秋田県の秘湯10選 - 野湯から宿泊可能な温泉までおすすめをご紹介!

秘湯

秋田県は日本を代表する温泉王国である。北東北の豊かな自然に抱かれた山々や渓谷には、古くから湯治場として親しまれてきた秘湯が数多く点在する。今回は、野湯から一軒宿まで、秋田県が誇る極上の秘湯10選を紹介する。

1. 乳頭温泉郷 鶴の湯温泉(仙北市)

十和田八幡平国立公園内、乳頭山の麓に位置する乳頭温泉郷。その中で最も古い歴史を持つのが鶴の湯温泉である。

元禄14年(1701年)開湯、秋田藩主の湯治場としても利用された由緒ある温泉宿。鶴が傷を癒したという伝説からその名がついたとされる。警護の武士が詰めた茅葺き屋根の長屋「本陣」が今も残り、江戸時代にタイムスリップしたような風情が漂う。

半径50m以内に4種類の泉質が異なる源泉が湧くという珍しい温泉地で、白湯、黒湯、中の湯、滝の湯を楽しめる。混浴露天風呂は乳白色の硫黄泉で、四季折々の自然を眺めながら入浴できる。

食事は山の芋鍋や岩魚の塩焼きなど、地元の食材を使った素朴な郷土料理が味わえる。

  • 泉質:含硫黄-ナトリウム・カルシウム-塩化物・炭酸水素塩温泉ほか
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯=2、露天=数ヵ所
  • 源泉温度:約60度
  • 加水の場合あり
  • 日帰り入浴:可(大人600円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

2. 玉川温泉(仙北市)

玉川温泉
参考:玉川温泉 HP

日本一の強酸性泉として知られる玉川温泉。pH1.05という強烈な酸性度を誇り、単一の湧出口からの湧出量は毎分9,000リットルと日本一を誇る。

「大噴(おおぶけ)」と呼ばれる源泉からは、98度の熱湯が轟音とともに噴き出し、その様子はまさに圧巻。世界でも珍しい塩酸を主成分とした泉質で、ラジウムを含有している。

大浴場には源泉100%浴槽や源泉50%浴槽、弱酸性浴槽など、体調に合わせて選べる多彩な浴槽を備える。また、天然の岩盤浴も有名で、地熱を利用した温泉療法を体験できる。

冬季は本館が閉鎖されるため、通年営業の新玉川温泉の利用がおすすめ。

  • 泉質:酸性-含二酸化炭素・鉄(II)・アルミニウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し(加水あり)
  • 浴槽:内湯=11種類(本館)、15種類(新館)
  • 源泉温度:98度
  • 加水あり
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可
  • 営業期間:本館は4月下旬~12月、新玉川温泉は通年

3. 川原毛大湯滝(湯沢市)

日本三大野湯の一つとして知られる川原毛大湯滝。滝そのものが温泉という全国でも極めて珍しい野湯である。

上流の川原毛地獄で湧出する約96度の源泉が、沢水と混ざりながら流れ下り、高さ約20mの滝となって落下する。滝壺は天然の露天風呂となっており、水着着用で入浴できる。

入浴に適した時期は7月上旬から9月中旬までの夏季限定。天候により温度が変化するため、晴天が続いた日がおすすめ。シーズン中は簡易脱衣所が設置される。

駐車場から徒歩約15分でアクセスできる手軽さも魅力。ただし、野湯のため管理施設はなく、自己責任での入浴となる。

  • 泉質:強酸性硫黄泉
  • 野湯(天然)
  • 浴槽:滝壺
  • 源泉温度:約96度(上流)
  • 加水なし(天然)
  • 日帰り入浴:可(無料)
  • 宿泊:不可
  • 営業期間:7月上旬~9月中旬(冬季閉鎖)

4. 後生掛温泉(鹿角市)

八幡平国立公園内、標高約1,000mに位置する後生掛温泉。「馬で来て足駄で帰る後生掛」と謳われるほど、古くから湯治効果の高い温泉として知られる。

名物は木箱から首だけ出して入る「箱蒸し風呂」。温泉の蒸気で体を温める伝統的な入浴法で、のぼせにくく発汗を促す。他にも美肌効果抜群の「泥風呂」、気泡が心地よい「火山風呂」、天然の「蒸気サウナ」など7種類の入浴法が楽しめる。

