千葉県の秘湯・名湯9選——火山なき房総の湯を巡る

千葉県には活火山がなく、草津や別府のような強酸性泉・硫黄泉の湯は存在しない。房総半島は太古の海底が隆起した地層でできており、地下深くの地層水が随所で湧く。代表的なのが、太古の植物が分解されてできたモール泉・黒湯で、亀山温泉ホテル・養老渓谷温泉喜代元・御宿の湯がこれにあたる。もう一つは銚子市の犬吠埼温泉と白子町の白子温泉東海荘に湧く約1万年前の化石海水で、銚子ジオパークと千葉科学大学の共同研究により、放射性炭素年代測定でその起源が確認されている。学術的にも希少な温泉といえるだろう。

9か所の湯使いは、源泉かけ流しの一軒宿から加水・加温・循環を採用する旅館まで施設ごとに異なる。濃溝温泉千寿の湯・弁天鉱泉・七里川温泉は加水・循環をしない源泉かけ流し、白子温泉東海荘は加水・加温・循環ろ過・塩素消毒を採用し、亀山温泉ホテル・犬吠埼温泉・千倉温泉千倉館は浴槽によって湯使いが異なる。養老渓谷温泉喜代元は自家源泉の黒湯を持つが、加水・循環の詳細は非公開だ。


1. 濃溝温泉 千寿の湯(千葉県君津市)

濃溝温泉 千寿の湯は、千葉県君津市笹の清水渓流公園入口にひっそりと佇む日帰り温泉である。近隣には、洞窟から差し込む光が水面に反射してハート形を描き出すことで知られる「濃溝の滝・亀岩の洞窟」があり、SNSなどで話題を集めるフォトスポットのすぐ裏手に、この小さな一軒湯が湧いている。房総の里山を流れる笹川の河川敷から自然湧出する温泉を、地域で長く守り続けてきた貴重な施設である。 泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉、いわゆる「重炭酸ソーダ泉」で、pHは8.63の弱アルカリ性を示す。源泉温度は15.5℃と冷鉱泉に近い低温だが、成分の濃さゆえに温泉法上の「温泉」の基準を満たしている。加水・循環濾過・消毒は一切行わず、加温のみで湯船に注がれる源泉かけ流しは、開発が進んだ千葉県内では今や希少な存在だ。「美肌の湯」の呼び名にふさわしく、わずかに黄色みを帯びた透明な湯はとろりとした肌触りで、ほのかなモール系の香りが鼻をくすぐる。 浴室は石造りの湯船がひとつだけの、飾り気のない内湯である。手前の洗い場から奥の湯船へと進む素朴なつくりだからこそ、源泉そのものの個性がダイレクトに伝わってくる。貸切風呂も用意されており、周囲を気にせずゆっくりと湯に浸かりたい人にも対応する。館内には広々とした座敷の休憩室があり、マッサージ機を備えるほか、食事処では地元で獲れた川魚料理などを味わうことができ、湯上がりのひとときをのんびりと過ごせる。 営業時間は10:30〜21:00で、定休日は火曜日(祝日の場合は営業し、翌水曜日が休みとなる)。料金は大人1,000円、子供500円と手頃で、無料駐車場も完備されているため車での訪問がしやすい。最寄りのJR久留里線・上総亀山駅からは要予約のデマンドタクシーを利用する必要があり、公共交通機関のみでの訪問はやや計画が必要だ。ハート形の光が差し込む「濃溝の滝」の鑑賞は早朝が狙い目とされているため、日の出前後に滝を訪れたあと、汗を流しに立ち寄るという組み合わせが特におすすめである。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩泉
湧出
自然湧出
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 8.6
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 500円
営業時間
月火水木金土日祝
10:30 - 21:00◯×◯◯◯◯◯◯
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2. いろりの宿 七里川温泉(千葉県君津市)

