野湯とは何か?北海道の野湯の特徴
野湯とは、自然の中に存在する温泉が自噴しており、商業施設が存在しない無料の温泉のことです。地域の方々が管理し、無料で開放されている貴重な温泉資源です。
北海道に野湯が多い理由
北海道に多くの野湯が存在する背景には、豊かな自然環境があります。活火山の多さが主な要因で、有珠山、羊蹄山、十勝岳、大雪山などの火山活動により、地下水がマグマの熱で温められ、地表に湧出することで温泉が形成されています。
野湯利用時の重要な注意事項
- 安全対策: ヒグマ対策が必須(熊除けスプレー、鈴の携帯)
- マナー: 地域住民への配慮、清掃への協力
- 利用期間: 多くの野湯は冬季閉鎖される
- アクセス: 道路状況や天候の事前確認が必要
7. ニセコ黄金温泉(蘭越町)- 農家手作りの個人経営温泉
基本情報
- 泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
- 源泉温度: 36.7℃、48.9℃
- pH: 6.8(中性)
- 開湯: 2002年(平成14年)
- 料金: 有料(日帰り入浴のみ)
アクセス・立地
蘭越町黄金地区、JR昆布駅から約3km。田園地帯の中にあり、農家の庭先のような場所に施設があります。
温泉の特徴
2002年に農家が農業用の井戸を掘削した際に温泉が湧出し、個人経営の温泉施設として開業しました。源泉掛け流しで、男女別の内風呂と半混浴の露天風呂があります。
炭酸ガスを多く含み、泡付きが良いことで知られています。露天風呂からはニセコアンヌプリと羊蹄山を望むことができます。
注意点: 厳密には野湯ではありませんが、個人経営の特殊な温泉として野湯愛好家にも人気があります。
1. 吹上温泉 露天の湯(上富良野町)- 北の国からで有名

基本情報
- 泉質: 酸性-カルシウム・ナトリウム-硫酸塩・塩化物泉
- 源泉温度: 47℃
- 利用料金: 無料
- 利用時間: 24時間(年中無休)
- 設備: 簡易トイレ、駐車場あり
アクセス・立地
上富良野駅から上富良野町営バス十勝岳線で約30分、「吹上温泉保養センター前」下車。吹上温泉保養センター「白銀荘」から徒歩5分の雑木林の中に位置します。
温泉の特徴
テレビドラマ「北の国から'95秘密」で田中邦衛と宮沢りえが入浴したシーンで全国的に有名になりました。大きな岩盤の上に築かれた湯船で、すぐ脇を滝が流れ落ちる野趣あふれる立地です。
湯は無色透明で酸味無臭。上段の湯船は熱く、下段は適温に調整されています。冬季は雪を投入して温度調整することもあります。
注意点: 脱衣場や更衣室などの設備はなく、照明もありません。混浴のため、女性は水着やタオルの着用が推奨されます。
2. 鹿の湯(鹿追町)- 然別峡野営場内の川沿い野湯
基本情報
- 泉質: 含食塩重曹泉
- 利用期間: 4月下旬~10月末
- 利用料金: 無料
- 設備: 簡易脱衣場、駐車場あり
- 開設: 昭和61年(1986年)
アクセス・立地
然別峡野営場内、ユーヤンベツ川沿いに位置。鹿追町が公費300万円を投じて約9平方メートル・深さ70センチの湯船を造成しました。
温泉の特徴
明治40年(1907年)に発見された温泉で、全国から温泉愛好家が訪れる人気の野湯です。川のすぐそばにあり、キャンプをしながら温泉を楽しむことができます。
野湯としては比較的整備されており、簡易な脱衣場も設置されています。川の水を利用した温度調整も可能です。
注意点: 混浴で、水着や下着での入浴は禁止されています。
3. セセキ温泉(羅臼町)- 海中に現れる幻の温泉
基本情報
- 泉質: 含硫黄-ナトリウム-塩化物泉
- 源泉温度: 64℃
- 利用期間: 7月~9月中旬(天候により変動)
- 利用料金: 無料
- 特徴: 潮の満ち引きで入浴可能時間が決まる
アクセス・立地
知床半島の羅臼町瀬石地区。海の中に石で組まれた温泉で、満潮時には海に没し、干潮時にのみ入浴可能となります。
温泉の特徴
日本でも極めて珍しい海中温泉として知られ、テレビドラマ「北の国から」にも登場しました。源泉が高温のため、海水と混ざることで適温になります。
注意点: 潮の満ち引きの確認が必須で、干潮時でも源泉が熱すぎる場合があります。
4. 川又温泉(登別市)- 秘境の渓流沿い野湯
基本情報
- 泉質: 単純硫黄泉
- 源泉温度: 約34℃
- 利用料金: 無料
