高知県の秘湯・名湯 10選 — 土佐の硫黄泉から四万十源流の貸切湯、太平洋を望む塩化物泉まで

高知県の秘湯・名湯 10選 — 土佐の硫黄泉から四万十源流の貸切湯、太平洋を望む塩化物泉まで

高知県は四国南部に位置し、北を四国山地、南を黒潮流れる太平洋に挟まれた、地理的にも文化的にも個性豊かな「土佐」の国である。県中央を東西に貫く清流・仁淀川は「仁淀ブルー」の名で全国に知られ、西部を流れる四万十川は「日本最後の清流」として名高い。これらの源流域には、深い山々に抱かれた一軒宿の秘湯が点在し、四国カルストや天狗高原など標高1,400メートルを超える高原地帯にも、星空リゾートが息づいている。歴史を遡れば、平安時代に弘法大師・空海が四国を巡錫した際に発見したと伝わる古湯、土佐藩主・山内家の下屋敷跡に建つ城下町の温泉、平家の落人や伊能忠敬が立ち寄ったと語られる海辺の冷鉱泉など、坂本龍馬を生んだこの地ならではの逸話が湯めぐりに彩りを添える。一方で、高知の温泉は他地域と比べて源泉温度が低い冷鉱泉が多く、泉質的には四国では希少なアルカリ性硫黄泉が点在するのが大きな特徴だ。今回は、土佐の山と海と川が育んだ個性際立つ10か所を厳選し、温泉法上の温泉ではないが特別に紹介したい四国カルストの高原リゾートも併せて取り上げる。


1. 千年の美湯 そうだ山温泉 和(高知県 須崎市)

須崎市中心部から北へ約5キロ、桑田山(そうだやま)の麓に佇む一軒宿である。開湯は平安時代と伝わり、約1200年の歴史を誇る古湯だ。四国を巡錫した弘法大師・空海が、湧き続ける霊泉を薬水として里人に伝えたという伝説が残る。旧称は「桑田山温泉」だが、2012年の改装と2013年の露天風呂新設を経て、「千年の美湯 そうだ山温泉 和(YAWARAGI)」としてリニューアルされた。 泉質はアルカリ性単純硫黄冷鉱泉で、pH9.5の高アルカリ性、源泉温度18.3℃。湧出量は毎分360リットルと豊富で、四国随一の湯量と謳われる。とろりとした独特のなめらかさを持つ湯は、地元では「美人の湯」「W美肌の湯」と呼ばれ、入浴後は化粧水を塗ったかのようにしっとりとした感触が続く。男湯「染んだ山の湯」、女湯「べっぴんの湯」にはそれぞれ内湯と露天風呂が備わり、すべて源泉かけ流し。本館4部屋・離れ3棟の小さな宿だが、日帰り入浴は9:00〜21:00(最終受付20:30)と長時間営業で、年中無休。料金は大人700円、小学生350円、幼児250円、11:59までの「朝風呂」480円もお得である。高知自動車道・須崎東ICから車で約5分、JR土讃線・吾桑駅から無料送迎(要予約)あり。須崎名物の鍋焼きラーメンと組み合わせて訪れたい一湯である。
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2. 四万十源流癒しの里 郷麓温泉(高知県 高岡郡 津野町)

四国カルストの麓、四万十川源流域にわずか6室だけの隠れ家のような一軒宿がある。「四万十源流癒しの里 郷麓温泉(ごうろくおんせん)」――1970年(昭和45年)に湧出が確認された、津野町内ただひとつの温泉である。「郷麓」の名は、源泉が発見された地点の標高が356メートルであったことに由来する。深山幽谷に包まれたこの宿に車を進めると、いつしか携帯電話の電波も心もとなくなり、聞こえてくるのは北川川のせせらぎと、風が梢を揺らす音ばかりとなる、まさに奥四万十の懐に抱かれる秘湯である。 泉質はアルカリ単純硫黄泉で、四国では極めて希少な硫黄泉を源泉100%のかけ流しで提供する。蛇口をひねれば、ほんのりと硫黄の香りを纏ったとろりとした湯がこんこんと注ぎ込まれ、肌に触れた瞬間にまろやかな滑らかさを伝える。温泉ファンの間でも「四国でこの湯質に出会えるのは奇跡」と語られるほどである。浴場は本館の「檜の湯」と敷地内川沿いの「離れの湯」の2つで、いずれも完全予約制の貸切風呂。日帰り入浴は1組60分3,600円(4名まで)の貸切制で、金・土・日・月曜の11:00〜15:00(最終受付14:00)に受付、前日までの電話予約が必須となる。火・水曜は宿泊・日帰りとも休業。宿泊は1泊2食付きスタンダード13,200円〜で、四万十源流の山・川・海の幸を活かした会席料理が供される。高知自動車道高知ICまたは須崎東ICから車で約1時間20〜40分。山間部のため冬期は積雪・凍結に注意したい。
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3. 山里温泉旅館(高知県 須崎市)

