陶泉 御所坊は、鎌倉時代の建久2年(1191年)に「湯口屋」として創業した有馬温泉最古の旅館であり、830年以上にわたって湯の文化を守り続けてきた名湯の宿である。足利義満や豊臣秀吉といった歴史上の人物がこの地で湯を楽しんだという記録が残されており、有馬温泉の歴史そのものを体現する存在といえる。神戸市北区有馬町の温泉街の中心に佇むその建物は、伝統と現代美が融合した独特の空間を作り上げている。
御所坊で楽しめる「金泉」は、含鉄-ナトリウム-塩化物強塩泉という泉質を持ち、海水の約1.5倍もの塩分濃度を誇る日本有数の名泉である。源泉温度は約90℃以上、pH6.6前後の中性高温泉であり、地中深くから湧き出した直後は無色透明であるが、空気に触れることで鉄分が酸化し、独特の茶褐色(金色)へと変化する。この変色のプロセスこそが「金泉」の名の由来であり、有馬温泉を象徴する最大の特徴である。源泉かけ流しで提供されるその湯は、保温・保湿効果が極めて高く、血流促進、神経痛、関節痛、冷え性、皮膚疾患などへの効能が認められている。
大浴場「金郷泉」は、半露天・半混浴というユニークな設計が施されており、四季折々の有馬の風景を眺めながら入浴を楽しむことができる。浴場全体の美的コンセプトは美術作家・綿貫宏介氏が手掛けており、陶器や石材を巧みに組み合わせた空間は、まさに芸術と温泉の融合である。貸切風呂も用意されており、60分9,900円、90分13,200円で利用可能である。日帰り入浴は大人2,175円(別途入湯税75円)で、11時から15時まで受け付けている。
宿泊では、地元兵庫県の旬の素材をふんだんに使った山家料理が提供され、丹波の食材や瀬戸内海の海の幸が食卓を彩る。全16室の客室はそれぞれに趣が異なり、落ち着いた和の空間で寛ぐことができる。チェックインは15時、チェックアウトは10時で、1泊2食付き39,800円からの料金設定である。神戸電鉄有馬温泉駅から徒歩約5分、阪急バス有馬温泉ターミナルの目の前という好立地にあり、JR三ノ宮駅からもバスで約30分と、神戸市街からのアクセスも良好である。秋の紅葉シーズンや冬の雪景色の時期は特に人気が高く、早めの予約が推奨される。