東京都の秘湯10選——伊豆諸島の野生温泉と下町黒湯を巡る

東京都は、23区の高層ビル群とは対照的に、伊豆諸島という火山列島を抱える温泉の宝庫である。大島・新島・式根島・神津島・三宅島・八丈島では、太平洋プレートの活動が育んだ塩化物泉やナトリウム泉が随所に湧出する。式根島の御釜湾には断崖の岩場から海中に湧く野生の温泉がある。大潮・干潮・凪・好天という4条件が揃わなければ、近づくことすらできない。一方、都心に目を向ければ、大田区や品川区には創業百年近い黒湯の温泉銭湯が今も営業を続けている。フミン酸を含む黒褐色の湯は、地下深くの地層が育んだ都市型温泉の代表格だ。離島の野生的な湯と都市の黒湯銭湯、対照的な二つの魅力を併せ持つのが東京都の温泉である。今回は、そのなかから特に個性際立つ10か所を厳選した。


1. 大島温泉ホテル(三原山温泉)(東京都大島町)

伊豆大島の中央にそびえる活火山・三原山。その外輪山の一角、標高約500メートルの高みに建つのが大島温泉ホテルである。1959年(昭和34年)4月の開業以来、伊豆諸島有数の歴史を刻んできたこの宿は、伊豆大島で唯一、三原山の懐に抱かれた場所に立地する宿として知られる。火山の地下深くに眠る熱水を汲み上げるため、地下約300メートルまで掘削したボーリング井戸を持ち、火山の恵みそのものを湯として届けている点が、この温泉の何よりの物語である。 汲み上げられる源泉の温度は実に84.2度、pHは6.6の中性で、泉質は単純温泉(低張性中性高温泉)に分類される。高温すぎる湯は加温の必要がなく、自然に冷ましてから浴槽に注がれる。加水も循環もせず、湧き出たままの湯をそのまま満たす源泉かけ流しが守られており、無色透明でありながらどこか懐かしさを感じさせる湯ざわりが特徴だ。神経痛、筋肉痛、関節痛、五十肩、うちみ、くじきなど幅広い効能が伝えられている。 浴場はパノラマ大浴場と風流な露天風呂を男女別に備える。ことに露天風呂は三原山の原生林越しにカルデラの雄大な山容を望む造りで、湯に浸かりながら火山と対峙するような迫力ある景観を独り占めできる。全22室の客室はすべて和室でバス・トイレ付き。夕食では島の名物「椿フォンデュ」をはじめ、伊豆大島ならではの食材を活かした料理が供され、朝食のバイキングも人気が高い。 日帰り入浴は大人800円・小人400円で、朝6:00〜9:00と13:00〜21:00の二部制、年中無休で受け入れている。無料駐車場50台を備え、東京・竹芝桟橋からの東海汽船ジェット船で約1時間45分、大島空港からは送迎バスで約15分というアクセスの良さも魅力。三原山のトレッキングや裏砂漠散策の拠点としても最適で、火山島ならではの雄大な自然と一体になった湯浴みを楽しめる一軒である。
泉質
単純温泉
温度
40℃ ~ 44℃
湧出
動力揚湯
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 6.6
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 800円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
13:00 - 21:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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2. 鶴の湯温泉(小河内荘)(東京都西多摩郡奥多摩町)

