山形の秘湯10選 - 日本屈指の秘湯・温泉をご紹介!

山形県は全35市町村すべてに温泉が湧く「温泉王国」として知られています。その中でも特に秘湯と呼ばれる温泉は、アクセスの困難さや標高の高さ、一軒宿としての孤高の佇まいなど、特別な魅力を持っています。今回は山形県内の秘湯を10件ご紹介します。

1. 姥湯温泉 桝形屋(山形県米沢市)

姥湯温泉
姥湯温泉 

吾妻連峰の大日岳と薬師岳に挟まれた標高1,300メートル、山形県内で最も高所に位置する秘湯。開湯は天文2年(1533年)と伝えられ、約500年の歴史を誇る。桝形屋の初代が山師として金山を探している際、山姥に教えられて発見したという伝説が宿名の由来となっている。

三方を奇岩奇石が聳え立つ絶壁に囲まれた混浴露天風呂「山姥の湯」は、他では味わうことのできない絶景が広がる。内湯は男女別の檜風呂、露天風呂は3つあり、すべて源泉かけ流し。乳白色の温かみのある湯が特徴で、春の新緑、夏の避暑、秋の紅葉と四季折々の魅力がある。

駐車場から宿までは徒歩15〜20分の山道を歩く必要があり、まさに秘湯中の秘湯といえる。建物は2004年から翌年にかけて新築改装され、山小屋風のおしゃれな佇まいとなっている。

  • 泉質:単純酸性硫黄泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=3(混浴1、女性専用2)
  • 源泉温度:63度
  • 湯量:720リットル/分
  • 加水・加温なし
  • 日帰り入浴:可(大人600円、9:30〜15:30、露天風呂のみ)
  • 宿泊:可(1泊2食付13,542円〜)
  • 営業期間:4月下旬〜11月上旬(冬季休業)

姥湯温泉 桝形屋について詳しくは以下リンクへ

2. 蔵王温泉(山形県山形市)

西暦110年頃、日本武尊の東征の際に従軍した吉備多賀湯によって発見されたと伝えられる、開湯約1,900年を誇る日本屈指の古湯。標高880メートルに位置し、古くは最上高湯、高湯と呼ばれ、福島県の高湯温泉、白布温泉と共に奥羽三高湯の一つに数えられる。

5つの源泉群から分かれる47の源泉があり、湯量は毎分約5,700リットル、1日約8,700トンと全国でも有数の豊富な湧出量を誇る。泉質は強酸性の硫黄泉で、pH1.5〜1.6と全国第2位の強酸性を持つ。この強酸性と絶大な洗浄力・漂白力から「美人づくりの湯」として知られ、肌を白く滑らかにする効果がある。

温泉街には3つの共同浴場(上湯、下湯、川原湯)があり、特に川原湯は湯船の底から直接源泉が湧き出ているのが特徴。春から秋にかけては「蔵王温泉大露天風呂」が開設され、200人が一度に入れる大規模な露天風呂で森林浴を楽しめる。

国内有数の規模を誇る蔵王温泉スキー場を併設しており、冬季はスキー客でも賑わう東北最大級の総合マウンテンリゾートとなっている。

  • 泉質:酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物泉
  • 源泉かけ流し(施設により異なる)
  • 浴槽:共同浴場3軒、日帰り入浴施設5軒、宿泊施設66軒
  • 源泉温度:各源泉により異なる
  • pH:1.5〜1.6
  • 日帰り入浴:可(共同浴場200円、大露天風呂550円など)
  • 宿泊:可(多数の宿泊施設あり)
  • 営業期間:通年営業

3. 滑川温泉 福島屋(山形県米沢市)

吾妻連峰の板谷峠に位置する、標高約900メートルの秘湯。米沢八湯の一つで、落差80メートルのすだれ状の滑川大滝と美しいナメ沢が織りなす渓流沿いにポツンと佇む一軒宿。200年以上の歴史を持ち、現在は14代目が湯守を務めている。

電気も水道も通っておらず、水力発電と貯水タンクの水で賄うという、まさに秘湯の名にふさわしい環境。自家源泉を3つ持ち、すべて源泉かけ流し。青白く濁る湯は肌に優しく、含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉の泉質は中性で、長時間入浴しても肌に負担がかかりにくい。

渓流沿いの岩風呂、檜風呂、内湯などがあり、特に大露天風呂は16:00〜17:30と9:00〜11:00が女性専用時間となっている。昔ながらの湯治場の雰囲気を色濃く残し、自炊湯治も可能な秘湯上級者向けの宿。

  • 泉質:含硫黄-ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・硫酸塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=大露天風呂1、檜風呂1
  • 源泉温度:自然湧出
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可(1泊2食付22,506円〜)
  • 営業期間:4月下旬〜11月上旬(冬季休業)