- 発見: 明治41年(1908年)
- アクセス: 登別市幌別市街地から約14km
アクセス・立地
登別市鉱山町の山中、胆振幌別川支流の渓流脇に位置。畳1畳程度の浴槽で、湯底から温泉が湧出しています。
温泉の特徴
1908年に川又兵吉によって発見され、1932年に湯治宿が開業しましたが、1956年の台風で建物が流失し廃業しました。現在は野湯として利用されています。
注意点: 未舗装林道を4km、駐車場から徒歩約800m(20分)。渡渉箇所があり、増水時は危険です。熊の出没地域のため、熊除けグッズが必須です。
5. 平田内温泉 熊の湯(八雲町)- 川沿いの岩風呂
基本情報
- 泉質: ナトリウム-塩化物泉
- 源泉温度: 約70℃
- 利用期間: 4月下旬~10月末
- 利用料金: 無料
- 設備: 簡易脱衣場あり
アクセス・立地
八雲町熊石、熊石ひらたない荘から約3km。平田内川沿いに位置し、岩をくり抜いて造られた野趣満点の露天風呂です。
温泉の特徴
大きな岩をくり抜いたような温泉で、川の流れも激しく、まさに秘湯の雰囲気を味わえます。源泉は70℃と高温のため、ホースで川の水を入れて適温に調整します。
注意点: 秋の紅葉シーズンは特に美しく人気ですが、冬季は閉鎖されます。
6. 水無海浜温泉(函館市)- 海岸沿いの野湯
基本情報
- 泉質: ナトリウム-塩化物泉
- 特徴: 海岸沿いの温泉
- 利用料金: 無料
- 効能: 筋肉痛、関節痛、神経痛、リウマチなど
アクセス・立地
函館市椴法華地区の海岸沿い。太平洋を望む絶好のロケーションにあります。
温泉の特徴
海岸近くの温泉で、波の音を聞きながらの入浴が楽しめます。地元の方々によって管理されており、無料で利用できます。
注意点: 天候や潮の状況により利用できない場合があります。
8. 中岳温泉(東川町)- 標高1800mの天空の秘湯
基本情報
- 泉質: 硫黄泉(白濁)
- 標高: 約1800m
- 特徴: 大雪山中岳中腹の登山道上の野湯
- 利用期間: 7月下旬~8月(残雪・天候による)
- アクセス: 旭岳ロープウェイ姿見駅から徒歩2~3時間
アクセス・立地
大雪山旭岳山系、中岳の中腹に位置する日本最高地点の野湯の一つです。旭岳から間宮岳への縦走ルート、または裾合平からのピストンルートでアクセス可能です。
温泉の特徴
源泉は非常に高温のため、周辺に設置されたスコップで川の水と混ぜて適温に調整します。2つの湯船があり、主に登山客が足湯として利用していますが、掘り下げれば全身入浴も可能です。
注意点: 本格的な登山装備が必須。ヒグマの生息地域で、登山経験が必要です。天候により容易にアクセスできなくなります。
9. カムイワッカ湯の滝(斜里町)- 知床の温泉が流れる滝
基本情報
- 泉質: 強酸性硫黄泉
- 特徴: 川全体が温泉になっている滝
- 利用期間: 7月~10月初旬
- アクセス: 知床自然センターからシャトルバス(期間限定)
- 予約制: 2023年より事前予約が必要
アクセス・立地
知床半島の活火山・硫黄山から湧出する温泉がカムイワッカ川に流れ込み、川全体が温泉となっています。アイヌ語で「神の水」を意味する特別な場所です。
温泉の特徴
一の滝から四の滝まで4つの滝があり、上流に向かうほど水温が高くなります(最終的に35~38℃)。川底から温泉が湧出し、各滝壺が天然の露天風呂となっています。
注意点: 2023年より予約制アクティビティとなり、以前のような自由な利用はできません。強酸性のため肌の弱い方は注意が必要です。
10. ニセコ新見温泉(蘭越町)- 奥ニセコの歴史ある秘湯
基本情報
- 泉質: カルシウム・ナトリウム-硫酸塩泉
- 発見: 明治41年(1908年)
- 源泉温度: 65℃
- 特徴: 毎分300L自噴、飲泉可能
- 現在の状況: 営業状況要確認
アクセス・立地
ニセコ連峰目国内岳中腹の山中に位置。明治41年に新見直太郎によって発見され、100年以上の歴史を持つ秘湯です。
温泉の特徴
無色無臭ながら豊富なミネラルを含む良質な温泉で、「日本秘湯を守る会」の会員宿として知られていました。神経痛、リウマチ、喘息、胃腸疾患などに効能があるとされ、湯治の宿として親しまれています。
注意点: 2016年に一度閉館し、2017年に再開したものの、その後の営業状況が不安定です。訪問前の確認が必須です。