奥多摩湖の湖畔にひっそりと佇む民宿・小河内荘で、南北朝時代の延文年間(1356〜1361年)から伝わるとされる鶴の湯温泉に浸ることができる。傷ついた一羽の鶴がこの湯で傷を癒していたという伝説が名の由来とされ、古くから土地の人々に大切にされてきた湯である。かつては「鹿の湯」「虫の湯」「鶴の湯」という三つの源泉が湯元集落に湧いていたが、小河内ダムの建設によって集落ごと湖底に沈み、長らく「幻の温泉」と呼ばれていた。それが平成3年(1991年)、湖底に残された源泉汲み上げポンプが補修整備され、三源泉を合流させて汲み上げるという形で見事に復活を遂げた。 鶴の湯温泉の泉質はアルカリ性単純硫黄泉。実測されたpHは9.68ときわめて高く、つるりとした肌ざわりが印象的な湯である。源泉温度は30.2℃と低めの、いわゆる低温泉に分類され、かすかに卵を思わせる硫黄の香りが立ちのぼる。無色透明の湯であるがゆえに、湯上がりの肌にじんわりと効いてくる感覚を実感しやすい。低温の源泉を加温して浴槽に届けており、湖底から蘇った希少な湯をじっくりと堪能できるのがこの宿ならではの贅沢である。 檜造り二階建ての小河内荘には、2階に桧の香り漂う桧風呂、1階には珍しい菊花石をあしらった菊花石風呂と、趣の異なる二つの浴場が設けられている。朝夕で男女が入れ替わる仕組みのため、滞在中に両方の浴槽を味わうことができるのも楽しみのひとつだ。客室はすべて和室で、冷暖房や冷蔵庫、金庫といった設備も整う。夕食・朝食はいずれも食事処の個室でいただけ、山あいの静けさに包まれながらくつろぎのひとときを過ごせる。 完全予約制、定員8名までという小さな宿だけに、事前の電話予約が欠かせない。1泊2食付きの宿泊料金は大人12,250円(入湯税込)で、支払いは現金のみ。毎年12月20日から2月末までは冬季休業となるため、訪れる際は営業期間の確認を忘れずにしたい。奥多摩湖を望む静かな環境と、幻から蘇った希少な硫黄泉。喧噪を離れて湯治気分を味わいたい人にふさわしい、知る人ぞ知る一軒である。
泉質
単純硫黄泉
湧出
動力揚湯
加温
加温あり
pH値
pH 9.7
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
宿泊予約はこちら
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3. まました温泉(間々下温泉)(東京都新島村)

新島港から歩いてわずか10分。伊豆諸島・新島の玄関口にほど近い瀬戸山の一角に、地域に愛され続けてきた日帰り温泉「まました温泉(間々下温泉)」はある。1983年、地域住民の研修や休養、健康増進の場として村により開設されたのが始まりで、平成14年度には島の名物となる砂風呂が新たに設けられた。建物の随所には新島特産の火山岩「抗火石」が用いられ、島の風土そのものを感じさせるつくりとなっている。 この湯の最大の特徴は、源泉温度79.8℃を誇るナトリウム-塩化物強塩泉であることだ。pHは6.86とほぼ中性で、海水を思わせるほどの塩気の強さが際立つ。美肌の湯として知られるメタケイ酸を豊富に含み、肌をしっとりと整えてくれると評判だ。塩分濃度の高い湯は身体を芯から温め、上がったあとも長く火照りが続くため、湯冷めしにくい湯としてリピーターも多い。 浴場は内湯と露天風呂、無料のサウナを備え、なかでも露天風呂からの眺めは新島随一とも言われる。目の前に広がる間々下海岸の向こうには式根島、さらに神津島までもが一望でき、夕暮れ時には太平洋に沈む夕日が湯面を茜色に染める。隣接する砂風呂は、羽伏浦海岸から運ばれた白砂を熱い源泉で温めたもので、年に2回砂を入れ替えるなど衛生管理にも気が配られている。 営業時間は13時から21時(最終受付20時30分)、定休日は毎週水曜日。料金は大人300円、小学生150円、70歳以上200円と、島の共同浴場らしい手頃さも魅力で、砂風呂は別途大人700円・子供400円で楽しめる。支払いは現金のみのため、来訪時は小銭の用意を忘れずに。新島へは東京・竹芝桟橋からの東海汽船や、調布飛行場からの小型機でアクセスでき、島内観光や羽伏浦海岸でのマリンレジャーと合わせて訪れるのがおすすめだ。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
温度
42℃ ~ 46℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 6.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 300円/子供 150円
営業時間
月火水木金土日祝
13:00 - 21:00◯◯×◯◯◯◯◯
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4. 式根島 御釜湾海中温泉(東京都新島村式根島)

