は長らく西粟倉村の公営温泉として親しまれてきたが、2011年11月に一度営業を休止。その後2015年に民間への業務委託により再オープンし、築50年以上の建物を大胆にリノベーションした「焚き火を楽しむ温泉ゲストハウス」として新たな歩みを始めた。 泉質は単純弱放射能泉、いわゆるラジウム泉である。ラドン含有量は40マッヘを記録し、これは岡山県内で最も高い数値を誇る。ラジウム泉は微量放射線によるホルミシス効果が期待され、痛風、高血圧、動脈硬化、慢性皮膚病などへの効能があるとされている。源泉温度は14〜15℃と冷泉に分類されるため、西粟倉村の豊かな森林資源から生まれる間伐材を薪に用いたボイラーで加温している。この地域資源を活用した加温方法は、環境に配慮した持続可能な温泉運営のあり方として注目されている。湯はなめらかでとろりとした肌触りが特徴で、入浴後もぽかぽかとした温まりが長く持続する。
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総まとめ — 岡山の秘湯を旅する前に知っておきたいこと

岡山県の温泉は、大きく4つのエリアに分けて巡ると効率的である。

【湯原エリア】 砂湯、真賀温泉、般若寺温泉、郷緑温泉、油屋、八景の6か所が集中する岡山県最大の温泉エリアだ。米子自動車道 湯原ICを起点に、砂湯と八景は徒歩圏内、真賀温泉は車で約5分、般若寺温泉は車で数分、郷緑温泉は旭川上流に向かって約15分の距離にある。油屋は湯原温泉街の中心に位置する。朝に砂湯の無料露天風呂を楽しみ、昼は真賀温泉の幕湯で足元湧出を体感し、午後は般若寺温泉(要予約)で渓谷の絶景を堪能、夕方は油屋か八景で宿泊——という1泊2日のプランが理想的だ。郷緑温泉は少し離れるため、翌日の午前中に立ち寄るとよい。

【奥津エリア】 奥津荘、東和楼、池田屋河鹿園の3軒がいずれも奥津温泉街に集まっており、徒歩で三湯めぐりが可能だ。中国自動車道 院庄ICから国道179号を北上して約30分。3軒とも足元湧出またはそれに準じる良質な源泉を持ち、それぞれ個性が異なるため、半日あれば十分に巡れる。湯原エリアとは車で約1時間の距離にあり、湯原・奥津の2エリアを2泊3日で巡る周遊コースが組める。4月中旬〜5月上旬には奥津渓の新緑、10月下旬〜11月中旬には紅葉が見事で、温泉と渓谷美を同時に楽しめる。

【吉備高原エリア】 小森温泉と湯の瀬温泉は、いずれも吉備中央町の山間に位置する冷鉱泉だ。岡山市街地から車で約1時間。両施設は車で約20分の距離にあるため、半日で巡ることができる。ただし、いずれもバスの便数が極めて少なく、レンタカーが必須である。岡山市や倉敷市からの日帰り圏内にあるため、吉備路の観光(備中国分寺、鬼ノ城など)と組み合わせた旅がおすすめだ。

【県境エリア】 あわくら温泉 元湯は、智頭急行大原駅から車で約15分の西粟倉村に位置する。鳥取方面への旅の途中に立ち寄りやすい場所だが、バスの便は少ないためレンタカーが望ましい。西粟倉村では温泉のほかに、森林セラピーや地域の木工体験なども楽しめる。兵庫県の湯村温泉や鳥取県の三朝温泉と組み合わせた広域の湯めぐりプランも検討に値する。

全体として、岡山県の温泉巡りにはレンタカーが不可欠である。JR岡山駅でレンタカーを借り、湯原・奥津エリアを2泊3日で巡るのが最も効率的だ。冬季(12月〜2月)は中国山地の山間部で積雪・路面凍結が発生するため、スタッドレスタイヤの装着が必要となる。また、般若寺温泉のように完全予約制の施設や、東和楼のように営業形態が変わっている施設もあるため、訪問前に必ず最新の営業状況を確認してほしい。

※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。

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