房総丘陵の懐、小櫃川の源流域に分け入った先にたたずむ一軒宿、いろりの宿 七里川温泉。1984年(昭和59年)6月に温泉として開湯し、平成7年(1995年)7月、経営者の鈴木護氏が旅館業を開始した。開業当初はペンション風の建物だったが、会議室に設けた囲炉裏が思いがけず評判を呼び、特注の大型囲炉裏を備えるまでになったという逸話が残る。山歩き客の受け入れに合わせて周辺の登山道整備にも力を注ぐなど、地元・君津市黄和田地区との結びつきを大切にしながら、千葉県内でも屈指の秘湯として知られるようになった。 自慢の湯は、千葉県では珍しい単純硫黄泉。pHは7.9で、うっすらと硫黄の香りをまとった、とろりとやわらかな湯ざわりが魅力だ。源泉温度は15℃と冷鉱泉に近い低温のため加温して浴槽に注がれているが、公式サイトは「温泉はすべて源泉かけ流し」と明言しており、常に新しい湯を注ぎ続けるスタイルを守り続けている。リウマチや神経痛、打ち身、婦人病などへの効能が期待できるとされ、肌当たりのやさしさは多くの湯めぐりファンから支持されている。 館内には内湯2つと露天風呂3つを備え、男女入れ替え制で複数の湯船を楽しめる。何よりの名物は、館内中央に据えられた特注の大型囲炉裏だ。エビやホタテ、金目鯛の干物、房総豚のみそ漬け、猪肉のジビエ料理など40種を超える炙りメニューを自分の手で焼き上げながら味わえる。持ち込んだ食材を炭代のみで調理してもらうことも可能で、囲炉裏を囲む時間そのものが旅の思い出になる宿だ。 日帰り入浴は8時から22時(最終受付21時)まで利用でき、大人1,150円、子供500円。定休日は毎月第1・3水曜日なので事前確認が望ましい。宿泊は和室5部屋で、1泊2食付き13,900円から。木更津東ICから車で約30分とアクセスしやすい一方、周囲は小櫃川源流の渓谷美に恵まれ、新緑や紅葉の季節は特に美しい。日中は釣りや渓谷歩きを楽しみ、夜は囲炉裏を囲んでのんびり過ごす、そんな一日を過ごせる宿である。
泉質
単純硫黄泉
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 7.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1150円/子供 500円
営業時間
月火水木金土日祝
08:00 - 22:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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3. 弁天鉱泉(千葉県南房総市)

治承四年(1180年)、石橋山の戦いに敗れた源頼朝は、追手を逃れて神奈川から小舟で海を渡り、安房国(現在の南房総市)に上陸したと伝えられる。その際、近くの池で手を清めると弁財天の御神威が現れたとされ、頼朝はこの地に社を建てて再起を誓ったという。弁天鉱泉の名は、この厳島神社(弁財天)に由来する。以来、鉱泉の湧く地として知られてきたこの一軒宿は、1960年代に開業し、1969年(昭和44年)に現在地へ移転。今なお1日4組限定という規模を守り、静けさを大切にした湯宿であり続けている。 弁天鉱泉最大の魅力は、1日のうちに何度も表情を変える源泉そのものである。公式には乳白・白緑・翡翠の3つを基本色とし、時間帯によって中間色を含む数色に変化するとされ、全国的にも珍しい現象として日本経済新聞でも取り上げられたことがある。源泉温度は14.2度と冷鉱泉に分類されるが、内湯では42.4度前後まで加温して提供される。硫黄・硫化水素・ホウ酸などの成分を含む硫黄泉(硫化水素型)で、独特の硫黄の香りが漂う。循環式ではなく、源泉を毎日総入れ替えするオーバーフロー方式のかけ流しを採用しており、この方式こそが刻々と変わる湯色を生み出す一因とも言われている。 露天風呂は1つのみで、時間帯によって男女が入れ替わる仕組み。湯船に浸かりながら東京湾を一望でき、空気の澄んだ日には海の向こうに富士山を望むこともできる。館内は全11室の小規模な造りで、露天風呂付きの客室も用意されている。食事は宿の夫婦が腕を振るう地魚料理が中心で、南房総ならではの海の幸を味わえるのも人気の理由のひとつだ。 日帰り入浴は10時から15時まで、1時間ごとの貸切制で事前予約が必要。料金は大人2,000円(入湯税別)で、中学生以下は入浴のみ無料。館山自動車道 鋸南富山ICから車で約20分、JR内房線 岩井駅からはタクシーで約10分とアクセスも比較的良い。湯色の変化を楽しみたい場合は、時間帯を変えて複数回訪れるのもおすすめ。1日4組限定のため、宿泊・日帰りともに早めの予約が望ましい。
泉質
硫黄泉(硫化水素型)
温度
14.2℃ ~ 42.4℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 2000円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 15:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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4. 亀山温泉ホテル(千葉県君津市)