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4. 土佐龍温泉 三陽荘(高知県 土佐市)

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5. こまどり温泉(高知県 安芸市)

高知県安芸市の中心部から車で約30分、深い山々に抱かれた東川地区の里山に「こまどり温泉」は静かに佇んでいる。施設名の由来となった「駒鳥(こまどり)」は、清流のせせらぎを思わせる美しい鳴き声で知られる野鳥で、この山あいの集落の豊かな自然を象徴する存在である。温泉の歴史は昭和59年(1984年)に遡る。地元住民が偶然「湯の花」を発見し、温泉脈を掘り当てたのがすべての始まりであった。その後、平成6年(1994年)に温泉利用権が安芸市へ譲渡され、平成8年(1996年)に現在の公共施設として開業。地元の方々の暮らしに寄り添いながら、遠方からの湯治客や秘湯愛好家にも長く愛されてきた。 泉質は単純硫黄冷鉱泉で、源泉温度は約17℃。柔らかな肌触りとほのかな硫黄の香りが心地よく、湯あがりにはしっとりとなめらかな肌を実感できる「美肌の湯」としても評判である。冷鉱泉ゆえ加温して提供されるが、源泉かけ流しの清新な湯がふんだんに注がれる贅沢さは秘湯ならではの醍醐味だ。塩素消毒の有無は公表されていないが、山あいの清らかな水と硫黄の香りが渾然一体となった湯は、都会の温泉では得難い「土地の湯」の風情を確かに伝えてくれる。湯口に顔を近づけると、ふわりと立ちのぼる硫黄の香りが鼻腔をくすぐり、ここが間違いなく「秘湯」であることを五感で実感できる。
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6. 三翠園 天然温泉 水哉閣(高知県 高知市)

高知市の中心部、鷹匠町に佇む「三翠園」は、旧土佐藩主山内家の下屋敷跡に建つ由緒ある温泉旅館です。敷地内には1864年から1866年にかけて土佐藩15代藩主山内容堂・16代藩主山内豊範の下屋敷の警護にあたる足軽の宿泊所として建てられた長屋が現存し、国の重要文化財に指定されています。幕末維新の風雲を見つめてきたこの地は、坂本龍馬や中岡慎太郎らも訪れた可能性のある歴史の舞台で、訪れるだけで土佐の歴史ロマンに浸ることができます。 天然温泉「水哉閣(すいさいかく)」の名は、当時皇太子であった大正天皇が命名されたもので、同行した東郷平八郎元帥が揮毫した墨書が現在も館内に大切に掲げられています。高知市内で湧出する唯一の天然温泉として知られ、源泉温度約48度の高温泉。泉質はナトリウム塩化物泉で、塩分による優れた保温効果から湯冷めしにくく、古くから「熱の湯」「傷の湯」として親しまれてきました。神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性、慢性婦人病など幅広い効能が期待できる名湯です。 湯殿には開放感あふれる露天風呂をはじめ、大浴場、高温風呂、水風呂、サウナ、打たせ湯と多彩な浴槽が揃い、思い思いのスタイルで温泉浴を楽しめます。洗面エリアにはドライヤーや化粧水、乳液なども完備され、女性にも嬉しい配慮が行き届いています。日帰り入浴も歓迎しており、観光や出張の合間に気軽に立ち寄れるのも魅力です。 日帰り入浴は10時から16時まで(最終受付15時30分)、料金は大人1,200円、小学生600円、幼児400円、65歳以上は800円です。タオルの持参が推奨されますが、貸出・販売も用意されています。アクセスはとさでん交通路面電車「県庁前」電停から徒歩約5分、JR高知駅からはタクシーで約10分。高知城まで徒歩圏内なので、城下町散策と組み合わせて訪れるのもおすすめです。約60台収容の駐車場も無料で利用でき、ドライブ旅にも便利です。
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7. 須賀留の湯治場(高知県 幡多郡 黒潮町)