伊豆諸島・式根島は「温泉の島」とも呼ばれるほど野趣あふれる湯に恵まれた島で、地鉈温泉や足付温泉など海辺の名湯が点在する。そのなかでもひときわ異彩を放つのが、御釜湾の沖合にひっそりと湧く御釜湾海中温泉だ。断崖の下、海面すれすれの岩の隙間から立ち上る湯気に気づいた地元の漁師たちの間で語り継がれてきたと言われるが、いつ誰が見つけたのかを示す確かな記録はなく、正式な開湯の由来も定かではない。テレビ番組『所JAPAN』で紹介されたことで一躍脚光を浴び、以降「幻の温泉」として全国の温泉マニアやダイバーの憧れの的となっている。 この温泉が「幻」と呼ばれる最大の理由は、その泉質そのものよりも近づくことの困難さにある。伝えられるところによれば泉質はナトリウム-塩化物強塩泉、無色透明で微かに硫化水素の香りをまとい、なめると潮の塩気とともにわずかな温泉らしい風味が感じられるという。源泉は海底の砂地や崖下の岩の割れ目から湧いており、その温度は75℃から90℃前後とも言われる高温だ。素手で触れればやけどしかねないほどの熱さで、そのままでは到底入浴できない。海水が満ちてきて源泉と混ざり合う一瞬にだけ、ちょうどよい湯加減の小さな湯だまりが生まれる。この「適温ポイント探し」こそが、この温泉最大の醍醐味であり難所でもある。 浴場と呼べるようなものは一切存在しない。脱衣所も柵も看板もなく、あるのはただ大海原と切り立った崖、そして白い波しぶきだけである。式根島港から手配した漁船で御釜湾の沖合まで進み、船を降りたあとは自らの腕と脚で波間を泳いで温泉を目指す。ダイバーの間では、水深12〜23メートル付近の白い砂地からぷくぷくと温泉が湧き出す様子を間近で観察できる、国内でも稀有な「温泉ダイビングスポット」としても知られており、運がよければ温もりを求めて集まるウミガメに出会えることもある。設備は何もないが、その分だけ自然そのものと向き合う濃密な体験ができる。 訪問を計画する際に絶対に押さえておきたいのが、大潮・干潮・べた凪・好天という四条件がすべて揃う日を狙うことである。この条件が整うのは年にわずか数回とされ、島の漁師でさえ「今日は行ける」と太鼓判を押せる日は限られる。安全に入浴できる時間は潮が引いている前後のごく短い時間に限られ、潮が満ちてくると波が押し寄せ危険度が一気に高まるため、長居は禁物だ。遊泳に不安がある人や体力に自信がない人は無理をせず、地鉈温泉や足付温泉など陸から歩いて行ける他の野湯を選ぶのが賢明である。訪れる際は必ず地元の漁師や観光協会に最新の海況を確認し、単独行動を避け、ライフジャケットの着用など安全対策を万全にしたうえで臨みたい。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
温度
35℃ ~ 90℃
湧出
自然湧出
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 ---円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
00:00 - 23:59◯◯◯◯◯◯◯◯
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5. 中之郷温泉 やすらぎの湯(東京都八丈町)