房総半島のほぼ中央、亀山湖のほとりに建つ亀山温泉ホテル。この湯の始まりは、意外にも温泉開発とは無縁のところにあった。昭和5年(1930年)、天然ガスの採掘工事中に地中から温泉が湧き出したのが発端だという。以来、地元の人々に愛されながら営業を続けてきたが、昭和47年(1972年)、亀山ダムの建設によって旧源泉は湖の底に沈んでしまう。翌年、現在の場所で新たに源泉を掘り当て、以来半世紀にわたり湯を守り続けている。 泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉、pH8.7の弱アルカリ性。地下2000メートルから毎分600リットル以上が自噴し、ポンプを使わずとも尽きることのない湯量を誇る。もっとも印象的なのはその色だ。太古の植物が地中深くで長い年月をかけて分解されてできた「腐植質」がお湯に溶け込み、チョコレートのような濃い茶褐色に染まる。湯船を覗き込んでも、少し沈んだだけで自分の体が見えなくなるほどの濃度である。肌に触れると、とろりとした「つるすべ」の感触が広がり、保湿力の高さを実感できる、いわゆるモール泉の代表格だ。 館内には男女別の大浴場に加え、貸切露天風呂「兎亀乃湯」や、半露天の「亀楽のゆ」「湯楽のゆ」など、趣向を凝らした湯船が揃う。なかでも男湯にある源泉そのままの冷泉浴槽は必見で、加温せずに26.4℃の湯に浸かることで、地中から湧き出た瞬間の温泉を体感できる貴重な機会となる。食事処では、房総の旬の食材を使った会席料理が味わえ、湯上がりのひとときを彩ってくれる。 日帰り入浴は大人1,000円、子供800円で、11:30〜18:00に利用できる(受付時間は施設に要確認)。駐車場は50台分が無料で、EV充電スタンドも備える。JR久留里線・上総亀山駅から徒歩約12分とアクセスもよいが、同線は本数が少ないため事前の時刻確認が欠かせない。周辺には亀山湖や亀山ダムが広がり、四季折々の景観、特に紅葉シーズンには多くの人で賑わう。房総の自然とチョコレート色の湯めぐりを一度に楽しめる一湯である。
泉質
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
温度
26℃ ~ 42℃
湧出
掘削自噴
供給
一部かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 8.7
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 800円
営業時間
月火水木金土日祝
11:30 - 18:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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5. 御宿の湯(千葉県夷隅郡御宿町)

太平洋を望む千葉県夷隅郡御宿町。白い砂浜と松林で知られるこの海辺の町に、地下800メートルから湧き上がる黒い湯を湛えた日帰り入浴施設「御宿の湯」がある。JR外房線御宿駅から徒歩わずか6分という好立地にありながら、街なかの喧騒を忘れさせる独特の湯を求めて、地元の人々はもちろん、遠方から足を運ぶ湯めぐりファンも少なくない。 御宿の湯を語るうえで欠かせないのが、その黒々とした湯の色ととろみの強さである。泉質はナトリウム-炭酸水素塩泉に分類される低張性・弱アルカリ性の冷鉱泉で、地層の奥深くに蓄えられたミネラル分を豊富に含む。湯船に満ちる湯は黒褐色に色づき、指先を通すととろりとまとわりつくような濃厚な湯ざわりが感じられる。施設側は加水を行わない源泉かけ流しであることを公式に案内しており、海辺の町らしからぬ深みのある湯の個性を、そのままの形で楽しめる点が魅力だ。 浴場には全身をゆったり沈める主浴槽のほか、圧注浴や歩行浴といった機能浴槽が並び、フィンランド式サウナや水風呂も備える。湯上がりには休憩処やラウンジでひと息つくことができ、長湯のあとの体をゆっくり休ませる時間も用意されている。街なかにひっそりと佇む外観からは想像しにくいほど、本格的な黒湯とサウナを併せ持つ懐の深さも御宿の湯ならではの魅力といえる。 入浴料金は大人1,000円(外房エリア在住者は700円)、子供300円。営業時間は季節によって変動し、冬季は平日16:00〜19:00・土日祝14:00〜19:00が目安となるが、夏季は朝風呂の時間帯が設けられるなど大きく変わる。毎週火曜日が定休日(祝日は営業)で、金曜日も不定休となる場合があるため、訪問前には公式サイトで最新の営業カレンダーを確認しておきたい。御宿駅からのアクセスも良く、外房の海水浴や観光と組み合わせて立ち寄りやすいのも魅力のひとつである。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩泉
供給
源泉かけ流し
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 300円
営業時間
月火水木金土日祝
16:00 - 19:00◯×◯◯◯14:00-19:0014:00-19:0014:00-19:00
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6. 白子温泉 東海荘(千葉県長生郡白子町)