4. 新高湯温泉 吾妻屋旅館(山形県米沢市)

西吾妻連峰天元台の麓、標高1,126メートルに位置する一軒宿。宿の標高はまさに「イイフロ(1126)」と覚えやすい。周囲1キロメートル四方に他の建物がない、まさに孤高の秘湯。源泉に最も近く、建物を建てられる平らな場所として選ばれた立地は、アクセスの困難さと引き換えに最高の温泉環境を提供している。

5つの露天風呂と1つの内湯を持ち、すべて源泉100%かけ流し。特に「眺望露天風呂」からは米沢藩町割りの目印として知られる兜山や、遠くには飯豊朝日連峰を望むことができる。樹齢250年の栗の木をくりぬいて造った「根っこ風呂」や、白金の滝を望む「滝見風呂」など、個性的な湯船が揃う。

貸切風呂は濃厚な濁り湯で、他の風呂とは異なる単独源泉を使用。冬季は雪のため一般車両でのアクセスが困難となり、宿の送迎車「エンタープライズ号」での送迎が必須となる。まさにアトラクション気分の急坂を登ると、別世界が広がる。

  • 泉質:含硫黄・カルシウム-硫酸塩温泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=5(混浴3、女性専用1、貸切1)
  • 源泉温度:55.6度
  • 日帰り入浴:可(大人500円、中学生未満250円、13:00〜16:00)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業(冬季は送迎必須)

5. 大平温泉 滝見屋(山形県米沢市)

米沢市の南、西大巓や藤十郎などの峰を擁する吾妻連峰の山中、標高1,050メートルに位置する秘湯中の秘湯。貞観2年(860年)に狩人によって発見されたと伝わり、1,100年以上の歴史を持つ。最上川の源流にのぞみ、胃腸によく効くことで名高い。

車でのアクセスは不可能で、駐車場から山道を歩くこと15〜20分、谷にかかるつり橋を渡ってようやく到着する。往きは下り道だが、帰りは登り坂で約30分かかるため、宿泊してゆっくり過ごすのがおすすめ。

最上川源流の渓流沿いにある自然石を積み上げた露天風呂からは、四季折々の渓谷美が望める。内湯からは名勝「火焔の滝」をのぞむことができ、露天風呂と異なる源泉を引いている。周りの自然を独り占めしたような環境で、山の一夜は忘れられない思い出となる。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=1、露天=1
  • 源泉温度:自然湧出
  • 加水・加温なし
  • 日帰り入浴:可(500円、10:00〜16:00)
  • 宿泊:可(1泊2食付12,744円〜)
  • 営業期間:4月下旬〜11月上旬(冬季休業)

6. 白布温泉 東屋(山形県米沢市)

開湯700年以上の歴史を持ち、福島の信夫高湯温泉、山形の最上高湯(蔵王温泉)とともに「奥州三高湯」のひとつに数えられる由緒ある温泉。標高850メートルの山懐に位置する、秘境と呼ぶにふさわしい地で、古くから湯治場として愛されてきた。

特に名物の「滝風呂」は圧巻で、高さ約3メートルから豪快に流れ落ちる湯滝は整体効果もあり、新鮮な源泉が浴槽を満たし続ける贅沢さが魅力。浴槽は400年以上前から使用されており、初代米沢藩主・上杉景勝公や、名君として知られる鷹山公も愛用した歴史的なもの。

かつて上杉米沢藩主の常宿として知られた茅葺の東屋・中屋・西屋の3軒が白布温泉の象徴的な存在だったが、平成12年の火災で東屋と中屋が焼失。その後、東屋は新築され和風旅館として再興された。大きな岩をくり抜いた石風呂や男女別の露天風呂もあり、多彩な温泉を楽しめる。

食事は地元特産の米沢牛を使用したすき焼きやしゃぶしゃぶ、ステーキから選ぶことができ、山の幸や川の幸など季節ごとの味覚を楽しめる。

  • 泉質:カルシウム-硫酸塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=男女別各1
  • 源泉温度:約70度
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

7. 白布温泉 西屋(山形県米沢市)

白布温泉に唯一残る茅葺母屋の古宿。江戸時代より残る築約200年の茅葺入母屋造りの母屋に、築約80年の本陣造りの本館が重厚な佇まいを見せている。母屋の吹き抜けのロビーにある囲炉裏や、磨きこまれた柱や手すりにも歴史の重みと木のもつ温もりが伝わってくる。

江戸末期に御影石で造られたという浴室は、湯治場の名残の打たせ湯もあり、700年の時を経て今なお変わることのない天然温泉が滔々と湯船にあふれている。かつての湯治場の面影を色濃く残し、湯量豊富な温泉と緩やかな時の流れの中で心ゆくまで寛げる。