宿舎の床下に蒸気を通して暖める「オンドル構造」も特徴で、寝ているだけで湯治効果があるという。

周辺には「後生掛自然研究路」があり、泥火山や噴気口など火山活動を間近で観察できる。

  • 泉質:単純硫黄泉
  • 源泉かけ流し(加水あり)
  • 浴槽:内湯、露天、箱蒸し、泥風呂など7種類
  • 源泉温度:約90度
  • 加水あり
  • 日帰り入浴:可(大人700円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

5. 蒸ノ湯温泉 ふけの湯(鹿角市)

八幡平最古の秘湯として知られるふけの湯温泉。標高1,100m、開湯約400年の歴史を持つ一軒宿で、4月下旬から11月までの季節限定営業となる。

最大の魅力は、荒涼とした景観の中に点在する豪快な野天風呂。湯煙が立ち込める地獄谷に、男性用、女性用、混浴(枡風呂、樽風呂、岩風呂)の3種類が配置される。屋根も囲いもない開放的な空間で、大自然のエネルギーを肌で感じられる。

館内には総ヒバ造りの大浴場と露天風呂も完備。敷地内に3本の源泉を持ち、単純温泉と弱酸性泉の2種類の泉質が楽しめる。

子宝の湯としても知られ、玄関には子授けのシンボル「金勢さま」を祀った神社がある。

食事は地元の山菜や川魚を使った「ふけの湯式薬膳料理」が提供される。

  • 泉質:単純温泉、弱酸性泉
  • 源泉かけ流し(加水あり)
  • 浴槽:内湯、露天、野天風呂(混浴含む)
  • 源泉温度:約78度
  • 加水あり
  • 日帰り入浴:可(大人500円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:4月下旬~11月上旬

6. 乳頭温泉郷 黒湯温泉(仙北市)

乳頭温泉郷の最奥に位置し、先達川の上流にある黒湯温泉。4月中旬から11月中旬までの季節限定営業で、ブナ林に囲まれた静寂の秘湯である。

最大の特徴は敷地内に源泉が湧出する河原があり、乳頭温泉郷随一の豊富な湯量を誇ること。沸々と温泉が噴出する様子を眺めながら入浴できるのは、黒湯温泉ならではの醍醐味だ。

男湯、女湯、混浴それぞれにある「打たせ湯」も人気。複数の源泉を持ち、乳白色の硫黄泉や無色透明の単純温泉など、泉質の違いを楽しめる。

古くからの湯治場の雰囲気を色濃く残し、茅葺きの自炊棟も完備。食事はきりたんぽ鍋、比内地鶏鍋、山菜、岩魚など秋田の味覚が堪能できる。

  • 泉質:単純硫黄泉、酸性硫黄泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天、混浴露天
  • 源泉温度:複数源泉
  • 加水なし
  • 日帰り入浴:可(大人800円、9:00~16:00)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:4月中旬~11月中旬

7. 秋ノ宮温泉郷 鷹の湯温泉(湯沢市)

秋田県最古の温泉として知られる秋ノ宮温泉郷。その中でも鷹の湯温泉は、開湯約1,300年の歴史を持つ。

奈良時代の養老年間に行基法師によって発見されたと伝わる古湯で、傷ついた鷹と鷹匠が湯で癒されたという伝説が名前の由来となっている。

清流・役内川のほとりに佇む一軒宿で、名物は深さ約130cmの立ち湯がある大浴場。透明度が高く、足先まではっきり見えるほど澄んだ湯が特徴だ。

混浴の露天風呂や女性専用の半露天風呂など、川を臨みながらの入浴が楽しめる。食事は春の山菜、秋のきのこ、清流で育ったイワナ料理など、四季折々の味覚が並ぶ。

全8室の小さな宿で、昭和レトロな雰囲気が漂う。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し(一部加温)
  • 浴槽:内湯、露天(混浴、女性専用)、野天風呂
  • 源泉温度:約40度(現在)
  • 加温あり
  • 日帰り入浴:可(大人500円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