伊豆諸島の南端に近い八丈島は、古くから「南海の秘境」として知られ、島内には複数の温泉が点在する。中之郷温泉「やすらぎの湯」は、島の東部・中之郷地区に八丈町が開いた町営の日帰り入浴施設で、地元では単に「やすらぎ」と呼ばれ親しまれている。源泉には「中之郷温泉2号井」と名付けられた掘削井戸が使われており、島の他の温泉と同様、海に近い立地ならではの塩分を含む湯を今に伝えている。 湯は無色透明のナトリウム-塩化物泉で、源泉温度45.7℃、pH6.0を計測する。海水を思わせるミネラルを豊富に含み、加水によって適温に整えたうえで浴槽へかけ流されているため、塩分特有のとろみと保温効果をしっかり感じられる。八丈島の温泉はいずれも塩化物泉が中心で、湯上がり後も体がぽかぽかと温まり続ける「熱の湯」として知られるが、やすらぎの湯もその例に漏れない。 施設は決して大きくはないが、桧造りの浴槽が置かれた男女別内湯からは、大きな窓越しに黒潮の海がまっすぐ広がる。空気が澄んだ日には、南へ約67km離れた青ヶ島の島影を望むこともでき、湯に浸かりながら伊豆諸島の雄大な海景を独り占めできるのが最大の魅力だ。休憩室にはマッサージ機が無料で用意され、シャンプーやボディソープ、ドライヤーも備わっているため、手ぶらでふらりと立ち寄れる気軽さも支持されている。 営業時間は10:00〜21:00(最終入場20:30)で、定休日は木曜日(ただし祝日・夏期・年末年始は営業)。入浴料は大人300円、小学生および70歳以上の町民は100円と、離島の温泉としては驚くほど良心的だ。八丈島空港から車で約18分、底土港から約21分とアクセスもよく、島内観光や登山(八丈富士・三原山)の合間に立ち寄る日帰り入浴先として重宝する。海風が心地よい夏はもちろん、黒潮の影響で真冬でも比較的温暖な八丈島では、一年を通じて海を眺めながらの湯浴みが楽しめる。
泉質
ナトリウム-塩化物泉
温度
42℃ ~ 46℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 6
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 300円/子供 100円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 21:00◯◯◯×◯◯◯◯
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6. 神津島温泉保養センター(東京都神津島村)

神津島温泉保養センターは、伊豆諸島のほぼ中央、東京から南へ約180km離れた神津島の南西岸、錆崎(さびさき)の海岸線に立つ日帰り温泉施設である。1988年、まず「錆崎温泉大露天風呂」として海に面した岩場に露天風呂が開かれ、1994年に現在の神津島温泉保養センターとして改めて整備された。伊豆諸島は火山活動によって形成された島々であり、神津島もまたその一つ。海底から湧き上がる濃厚な塩化物泉は、島の成り立ちそのものを物語っている。 泉質はナトリウム-塩化物強塩泉。源泉温度は56.5℃、pHは7.37で中性に分類される。毎分420リットルという豊富な湧出量を誇り、成分総計は34.76g/kgに達する。これは海水とほぼ同じ濃度であり、口に含むとはっきりと塩辛さを感じるほど濃い。この源泉は加水によって温度を調整しながら、内湯・露天風呂の双方に源泉かけ流しで供給されている。塩化物泉特有の保温効果が高く、湯上がり後も体がぽかぽかと温まり続けるのが特徴だ。 最大の見どころは、自然の岩場を生かして造られた275平方メートルの大露天風呂。伊豆諸島でも屈指の規模を誇り、100人以上が同時に入浴できるほどの開放感がある。このほか沢尻湾を一望できる小露天風呂、屋根付きの展望露天風呂と、合わせて3つの個性的な露天風呂が揃う。露天風呂はすべて男女混浴のため水着着用が必須だが、持参がなくても1着500円でレンタルが可能。屋内には男女別の内湯があり、気泡浴・打たせ湯・圧注浴といった多彩な浴槽がそろい、こちらも源泉かけ流し。サウナや足湯、レストランも併設され、一日のんびりと過ごせる。 営業時間は11:00〜20:00(最終受付19:00)で、毎週水曜が定休だが、7〜9月の夏季シーズンやゴールデンウィーク、年末年始は無休で営業する。入浴料は大人800円、子供400円と手頃。神津島港からは村営バスの西海岸ルートで約10分、「温泉保養センター前」バス停下車すぐ。徒歩でも約40分で到達できる。日没後は満天の星空を眺めながらの入浴も楽しめるため、夕食後の時間帯に訪れるのもおすすめだ。神津島へは東京・竹芝桟橋からジェット船で約4時間、調布飛行場から新中央航空で約45分とアクセスは決して短くないが、その分だけ訪れる価値のある秘境の湯といえる。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
温度
42℃ ~ 57℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 7.4
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 800円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 20:00◯◯×◯◯◯◯◯
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7. 三宅島 ふるさとの湯(東京都三宅村)