高知県西部、太平洋に面した黒潮町熊野浦の岩場に、現代日本では信じがたいほど原始的な湯治場が、ひっそりと存在している。「須賀留(すがる)の湯治場」――別名・須賀留天然温泉は、源泉温度わずか19℃のアルカリ性単純硫黄冷鉱泉が海辺の岩から滲み出るように湧き、利用者自らが薪で沸かして入る、完全セルフサービスの五右衛門風呂である。伝承によれば、平家の落人が傷を癒し、江戸後期の測量家・伊能忠敬も日本地図作成のための測量行で立ち寄ったとされる。四国温泉八十八ヶ所めぐりの第49番札所にも認定された、由緒ある名水だ。 利用者はまず海岸に流れ着いた流木を拾い集め、それを割って薪にし、五右衛門風呂の釜の下にくべて火を起こす。源泉から約200メートル離れた山中の湧出地点から黒いゴムホースで運ばれた冷泉を、ポリタンクからバケツで汲んで風呂釜に注ぎ込み、湯が適温に達するまでには優に1時間以上を要する。薪集めから入浴までトータルで2〜3時間は見ておかねばならない。沸き上がった湯は仄かに硫黄の香りを纏い、目の前には太平洋の大海原がどこまでも広がる。施設は地権者と黒潮町佐賀支所の善意によって維持されている無人の場で、入浴料は無料だが、現地の善意箱に1,000円程度の寸志を入れていくのが訪問者の暗黙のマナーだ。タオル・石鹸・着火剤・マッチ・バケツなどは持参必須。高知自動車道・四万十町中央ICから車で約1時間、最後の数百メートルは道幅約1.5mの離合困難な細道のため、軽自動車またはコンパクトカーが強く推奨される。日没後の訪問は厳禁。マナー違反による閉鎖の危機が続いているため、火の始末・ゴミ持ち帰りを徹底することが、この伝説の湯を守る最低限の作法である。
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8. 道の駅 木の香 木の香温泉(高知県 吾川郡 いの町)

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9. 中津渓谷 ゆの森(高知県 吾川郡 仁淀川町)

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総まとめ — 高知の湯を旅する前に知っておきたいこと

高知県の温泉は、大きく県中央(高知市・近郊)県東部(安芸方面)県西部(仁淀川・四万十方面)山間部(四国山地・四国カルスト)の4エリアに分けて巡ると整理しやすい。

【県中央エリア】 高知市内には三翠園 天然温泉 水哉閣があり、市内観光の拠点として最適。土佐市の土佐龍温泉 三陽荘は車で約30〜40分の距離で、太平洋を望む露天風呂が魅力。1日目に高知市内で坂本龍馬や山内家ゆかりの史跡を巡り、三翠園で歴史情緒に浸り、2日目に三陽荘で青龍寺参拝と組み合わせるコースが王道である。

【県東部・安芸方面】 こまどり温泉が安芸市の山中に静かに佇む。土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線で安芸駅まで電車旅を楽しみ、岩崎弥太郎生家や安芸城跡を訪ねたあと、こまどり温泉でひと風呂浴びるのがおすすめ。高知駅から安芸まで電車で約1時間20分、こまどり温泉まではさらにタクシーで約30分の行程となる。