白子温泉が姿を現したのは平成元年(1989年)のことである。九十九里浜のなだらかな海岸線が続く白子町で、地下2,000mを掘り進めたボーリング調査によって、天然ガスとともに塩分濃度の高い温泉水が発見された。開湯からまだ40年に満たない若い温泉地でありながら、今では20軒近い宿がこの湯を引いている。町の中心に鎮座する白子神社には、大治元年(1126年)、沖合から白い亀に乗った白蛇が流れ着いたのを里人が見つけ、神として祀ったという伝説が残る。以来、白子の地には「白い蛇の里」としての信仰が根付いており、東海荘が湯を汲む白子温泉もまた、この土地の物語と地続きの存在として旅人を迎えている。 東海荘の源泉はH-106号井から汲み上げられるナトリウム-塩化物強塩泉で、pH7.5、源泉温度は28℃。海水と比べてマグネシウムが少なくヨウ素が多いという白子温泉特有の化学組成を持ち、成分総計は33,113mg/kgと非常に濃い。湯船に満ちるのは琥珀色からウーロン茶のような褐色の湯で、ヨウ素特有の香りと肌に残るほどの塩味が印象的だ。源泉の温度が体温に近いため加水・加温を行い、塩素消毒と循環ろ過を経て浴槽に届けられる。源泉かけ流しではないものの、天然ガス層に閉じ込められた化石海水由来とされる濃厚な塩分とヨウ素は、他の温泉地では味わえない個性である。 浴場は男女別の内湯のみで、露天風呂は設けられていない。決して広大な施設ではないが、地元の人々に長く親しまれてきた素朴な湯治場の雰囲気を残している。宿泊棟は33室を数え、九十九里の海の幸を活かした食事も評判で、素泊まりなら5,500円(税別)からと手頃な価格で利用できる。海岸まで車で数分という立地も魅力で、湯上がりに九十九里浜を散策する楽しみ方もできる。 日帰り入浴は大人600円、12:30〜17:30の受付。ただし土曜日は日帰り入浴を行っておらず、年末の12月30日から1月3日も休業となるため、訪問前に電話(0475-33-2061)での確認が望ましい。無料駐車場は約30台分だが週末や夏の海水浴シーズンは混み合うこともある。車であれば東関東自動車道から九十九里有料道路を経由し白子ICから約3分、公共交通機関ならJR外房線茂原駅から小湊鐵道バスで「白子中里」バス停まで約21分というアクセスも覚えておきたい。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
湧出
掘削自噴
供給
循環式
加温
加温あり
pH値
pH 7.5
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 600円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
12:30 - 17:30◯◯◯◯◯×◯◯
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7. 養老渓谷温泉 喜代元(千葉県市原市)

養老川のせせらぎを間近に望む山あいの一軒宿、喜代元は「黒湯の宿」として知られる。玄関前に自家源泉が湧き、公式サイトも「源泉は玄関前にあり、とどまることなく湧き続けています」と紹介する通り、宿の玄関先で今なお湧出が続いているという珍しい立地が最大の特徴だ。開湯の詳しい年代は定かではないが、養老渓谷温泉郷の一角として古くから湯治の宿として親しまれてきた。 泉質はナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉で、pH8.2のアルカリ性を示す冷鉱泉である。源泉温度は17.8度、湧出量は毎分12.8リットルとごく穏やかな湧き方で、そのままでは入浴できる温度に届かないため加温して浴槽に届けている。ヨード分を含み、とろりと深い色合いを帯びることから「黒湯」と呼ばれ、肌にまとわりつくような独特の湯ざわりが美人の湯として評判を呼んできた。加水や循環ろ過、消毒の実施状況については公式に数値の開示がなく、源泉かけ流しと言い切ることはできない点は留意しておきたい。 浴場は男女別の内湯と、家族で貸し切って使える貸切風呂の二つを備える。露天風呂はないものの、ヒノキをふんだんに使った館内は温かみのある雰囲気に包まれ、全9室という小規模な宿ならではの落ち着いた滞在ができる。2023年9月の台風13号では目の前を流れる養老川が氾濫し、調理場や宴会場のある1階が1.7メートル以上の高さまで浸水する深刻な被害を受けたが、畳や床板の張り替え、浴室タイルの新調などの復旧工事を経て、2024年9月に約1年ぶりの営業再開を果たした。 内湯の利用時間は15:00〜18:30と6:30〜9:00、貸切風呂は18:30〜23:00に先着順・30分以内で利用できる(いずれも宿泊者専用)。2022年7月からは日帰り入浴の受付を終了し、宿泊者限定の旅館として営業している点に注意したい。小湊鉄道・養老渓谷駅から徒歩約20分、または圏央道木更津ICから車で約25分とアクセスも比較的良く、養老渓谷の粟又の滝など周辺の景勝地とあわせて、紅葉シーズンの一泊旅行の宿として計画するのがおすすめだ。
泉質
ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩泉
湧出
自然湧出
加温
加温あり
pH値
pH 8.2
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 不可
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8. 犬吠埼温泉 元湯 黒潮の湯(犬吠埼ホテル)(千葉県銚子市)

