長野県野沢温泉村には13カ所の外湯(共同浴場)があり、すべて無料で入浴できる。運営するのは「湯仲間」と呼ばれる地域住民の組織で、江戸時代から続くこの仕組みが、観光地でありながら生活の一部としての温泉を今に伝えている。
13湯はいずれも源泉かけ流しである。自然湧出する源泉を浴槽に流し込んでおり、泉質や源泉温度、浴槽の造りは湯ごとに異なる。同じ野沢温泉の湯でも、歩く場所によって表情が変わる。
13の外湯をエリア別に並べ、泉質・源泉温度・営業時間を一覧表にまとめた。あわせて半日と1日のモデルコース、外湯を回るときの作法も記した。なお2026年9月現在、秋葉の湯が工事のため休止中で、実際に入浴できるのは12湯である。
この記事でわかること
- 野沢温泉13の外湯の場所・泉質・営業時間
- 3エリアに分けた効率的な湯めぐりの回り方
- 外湯を利用する際の作法と注意点
- 湯めぐりとあわせて訪ねたい周辺の文化スポット
野沢温泉の湯めぐりとは — 1200年の歴史と湯仲間制度
1200年の歴史と「温泉」の名を持つ村
野沢温泉は奈良時代(724〜748年)に僧・行基が発見したと伝わり、開湯から1200年以上の歴史を持つ。江戸時代には飯山藩主・松平氏が湯治を奨励したとされ、庶民にも広く知られるようになり、北信濃や越後から農閑期に湯治客が訪れる場所として発展した。現在も「温泉」の名を村名に冠する日本で唯一の村であり、温泉を中心とした生活文化が色濃く残る。
湯仲間制度 — 江戸時代から続く管理の仕組み
野沢温泉の外湯を特徴づけているのが、江戸時代から続く「湯仲間」という管理制度である。各外湯周辺の住民が湯仲間を組織し、電気代・水道代の負担、日々の清掃、修繕までを住民自身の手で担う。外湯の入浴料が無料なのは、観光施設ではなく住民が自ら維持している共同浴場だからである。
30余りの源泉、すべて自然湧出
村内には30余りの源泉があり、約40℃から約90℃の湯がいずれも自然に湧出する。良質な天然温泉100%かけ流しで、多くの湯が弱アルカリ性である。自然湧出泉がこれほど多く存在し、なおかつ無料で利用できる温泉地は珍しい。
生活に溶け込む麻釜(おがま)

温泉街の一角にある麻釜(おがま)は、100℃近い高温の源泉が湧く場所で、住民が野沢菜を洗ったり、野菜や卵を茹でたりする生活の場として今も使われている。周辺には洗濯湯もあり、湯仲間が日常的に利用している。
薬師三尊と十二神将 — 温泉と信仰
野沢温泉の公式観光サイトによれば、大湯には薬師三尊を、その他の湯には十二神将を「湯まもり仏」として祀っている。入浴前に手を合わせる住民の姿があり、外湯は単なる入浴施設ではなく信仰の対象でもある。
13の外湯を歩く — 3つのエリアに分けて
13の外湯は、温泉街の中心、麻釜まわりと北の高台、村の南側・スキー場側の3エリアに分けて回ると無駄がない。以下、エリアごとに1番から13番まで通し番号で紹介する。各湯の詳しい写真・アクセス・口コミは個票ページで確認できる。
温泉街の中心 — 大湯・河原湯・松葉の湯・横落の湯
野沢温泉のシンボルである大湯を中心に、河原湯・松葉の湯・横落の湯が徒歩数分の範囲に集まっている。温泉街の中で最も湯屋が密集しているエリアで、湯めぐりの起点にしやすい。
1. 大湯(おおゆ)

源泉66℃・単純硫黄泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
2. 河原湯(かわはらゆ)
源泉約60℃・単純硫黄泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
3. 松葉の湯(まつばのゆ)
源泉約90℃・単純硫黄泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00/温泉たまごの釜あり

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
4. 横落の湯(よこちのゆ)
源泉約90℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/通年 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 06:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
麻釜まわりと北の高台 — 麻釜の湯・熊の手洗湯・上寺湯・滝の湯・真湯
麻釜の周辺からつつじ山公園方面にかけて、5つの外湯が点在する。麻釜の見学とあわせて回ると、住民の生活文化にも触れられるエリアである。
5. 麻釜の湯(あさがまのゆ)
源泉約90℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
6. 熊の手洗湯(くまのてあらいゆ)