野湯利用時の必需品チェックリスト
基本情報
- 泉質: ナトリウム-塩化物・炭酸水素塩・硫酸塩泉
- 源泉温度: 36.7℃、48.9℃
- pH: 6.8(中性)
- 開湯: 2002年(平成14年)
- 料金: 有料(日帰り入浴のみ)
アクセス・立地
蘭越町黄金地区、JR昆布駅から約3km。田園地帯の中にあり、農家の庭先のような場所に施設があります。
温泉の特徴
2002年に農家が農業用の井戸を掘削した際に温泉が湧出し、個人経営の温泉施設として開業しました。源泉掛け流しで、男女別の内風呂と半混浴の露天風呂があります。
炭酸ガスを多く含み、泡付きが良いことで知られています。露天風呂からはニセコアンヌプリと羊蹄山を望むことができます。
注意点: 厳密には野湯ではありませんが、個人経営の特殊な温泉として野湯愛好家にも人気があります。
野湯利用時の必需品チェックリスト
安全対策グッズ
- 熊除けスプレー: ヒグマ対策として必須
- 鈴: 熊に人間の存在を知らせる
- 爆竹: 緊急時の威嚇用
- 笛: 緊急時の合図用
入浴・着替え用品
- 替えの下着: 泉質により衣服が着色する場合あり
- タオル: 貸し出しがない場合が多い
- ビニール袋: 濡れた衣服の持ち帰り用
- 水着: 女性は着用推奨の場合あり
その他
- 現金: 近隣施設の利用時
- 地図・GPS: 道に迷わないため
- 懐中電灯: 照明がない場合の備え
- 携帯食料・水: 長時間の移動に備え
野湯利用時の重要なマナー
地域住民への配慮
- 駐車場の適切な利用: 指定された場所以外への駐車は避ける
- 騒音の防止: 大声での会話や音楽の再生は控える
- ゴミの持ち帰り: 必ずゴミは持ち帰る
- 地域のルールの遵守: 各地域の利用規則を確認
温泉利用時のマナー
- 掛け湯: 入浴前は必ず掛け湯を行う
- 石鹸・シャンプーの使用禁止: 自然環境保護のため
- 長時間の独占避ける: 他の利用者への配慮
- 清掃への協力: 可能な範囲で清掃に協力
最適な訪問時期と天候条件
季節別の特徴
春(4月〜5月)
- 雪解け後の利用開始時期
- 虫が少なく快適
- 道路状況要確認
夏(6月〜8月)
- 全ての野湯が利用可能
- 虫対策が必要
- 観光客が多い時期
秋(9月〜10月)
- 紅葉が美しい季節
- 朝晩の冷え込み注意
- 利用終了時期が近づく
冬(11月〜3月)
- 多くの野湯が閉鎖
- 吹上温泉など一部は利用可能
- 雪景色は美しいが危険も伴う
安全な野湯巡りのための事前準備
情報収集
- 営業状況の確認: 利用可能期間や道路状況
- 天候の把握: 天気予報や警報の確認
- 地域情報: 熊の出没情報など
計画立案
- 複数人での訪問: 安全性の確保
- 時間的余裕: 急がない行程の設定
- 緊急時の対応: 連絡手段や避難経路の確認
装備の準備
- 適切な服装: 汚れても良い服装
- 防寒対策: 気温差への対応
- 応急処置用品: 怪我への備え
野湯の現状と保護の重要性
管理体制
北海道の野湯は、地域住民やボランティアによって管理されています。定期的な清掃や安全管理が行われており、利用者のマナーとモラルによって成り立っています。
環境保護
野湯は貴重な自然環境の一部であり、適切な利用により後世に残していく必要があります。利用者一人ひとりが環境保護を意識することが重要です。
利用者の責任
野湯の利用は自己責任が原則です。安全対策を十分に行い、地域のルールを守り、環境保護に努めることが求められます。
まとめ
北海道の野湯は、商業施設では味わえない自然との一体感を楽しめる貴重な温泉資源です。大自然の中での入浴は、都市生活では得られない特別な体験となるでしょう。
しかし、野湯の利用には相応の準備と注意が必要です。安全対策を十分に行い、地域住民への配慮を忘れず、環境保護を心がけることで、これらの貴重な温泉を次世代に残していくことができます。
野湯は地域の宝物です。マナーを守り、感謝の気持ちを忘れずに、北海道の大自然が育んだ温泉の恵みを享受しましょう。
※本記事の情報は2025年3月現在のものです。野湯の利用状況や道路状況は変動する可能性があるため、訪問前には最新情報の確認をお願いします。 ※野湯の利用は自己責任です。安全対策を十分に行い、無理のない範囲での利用を心がけてください。 ※ヒグマの出没地域では、熊除けグッズの携帯と適切な対策が必須です。