三宅島は東京から南へ約180km、伊豆諸島のほぼ中央に浮かぶ火山島である。その西岸、阿古(あこ)地区の高台に湧くのが「ふるさとの湯」だ。1995年、三宅村が「ふるさと体験ビレッジ」の中核施設として整備し開業したが、2000年の雄山噴火により全島避難が決定、島民は5年近くにわたり島外での生活を余儀なくされた。2005年の避難指示解除後、2007年6月にようやく営業を再開し、今日では三宅島に残る唯一の温泉として、島民の憩いの場であると同時に訪れる旅人にとっても欠かせない立ち寄り湯となっている。 この湯の最大の個性は、その色にある。泉質はナトリウム-塩化物強塩泉で、源泉温度43.5℃、pH6.5の中性泉。ごく微量ながら鉄分を含んでおり、空気に触れることで酸化し、湯船全体がまるで薄い紅茶のような茶褐色に染まる。透明な塩化物泉が多いなかで、この含鉄の色合いは三宅島の火山性土壌が育んだ独自性そのものだ。舐めると塩気がはっきりと感じられるほど濃く、湯上がり後も体の芯まで温まった状態が長く続く、保温効果の高い湯として知られている。 館内には露天風呂が1つ、男女別の内湯が2つ用意されている。内湯は大きなガラス窓が特徴で、湯に浸かりながら太平洋の水平線を一望できる開放的な造り。そして何より評判なのが、露天風呂から望む夕景である。三宅島の西側に位置するという立地を活かし、日没が近づくと、太平洋の水平線に沈む夕陽が空と海面を茜色に染め上げていく。湯船に体を沈めながらこの光景を眺める時間は、他の追随を許さないこの温泉ならではの体験と言える。 営業時間は4月から9月が11:00〜21:00、10月から3月は11:00〜20:00で、毎週水曜定休(8月は無休)。入浴料は大人500円、小人(6〜11歳)250円と手頃で、毎月26日は150円になる特典もある。三宅島へは調布飛行場から新中央航空で約50分、または竹芝桟橋から東海汽船の夜行便で約6時間半かかるため、日帰りではなく宿泊を伴う旅程になることが多い。だからこそ、島での一日の締めくくりに、夕陽を眺めながらこの茶褐色の湯にゆっくりと浸かる時間を組み込むことをおすすめしたい。バリアフリー対応も整っており、幅広い世代が安心して利用できる島の温泉である。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
温度
40℃ ~ 44℃
pH値
pH 6.5
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 500円/子供 250円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 21:00◯◯×◯◯◯◯◯
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8. 武蔵小山温泉 清水湯(東京都品川区)