源泉約40℃・単純硫黄泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00/温泉たまごの釜あり

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
7. 上寺湯(かみてらゆ)
源泉約90℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00/温泉たまごの釜あり

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
8. 滝の湯(たきのゆ)
源泉約78℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/4〜11月 5:00〜21:00、12〜3月 6:00〜22:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 21:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
9. 真湯(しんゆ)

源泉約55℃・単純硫黄泉/通年 6:00〜22:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 06:00 - 22:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
村の南側・スキー場側と村の入口 — 十王堂の湯・新田の湯・秋葉の湯・中尾の湯
村の南側からスキー場方面にかけては、規模の大きな外湯が並ぶ。温泉街の中心からは少し離れるため、湯めぐりの後半に組み込むとよい。
10. 十王堂の湯(じゅうおうどうのゆ)
源泉約90℃・単純硫黄泉/通年 6:00〜22:00/温泉たまごの釜あり

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 06:00 - 22:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
11. 新田の湯(しんでんのゆ)
源泉約90℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
12. 秋葉の湯(あきはのゆ)
※解体工事のため2026年5月11日〜10月30日までの予定で休止中(集印台は野沢温泉観光案内所へ仮置き)。
源泉約90℃・単純硫黄泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
13. 中尾の湯(なかおのゆ)
源泉約90℃・含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉/4〜11月 5:00〜23:00、12〜3月 6:00〜23:00