犬吠埼は「日本一早い初日の出」の名所として知られる、太平洋に突き出た岬である。その高台に立つ「絶景の宿 犬吠埼ホテル」は、2000年に地下1,300メートルまでのボーリングを行い、自家源泉「黒潮の湯」の開発に成功した。白亜紀前期、およそ1億2千万年前に形成された地層の奥深くから汲み上げられる湯は、長らく火山を持たない房総半島では貴重な温泉資源として注目を集めてきた。 この温泉最大の特徴は、単なる古い地層から湧くというだけでなく、その水そのものが太古の海水に由来する「化石海水型温泉」である点にある。銚子ジオパークと千葉科学大学の共同研究チームは、犬吠埼温泉の複数の源泉について放射性炭素(14C)年代測定を実施し、その結果を査読論文として発表した。測定値は源泉によって異なるものの、いずれも約1万年から1万1千年前という数値を示し、氷期が終わり縄文時代が始まった頃の海水が、地層の中に閉じ込められたまま現代まで残っていたことが科学的に裏付けられている。ナトリウムと塩化物イオンを豊富に含む湯は塩味が強く、肌をしっとりと保湿する効果があるとされ、地元では「肌美人の塩湯」とも呼ばれる。 浴場は、太平洋の水平線を一望できる展望大浴場と、潮風を感じながら入れる露天風呂が中心で、日中は青い海原、夜は犬吠埼灯台の光を眺めながら湯につかることができる。サウナも併設され、湯上がりにはロビーやレストランからも変わらぬ海景を楽しめる。公式には浴槽の一部で源泉かけ流し方式が採用されているとされるが、加水・加温・循環といった湯使いの詳細は浴槽ごとには公表されておらず、館内すべてが源泉かけ流しというわけではない点には留意したい。 日帰り入浴は事前予約不要で、平日は大人1,200円・小人700円、土日祝は大人1,500円・小人900円(GW・お盆・年末年始などの特定日は大人1,700円)。営業時間は月・火が15:00〜21:00、水〜金が12:00〜21:00、土日祝が9:00〜21:00と曜日により異なるため、訪問前に公式サイトで確認するとよい。JR銚子駅から銚子電鉄に乗り換え犬吠駅下車徒歩約5分とアクセスも良く、犬吠埼灯台や初日の出スポットの観光と組み合わせやすいのも魅力である。
泉質
ナトリウム-塩化物強塩泉
供給
一部かけ流し
pH値
pH 7.8
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 ---円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
12:00 - 21:0015:00-21:0015:00-21:00◯◯◯09:00-21:0009:00-21:0009:00-21:00
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9. 千倉温泉 千倉館(千葉県南房総市)