品川区小山、活気ある武蔵小山商店街のすぐそばに佇む「武蔵小山温泉 清水湯」は、大正13年(1924年)創業、三代にわたり地域に愛されてきた銭湯である。かつて「品川では温泉は出ない」というのが業界の常識であった時代、経営難に直面した二代目は一世一代の勝負に出た。掘削の末、平成6年(1994年)に深さ200メートルから黒湯の湧出に成功し、来客数は一気に3倍に膨れ上がったという。その後を継いだ三代目太郎氏は「銭湯にもう一つ温泉があってもいいじゃないか」と、平成19年(2007年)にさらに深い1500メートルの井戸を掘り、都内屈指の濃厚な療養泉「黄金の湯」を掘り当てた。一軒の銭湯が性質の異なる2本の自家源泉を持つのは全国的にも珍しく、銭湯として初めて大深度温泉かつ療養泉の認定を受けた施設として、多くの温泉ファンや温泉マイスターたちを惹きつけている。 清水湯最大の特徴は、黒湯と黄金の湯という性質のまったく異なる2つの天然温泉を同じ屋根の下で楽しめることにある。黒湯は100万年以上前の地層に由来するメタケイ酸含有のナトリウム-炭酸水素塩泉(モール泉)で、源泉温度18.6℃・pH8.3のアルカリ性。フミン酸とミネラルを豊富に含み、濃い琥珀色の湯からはモール泉特有の香ばしい香りが立ちのぼる。源泉が低温であるため加温・循環・塩素消毒を行いつつ、高濃度ナノバブルを充填することで、なめらかな肌当たりを実現している。一方の黄金の湯は、地下1500メートルから湧く古代海水由来のナトリウム-塩化物強塩泉(高張性弱アルカリ性)。源泉温度38.0℃・pH7.8で、成分総計は18.66g/kgと極めて濃厚、ヨード分も豊富である。濃いミルクティー色の湯には微かな石油臭があり、加水も加温もせず源泉かけ流しのまま提供される。ひとつの銭湯で泉質・色・香りのまったく異なる2種類の本物の温泉に浸かり比べられる贅沢は、他に類を見ない。 浴室は決して広大ではないが、工夫が凝らされている。露天風呂は上下2段の構成で、上段には黄金の湯、下段には黒湯がそれぞれ張られており、行き来しながら泉質の違いを体感できる。デッキチェアも6台用意され、湯上がりに夜風にあたりながら寛ぐのもよい。内湯にはハイパージェットバスや電気風呂、ジャグジーが揃い、約90度の乾式サウナと水風呂も人気が高い。2階には女性専用の岩盤浴(45分1500円)と無料の休憩スペースがあり、フロントでは名物の温泉卵や飲み物も販売されている。下町情緒あふれる武蔵小山商店街の一角にありながら、本格的な温泉施設としての満足度の高さが、地元客と遠方からの温泉ファンの双方を惹きつけている理由だろう。 営業時間は平日・土曜・祝日が12:00~24:00、日曜のみ8:00~24:00と朝から利用でき、定休日は月曜(祝日の場合は営業)。入浴料は大人550円、中学生500円、小学生200円、幼児無料という銭湯価格でありながら2種類の本格天然温泉が楽しめるのは大きな魅力だ。東急目黒線「武蔵小山駅」から徒歩5分、首都高速2号目黒線 荏原出口からも車で約5分とアクセスが良く、専用駐車場(10台、2時間無料)もあるため、仕事帰りや商店街での買い物のついでに立ち寄る利用者も多い。夜遅くまで営業しているため、休日の日中に混雑を避けて訪れたい場合は平日の開店直後や深夜帯が狙い目である。武蔵小山を訪れた際は、ぜひ黒湯と黄金の湯、2つの源泉の違いを「入り比べ」してみてほしい。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩泉
ナトリウム-塩化物強塩泉
温度
40℃ ~ 42℃
湧出
動力揚湯
供給
一部かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 8.3
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 550円/子供 200円
営業時間
月火水木金土日祝
12:00 - 24:00×◯◯◯◯◯08:00-24:00◯
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9. 蒲田温泉(東京都大田区)