| 月 | 火 | 水 | 木 | 金 | 土 | 日 | 祝 | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 05:00 - 23:00 | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ | ◯ |
13湯の泉質・営業時間 一覧
外湯の営業時間は湯によって異なる。真湯・横落の湯・十王堂の湯は季節を問わず通年で開始・終了時刻が決まっており、滝の湯は季節で開始・終了時刻とも変わる(4〜11月 5:00〜21:00、12〜3月 6:00〜22:00)。それ以外の湯は4〜11月が5:00〜23:00、12〜3月が6:00〜23:00である。
湯名 | 源泉温度 | 泉質 | 営業時間(4〜11月) | 営業時間(12〜3月) | 源泉 |
|---|---|---|---|---|---|
大湯 | 66℃ | 単純硫黄泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 大湯 |
河原湯 | 約60℃ | 単純硫黄泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・河原湯 |
松葉の湯 | 約90℃ | 単純硫黄泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・冷泉はスパリーナ |
横落の湯 | 約90℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 6:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜 |
麻釜の湯 | 約90℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜 |
熊の手洗湯 | 約40℃ | 単純硫黄泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・熊の手洗湯 |
上寺湯 | 約90℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・熊の手洗湯 |
滝の湯 | 約78℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 5:00〜21:00 | 6:00〜22:00 | 滝の湯 |
真湯 | 約55℃ | 単純硫黄泉 | 6:00〜22:00 | 6:00〜22:00 | 真湯 |
十王堂の湯 | 約90℃ | 単純硫黄泉 | 6:00〜22:00 | 6:00〜22:00 | 麻釜・湯ノ宮 |
新田の湯 | 約90℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・冷泉は向林 |
秋葉の湯(2026年10月30日までの予定で休止) | 約90℃ | 単純硫黄泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・冷泉はスパリーナ |
中尾の湯 | 約90℃ | 含硫黄-ナトリウム・カルシウム-硫酸塩泉 | 5:00〜23:00 | 6:00〜23:00 | 麻釜・冷泉は向林 |
湯めぐりのモデルコース
半日コース(3時間・4湯)
温泉街の中心エリアの4湯(大湯・河原湯・松葉の湯・横落の湯)を回るコースである。温泉街はコンパクトで、このエリア内の移動は徒歩数分で済む。大湯を起点に回れば3時間程度で収まる。
1日コース(13湯すべて)
温泉街の中心エリアから麻釜まわりのエリア、村の南側のエリアへと地理的に近い順に歩くと無駄がない。大湯を起点に中心エリアの4湯を回り、麻釜通りを北上して麻釜まわりの5湯(麻釜の湯・熊の手洗湯・上寺湯・滝の湯・真湯)を巡る。最後に南下して村の南側の4湯(十王堂の湯・新田の湯・秋葉の湯・中尾の湯)で締めくくる。全13湯を回るには5〜7時間程度が目安になる。ただし2026年10月30日までの予定で秋葉の湯が工事のため休止中で、実際に入浴できるのは12湯である。
外湯を回るときの作法と注意
- 入浴前に体を洗ってから湯に入る
- 浴槽にタオルを入れない
- 加水している湯は、適温になったら水を止める
- 他の利用者への配慮を欠かさず、エチケットを守って入浴する
- 防犯上等の理由により、深夜の入浴はできない
- 賽銭箱への心づけは、湯仲間への協力金としての寸志である
- 源泉温度は湯により約40℃から約90℃まで幅があるため、熱い湯では長湯を避ける
- タオルや石けんの貸し出しは行っていないため持参する
- 清掃中は入浴できないことがある
湯めぐりとあわせて訪ねたい文化スポット
野沢温泉には外湯13カ所を含む村内全27カ所に集印台があり、集印帳を片手に村内を巡ることができる。スタンプが10個以上でタオル、20個以上でタオルまたは手ぬぐいのいずれか1つがもらえる。集印帳は野沢温泉観光案内所・野沢温泉旅館組合・フキヤ商店・黄金屋物産店・丸見屋商店・野沢工芸などで取り扱っている。
健命寺は野沢菜発祥の地として知られる寺で、宝暦6年(1756年)に住職が京都から持ち帰った天王寺蕪が野沢菜の起源とされる。4月下旬から5月上旬には境内で菜の花が咲く。
湯澤神社は温泉の守り神として古くから信仰されており、9月の例祭「燈籠祭り」では三十六歌仙の舞などが奉納される。
おぼろ月夜の館は、唱歌「朧月夜」「故郷」の作詞者・高野辰之の記念館で、野沢温泉と文学のかかわりを紹介している。
毎年1月15日には、国の重要無形民俗文化財に指定された道祖神祭りが行われる。手作りの社殿を燃やす側と守る側に分かれて攻防する火祭りで、厄除けと無病息災を願う行事である。
料金・アクセス・基本情報
住所: 長野県下高井郡野沢温泉村
料金: 外湯入浴料は無料(心づけ)。日帰り温泉施設「ふるさとの湯」は外湯とは別に入浴料がかかる。
アクセス(電車・バス): JR東京駅から北陸新幹線「はくたか」で飯山駅まで約1時間50分、飯山駅から野沢温泉ライナーで約25分。
アクセス(車): 上信越道豊田飯山ICから約25分、関越道塩沢石打ICから約1時間15分。
駐車場: 各外湯に専用駐車場はなく、村営駐車場を利用する。新田立体駐車場(通年1時間100円)、横落駐車場(夏季無料・冬季日帰り500円)がある。ほかに中尾駐車場(夏季無料・冬季は一般車利用不可)、第1駐車場(夏季無料・冬季は平日・初滑り・春山が無料〈6:00〜18:00〉、土日祝・年末年始は1日1,000円)などもある。中央ターミナルは通年一般車利用不可。
問い合わせ: 野沢温泉マウンテンリゾート観光局(〒389-2502 長野県下高井郡野沢温泉村大字豊郷5043-3)。公式サイトの問い合わせフォームから受け付けている。
よくある質問
Q: なぜ野沢温泉の外湯は無料なのか A: 江戸時代から続く湯仲間制度により、地域住民が費用負担・清掃・管理を担っているためである。
Q: どの湯から回ればいいか A: 特にこだわりがなければ、野沢温泉のシンボルである大湯から始め、温泉街の中心エリア(河原湯・松葉の湯・横落の湯)を続けて回ると効率がよい。
Q: タオルは借りられるか A: いずれの外湯も貸し出しは行っていないため、タオルと石けんは持参する。
Q: 熱すぎる湯にはどう入るか A: 掛け湯を十分にしてから入る。大湯や上寺湯などは源泉温度が高いため、無理に長湯をしない。
Q: 冬でも回れるか A: 通年営業しており、冬でも湯めぐりができる。積雪期は路面が凍結しやすいため、足元に注意する。
周辺の温泉をあわせて
野沢温泉以外にも、長野県内には泉質や立地の異なる温泉地が数多くある。あわせて訪ねる場合は、以下のハブ記事で長野県の温泉地全体を確認できる。
https://www.tan-ken.com/ja/blog/1asu9knjv5
※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。
この記事の情報は2026年9月時点のものです。