【県西部・仁淀川/四万十方面】 須崎市の千年の美湯 そうだ山温泉 和、山里温泉旅館、津野町の四万十源流癒しの里 郷麓温泉、黒潮町の須賀留の湯治場、仁淀川町の中津渓谷 ゆの森が西部に集中する。仁淀ブルーで有名な仁淀川観光と組み合わせて中津渓谷 ゆの森で宿泊、四万十川源流域で郷麓温泉の貸切硫黄泉を堪能する2泊3日の「西部秘湯三昧プラン」が組める。須賀留の湯治場は完全セルフサービスかつアクセス難度が極めて高いため、温泉上級者のみが挑戦すべき特殊な目的地として捉えたい。

【山間部・四国山地/四国カルスト】 いの町の道の駅 木の香 木の香温泉と、津野町のホテル星ふるヴィレッジTENGUが山間部に位置する。木の香温泉は国道194号沿いで愛媛県との県境近くにあり、UFOライン(瓶ヶ森林道)や寒風山登山の前後に立ち寄りやすい。星ふるヴィレッジTENGUは四国カルスト天狗高原の標高1,400mに建ち、夏の天の川観賞や雲海体験が圧巻。両施設は車で約1時間30分の距離なので、山岳ドライブと組み合わせた1泊2日プランが組める。

高知市起点モデルコース:

  • 1日目(高知市内・近郊):高知駅到着 → ひろめ市場で昼食(カツオのたたき) → 高知城・坂本龍馬記念館 → 三翠園 天然温泉 水哉閣で日帰り入浴または宿泊。
  • 2日目(中央〜西部):高知市発 → 須崎市・千年の美湯 そうだ山温泉 和(朝風呂480円)→ 須崎名物・鍋焼きラーメンで昼食 → 仁淀川町・中津渓谷 ゆの森で宿泊(仁淀ブルー・中津渓谷散策)。
  • 3日目(西部・四万十源流方面):中津渓谷 ゆの森発 → 津野町・四万十源流癒しの里 郷麓温泉で日帰り貸切入浴(要前日予約) → 高知龍馬空港または高知駅へ戻る。

アクセス・季節注意点:

  • 冬季(12月〜3月):四国カルスト天狗高原(星ふるヴィレッジTENGU)、UFOライン周辺(木の香温泉から先)、四万十源流域(郷麓温泉、山里温泉旅館)など標高の高い山間部では積雪・凍結のためスタッドレスタイヤまたはチェーン必携。星ふるヴィレッジTENGUへの県道383号は冬季通行止めとなる場合あり。
  • 春(3月下旬〜4月):そうだ山温泉のカワヅザクラ、仁淀川流域の桜が見頃。中津渓谷の新緑も美しい。
  • 夏(7〜8月):四万十川・仁淀川での川遊びと組み合わせた温泉巡りが最適。星ふるヴィレッジTENGUの天の川観賞シーズン本番。須賀留の湯治場は波が穏やかな時期のみ訪問可能。
  • 秋(10月下旬〜11月中旬):中津渓谷、四国カルスト、四万十源流域の紅葉が圧巻。中津渓谷 ゆの森の料金が紅葉シーズン料金(大人900円)になる点に注意。
  • 台風シーズン(8〜9月):太平洋沿岸の須賀留の湯治場や土佐龍温泉 三陽荘、山間部の道路は通行不能となる場合あり。事前の天候・道路情報確認が必須。
  • 公共交通:高知県の温泉は山間部・海沿いに点在するため、レンタカーまたは自家用車での来訪が基本。郷麓温泉、山里温泉旅館、こまどり温泉、須賀留の湯治場、星ふるヴィレッジTENGUは公共交通でのアクセスが極めて困難。市内中心の三翠園 天然温泉 水哉閣のみ、路面電車で気軽にアクセス可能である。

土佐の湯は、海と山と川の恵みが溶け合った、本州とは一味違う湯文化を体感させてくれる。坂本龍馬や山内家の歴史、四万十川や仁淀川の清流、太平洋の雄大さを背景に、四国では希少な硫黄泉や塩化物泉を味わう旅は、湯巡り愛好家にとって生涯の記憶となるだろう。


※本記事に掲載している情報は2026年4月時点のものであり、料金・営業時間・定休日・アクセス等は変更となる場合がある。訪問前には必ず各施設の公式サイトや観光協会等で最新情報を確認されたい。

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