蒲田温泉は、昭和12年(1937年)に創業した東京都大田区蒲田本町の老舗温泉銭湯である。戦後の一時期には近隣の病院から通う患者たちが療養のために通ったと伝えられており、地域の湯治場としての役割も担ってきた。現在の建物は昭和61年(1986年)に建て替えられたもので、レトロな趣を残しながらも清潔に保たれた館内は、90年近い歴史を感じさせながらも古びた印象を与えない。京急蒲田駅・JR蒲田駅からほど近い住宅街の一角にありながら、地元客はもちろん、黒湯目当てに遠方から訪れる湯めぐりファンも少なくない。 泉質はナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉。地下深くから汲み上げられる黒湯は、太古の地層に堆積した植物由来のフミン酸などの有機物を豊富に含み、まるで濃いコーヒーのような漆黒の色合いを呈する。大田区一帯に点在する黒湯温泉の中でも、蒲田温泉の濃さは都内屈指と評されることが多く、湯船に手を入れると水面下わずか数センチで指先が見えなくなるほどの濃度を誇る。源泉は18℃前後の冷鉱泉のため加温のうえ、衛生管理のために循環ろ過・塩素消毒を行い提供されている。とろりとした肌触りとほのかな磯の香りが特徴で、入浴後は肌がすべすべになると評判である。 浴室には黒湯の高温・低温浴槽のほか、電気風呂、ジェットバス、水風呂、男女別のサウナが揃い、日帰り入浴施設として一通りの設備が充実している。2階には蒲田温泉食堂と舞台付きの大宴会場を備え、入浴後に一杯やりながらくつろげる昔ながらの銭湯文化を今に伝えている。手ぶらセット(入浴料・タオル・館内着込みで800円)を用意しているため、着替えを持たずにふらりと立ち寄れるのも魅力だ。 営業時間は10:00〜24:00で年中無休、大人550円というリーズナブルな料金で気軽に立ち寄れる。JR・京急蒲田駅からは徒歩、またはバスでのアクセスが可能で、無料駐車場は2台分とごく限られているため、公共交通機関の利用がおすすめだ。仕事帰りの一杯と一風呂を求める平日夜や、休日の昼下がりなど、時間帯によって異なる客層で賑わう。羽田空港にも近いため、フライト前後の時間調整を兼ねて黒湯を楽しみに立ち寄る旅行者もいる。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩・塩化物泉
湧出
動力揚湯
供給
循環式
加温
加温あり
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 550円/子供 200円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 24:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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10. 京王高尾山温泉 極楽湯(東京都八王子市)

高尾山は「江戸の奥座敷」として親しまれる一方、その本質は千三百年を超える信仰の山である。天平16年(744年)、聖武天皇の勅命を受けた行基菩薩が東国鎮護の祈願寺として開いたと伝わる高尾山薬王院を中心に、永和年間(1375年~1379年)には京都・醍醐寺から入った俊源大徳が飯縄権現を守護神として奉り、以来この山は飯縄信仰と修験道の道場として栄えてきた。天狗が飯縄大権現の眷属とされることから「天狗の棲む山」とも呼ばれ、琵琶滝・蛇滝という二つの滝行の場は今なお一般の参加者を受け入れている。京王高尾山温泉 極楽湯は、そうした山岳信仰の聖地の玄関口、高尾山口駅の改札を出てすぐの場所に、平成27年(2015年)に開業した比較的新しい施設だが、登拝と入浴をひとつの体験としてつなぐ役割を担っている。 泉質はアルカリ性単純温泉で、pH9.9という強アルカリ性を示す。源泉温度は26.2度とやや低めだが、毎分300リットルという豊富な湧出量を誇り、平成24年(2012年)10月から掘削を進めた末に地下約1,000メートルから掘り当てた自家源泉である。天然温泉を用いる露天岩風呂では加温のみを行い、加水も循環もしない源泉そのものの湯を提供しており、とろりと柔らかな浴感から「美肌の湯」として評判を集めている。微弱白色・澄明で、かすかな硫化水素臭が山の温泉らしい雰囲気を醸し出す。 浴場は多彩で、露天には温度の異なる「ぬる湯」「あつ湯」を選べる天然温泉露天岩風呂のほか、日本では珍しい人工炭酸泉を再現した露天炭酸石張り風呂がある。内湯にはマイクロバブルを採用した絹風呂、季節ごとに趣向を変える替り風呂、遠赤外線サウナ、座り湯、水風呂が揃い、登山で疲れた脚腰をじっくりとほぐせる構成になっている。湯上がりにはお食事処でとろろそばなどの軽食を楽しみ、うたた寝処や有料の貸座敷でくつろぐこともできる。 最大の魅力は、京王高尾線「高尾山口駅」の改札を出てすぐ隣という抜群のアクセスにある。登山靴のまま数十歩で入館できるため、汗を流した後にわざわざ移動する必要がない。営業時間は8時から22時30分(最終入館21時45分)まで年中無休、入浴料金は平日大人1,100円・土日祝日は1,300円(子供はそれぞれ550円・650円)。紅葉シーズンの土日は登山客と入浴客で大変混雑するため、早朝の入館や平日の利用がおすすめである。専用駐車場(約90台、3時間無料)もあるが、繁忙期は公共交通機関の利用が現実的な選択となる。
泉質
アルカリ性単純温泉
温度
39℃ ~ 42℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 9.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 1100円/子供 550円
営業時間
月火水木金土日祝
08:00 - 22:30◯◯◯◯◯◯◯◯
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総まとめ——東京の湯を旅する前に知っておきたいこと