古きもののよさを大切に、後世に残していこうとする主人の気持ちが随所に表れており、近代化という波の中で暮らしている現代人にとって、自分を見つめなおす人間回帰のひと時を提供してくれる。

  • 泉質:カルシウム-硫酸塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=あり
  • 源泉温度:約70度
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

8. 肘折温泉 元河原湯(山形県最上郡大蔵村)

開湯1,200年の歴史を持つ肘折温泉は、約1,200年前、崖から転落して肘を折った老僧が、この地に湧き出る湯に浸かり傷を治したという伝説に由来する。実際に骨折や傷に特効の湯が湧き、古くから湯治場として賑わってきた。

元河原湯は銅山川の畔に立地し、木の香漂う玄関や囲炉裏のある食事処など、ほっとする雰囲気が魅力。最上階の展望風呂には自家源泉と組合源泉の混合泉があふれ、1階川沿いの貸切風呂は信楽焼の浴槽で自家源泉のみを加温して注いでいる。

泉質はナトリウム-塩化物泉と炭酸水素塩泉の2種類があり、「化粧の湯」「美肌の湯」「温まりの湯」として知られる。葉山の聖水で育つ極上の山菜や地元の伝承野菜を使用した料理は、深山ならではの旬の味を心込めて届けてくれる。

春から秋には名物の朝市が立ち、浴衣に下駄履きでの散策が似合う昔ながらの温泉情緒にあふれている。「日本で最も美しい村」に登録されている大蔵村の自然も魅力。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉、ナトリウム-炭酸水素塩泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=男女別各1、貸切風呂=1
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可(1泊2食付18,700円〜)
  • 営業期間:通年営業

9. 肘折温泉 丸屋旅館(山形県最上郡大蔵村)

限定7室の「大人の隠れ家」として知られる肘折温泉の宿。肘折温泉は3つの源泉(1号源泉、2号源泉、5号源泉)がそれぞれ違う泉質を持つのが特徴で、丸屋のお湯はナトリウム-塩化物泉で、保湿効果が高く体の芯まで温まる「あたたまりの湯」。

目の前にある共同浴場「上の湯」はナトリウム-炭酸水素塩泉で、アルカリ性が高く古い角質を乳化してツルツルのお肌になる「美人の湯」。丸屋旅館では「デトックス」と「保湿」の両方を楽しめる。

露天風呂と月山客室の檜葉箱湯には100%源泉かけ流しの温泉を使用。貸切風呂は24時間いつでも好きな時に入浴可能。2018年のリニューアルで「ひのきの湯」も新設された。

料理は霊峰月山の湧き水が育んだ天然地物の山菜や有機無農薬野菜がメイン。春の山菜から秋のキノコまで、肘折温泉が織りなす四季の味覚を味わえる。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し(露天風呂、月山客室)
  • 浴槽:内湯=男女別各1、露天=1、貸切風呂=あり
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

10. 銀山温泉 能登屋旅館(山形県尾花沢市)

慶長年間(1596〜1615年)に隆盛を極めた延沢銀山の坑夫によって発見された温泉。大正時代の街並みが残り、文化財級の木造建造物が軒を連ねる様は見事で、夜になるとガス灯が暖かな光を放ち、幻想的な景色が広がる。タイムスリップしたかのようなレトロな景観は、多くの観光客を魅了している。

銀山川の両岸に3〜4階建ての木造旅館が立ち並ぶ温泉街は、まさに大正ロマンの世界。レンタル着物で散策しながら、フォトジェニックな撮影を楽しむこともできる。

泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉で、源泉温度は約60度。各旅館では源泉かけ流しの湯を楽しめ、四季折々の表情を見せる渓谷美と共に温泉を堪能できる。冬の雪景色は特に美しく、白銀の世界に包まれた温泉街は格別の趣がある。

アクセスは大石田駅からバスで約40分。山形新幹線の停車駅である大石田駅から送迎バスを運行している旅館も多い。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
  • 源泉かけ流し(施設により異なる)
  • 浴槽:各旅館により異なる
  • 源泉温度:約60度
  • 日帰り入浴:可(施設により異なる)
  • 宿泊:可(多数の宿泊施設あり)
  • 営業期間:通年営業

おわりに

山形県の秘湯は、それぞれが独自の歴史と個性を持ち、訪れる人々を魅了し続けています。標高1,000メートルを超える山岳地帯に点在する秘湯は、アクセスの困難さゆえに守られてきた自然環境と、何百年にもわたって湯守が守り続けてきた温泉文化の宝庫です。

米沢八湯をはじめとする山間部の秘湯は、冬季休業となる宿も多く、春から秋にかけてが訪問の最適期。一方、蔵王温泉や銀山温泉などは通年営業で、冬の雪景色の中での入浴も格別です。

情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。