千倉温泉 千倉館は、房総半島の南端近く、太平洋を望む千葉県南房総市千倉町に湯を開く一軒宿である。治承4年(1180年)、石橋山の合戦で大庭景親の軍勢に敗れた源頼朝は、安房国へ逃れて再起を図ったと伝わる。その道中、頼朝の愛馬「羽衣」が脚に傷を負い難儀していたところ、路傍に湧く泉に脚を浸したところ程なく回復し、頼朝はこの霊泉を大いに喜んで英気を養ったという言い伝えが残されている。もっとも、この逸話は後世に語り継がれてきた社伝的な伝説であり、『吾妻鏡』など鎌倉時代の一次史料による裏付けは確認されていない。それでも千倉館は自らを「千葉県最古の出湯」と紹介しており、830年以上にわたって地域に湧き続けてきた歴史そのものが、この宿の大きな魅力となっている。 湯の泉質は含硫黄-ナトリウム-塩化物泉。神経痛、筋肉痛、関節痛、婦人病、疲労回復、冷え性、肩凝り、皮膚病、慢性消化器病、火傷、リウマチなど、幅広い効能が公式に案内されている。特筆すべきは湯使いのこだわりで、男性用大浴場「出陣の湯」・女性用大浴場「羽衣の湯」は源泉におよそ50%の加水を行う一方、貸切露天風呂を含む小浴場では源泉を100%のまま使用している。すなわち、館内のすべての浴槽が源泉かけ流しというわけではなく、浴槽ごとに湯使いが異なる点は事前に理解しておきたい。pH値や源泉温度、加温・循環・消毒の有無について公式資料に明記はなく、その詳細は不明である。 館内には男女別の大浴場に加え、事前予約制の貸切露天風呂が2種類用意されている。太平洋まで徒歩1分という立地から、湯に浸かりながら潮風を感じられるのも千倉館ならではの体験だ。宿泊すれば房総の海の幸をふんだんに使った会席料理も味わえ、素朴ながら温かいもてなしが評判となっている。日帰り入浴のみの利用も可能で、貸切露天風呂は1組ごとの予約制のため、周囲を気にせずゆったりと湯浴みを楽しめる点も魅力である。 日帰り入浴は大浴場が12:30〜19:00(最終受付18:00)、料金は大人1,500円・子供750円(税込)。貸切露天風呂は12:00〜14:00(最終受付13:00)、1組3,000円・利用時間50分で、いずれも事前予約が望ましい。JR内房線・千倉駅からは送迎サービスも用意されている(要予約)。房総半島は温暖な気候で知られ、冬でも比較的過ごしやすいため、南房総の花摘みや海岸線のドライブと組み合わせて訪れるのもおすすめだ。なお、駐車場の台数など一部の情報は公式サイトに明記がないため、訪問前に電話(0470-44-3211)で確認しておくと安心である。
泉質
含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
供給
一部かけ流し
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1500円/子供 750円
営業時間
月火水木金土日祝
12:30 - 19:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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訪問前に確認すること

【内陸房総エリア】 濃溝温泉千寿の湯、いろりの宿七里川温泉、亀山温泉ホテル、養老渓谷温泉喜代元の4施設は、いずれも房総丘陵の山あいに位置する。濃溝温泉千寿の湯は「濃溝の滝・亀岩の洞窟」に隣接する。七里川温泉と亀山温泉ホテルはともに君津市内にあり、車で30〜40分圏内で回れる。養老渓谷温泉喜代元は市原市の養老渓谷沿いにあり、小湊鉄道の養老渓谷駅から徒歩約20分の距離だが、2022年7月以降は日帰り入浴を休止し宿泊者専用である。いずれの施設も公共交通の便が限られるため、レンタカーでの周遊が現実的である。

【南房総エリア】 弁天鉱泉と千倉温泉千倉館は、ともに南房総市の海沿いに位置する。弁天鉱泉はJR内房線岩井駅から車で約10分、千倉温泉千倉館はJR内房線千倉駅から送迎(要予約)を利用できる。両施設とも1日に受け入れられる組数や貸切風呂の利用時間に制限があるため、事前予約が事実上必須だ。

【外房・九十九里エリア】 御宿の湯は夷隅郡御宿町、白子温泉東海荘は長生郡白子町にあり、どちらもJR外房線沿線からアクセスできる。御宿の湯は御宿駅から徒歩約6分と、公共交通機関のみでも訪問しやすい。白子温泉東海荘は土曜日の日帰り入浴を受け付けていないため、平日か日曜・祝日に訪れてください。

【銚子エリア】 犬吠埼温泉元湯黒潮の湯(犬吠埼ホテル)は、県内で最も東に位置する。JR銚子駅から銚子電鉄に乗り換えて犬吠駅で下車すれば、徒歩約5分でたどり着く。

房総半島の内陸部は狭く曲がりくねった道が多く、車での移動時間には余裕をみてください。夏季は九十九里・南房総エリアで海水浴の渋滞が発生し、冬季は内陸部の朝晩が冷え込む。

※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。

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