東京都の温泉は、伊豆諸島・多摩・23区という3つのエリアに分けて考えると計画が立てやすい。

【伊豆諸島エリア】 大島温泉ホテル、まました温泉、式根島御釜湾海中温泉、中之郷温泉やすらぎの湯、神津島温泉保養センター、三宅島ふるさとの湯の6か所は、いずれも離島にある。竹芝桟橋から東海汽船の客船で向かうことになる。大島へはジェット船で約1時間45分、新島・式根島へは約2時間20分かかる。神津島・三宅島・八丈島へは4〜7時間を要するため、日程は最低でも1泊2日を見込みたい。神津島温泉保養センターは3つの露天風呂がすべて混浴・水着着用制のため、水着を持参する必要がある。式根島の海中温泉は正規の入浴施設ではない。漁船のチャーターと遊泳装備を準備し、大潮・干潮・凪・好天という4条件が揃う日を待つ必要がある。台風シーズン(8〜10月)は欠航が相次ぐため、船の運航状況は出発直前まで東海汽船の公式サイトで確認しておきたい。

【多摩エリア】 鶴の湯温泉(小河内荘)は完全予約制・現金のみの一軒宿である。JR奥多摩駅からバスで約20〜25分、冬季(12月20日〜2月末)は休業する。京王高尾山温泉極楽湯は京王高尾線高尾山口駅の改札を出てすぐの立地にある。高尾山登山と組み合わせた日帰りプランが組みやすい。両施設とも新宿から2時間以内で到達でき、同じ多摩エリアでも山中の一軒宿と駅直結の日帰り温泉という対照的な体験ができる。

【23区エリア】 武蔵小山温泉清水湯と蒲田温泉は、いずれも黒湯を有する下町の温泉銭湯で、東急目黒線・JR京浜東北線沿線から徒歩圏内にある。清水湯は1994年掘削の黒湯(モール泉)と2007年掘削の「黄金の湯」という異なる2本の源泉を持つ。二段構成の露天風呂で両方の湯に「入り比べ」できる。蒲田温泉は1937年創業、フミン酸を含む濃い黒湯が特徴で、年中無休10:00〜24:00と滞在の自由度が高い。両施設とも入浴料は550円前後と手頃で、荷物を軽くしたまま気軽に立ち寄れる。

離島の温泉を訪れる際は、伊豆諸島特有の海況リスクを踏まえたスケジュールの余裕が欠かせない。多摩・23区の温泉は公共交通機関のみで日帰り可能なため、離島遠征の前後に組み合わせるモデルコースも検討したい。

※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。

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