8. 泥湯温泉 奥山旅館(湯沢市)

開湯約1,200年と伝わる泥湯温泉。山奥のわずかに開けた小盆地に佇む、秘湯の雰囲気に満ちた温泉宿である。

名前の由来は、病に苦しむ乙女が透明な湯に入るのをためらっていたところ、天狗が現れて白く濁らせてくれたという伝説による。

奥山旅館は2019年にリニューアルし、秋田杉や古材を使った趣ある空間となった。3本の自家源泉を持ち、「新湯」「天狗の湯」「川の湯」と、それぞれ個性の異なる湯を楽しめる。

名物は男女別の大露天風呂。広々とした湯船からは周辺の山々を眺めることができ、青白い硫黄泉が豊富にかけ流される。混浴露天風呂には「天狗の湯」が注がれ、湯の花が濃い濃厚な湯を堪能できる。

食事は山菜、きのこ、地元ブランド牛など、秋田の食材を使った料理が並ぶ。

  • 泉質:硫黄泉、単純硫黄泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、大露天(男女別)、混浴露天
  • 源泉温度:複数源泉
  • 加水なし
  • 日帰り入浴:可(大人600円)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

9. 男鹿温泉郷 元湯 雄山閣(男鹿市)

なまはげの里として有名な男鹿半島の一角に位置する男鹿温泉郷。その中でも元湯雄山閣は、源泉直行・噴き流しの湯を楽しめる温泉宿である。

泉質はナトリウム-塩化物泉で、海水に似た塩分を含み、湯冷めしにくい「熱の湯」として知られる。保温効果が高く、美肌にも効果があるとされる。

大浴場ではなまはげの口から温泉が出るユーモラスな演出も。内湯は温度が高めで、露天風呂はぬるめの設定となっており、じっくりと湯を楽しめる。

食事は男鹿名物の「石焼料理」がメイン。海の幸がたっぷりと味わえる。

温泉街には他にも複数の宿があり、湯めぐりチケット(1,000円)で3軒の温泉を巡ることができる企画もある。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物泉
  • 源泉かけ流し
  • 浴槽:内湯、露天風呂
  • 源泉温度:高温
  • 加水の場合あり
  • 日帰り入浴:可
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業

10. 小安峡温泉(湯沢市)

皆瀬川の渓谷沿いに広がる小安峡温泉。約60mの深さを持つV字谷の渓谷美が魅力の温泉地である。

名物は「大噴湯」。遊歩道脇の岩の割れ目から、98度の熱湯と蒸気が音を立てて噴出する様子は圧巻。地球のエネルギーを間近で感じられる自然の造形美だ。

泉質はナトリウム-塩化物・硫酸塩泉で、関節痛や打撲などに効果があるとされる。温泉街には複数の宿や共同浴場があり、それぞれ源泉が異なる。

秋には紅葉の名所としても知られ、10月下旬には渓谷一帯が錦に染まる。冬の雪景色も美しく、四季を通じて訪れる価値がある。

周辺には栗駒山や平泉などの観光スポットもある。

  • 泉質:ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉
  • 源泉かけ流し(宿により異なる)
  • 浴槽:宿により異なる
  • 源泉温度:98度(大噴湯)
  • 加水の場合あり
  • 日帰り入浴:可(施設により異なる)
  • 宿泊:可
  • 営業期間:通年営業(施設により異なる)

おわりに

秋田県の秘湯は、豊かな自然と火山活動がもたらす恵みである。強酸性の玉川温泉から、野湯の川原毛大湯滝、歴史ある鶴の湯温泉まで、それぞれが個性豊かな魅力を持つ。

冬季は雪深く閉鎖される温泉も多いが、だからこそ季節限定の特別な体験が待っている。湯治文化が息づく東北の秘湯で、心身ともに癒される極上の時間を過ごしてほしい。

※情報はリサーチした時点での最新の情報ではありますが、誤りなどがある可能性もあり、最新の情報は公式サイトなどを確認ください。