大阪府の秘湯10選——辰野金吾建築と空海の霊泉を巡る

大阪府は日本屈指の大都市圏であり、温泉のイメージからは遠い県だと思われがちだ。しかし大阪平野を取り囲む北摂・河内・泉州の山間部に目を向けると、ラジウム泉や単純温泉、硫黄泉が湧く一軒宿や日帰り施設が確かに点在する。豊能郡能勢町は北摂山系の懐に複数の源泉を抱え、能勢温泉と山空海温泉が今も営業を続ける一方、汐の湯温泉四季はすでに閉館した。泉佐野市の犬鳴山温泉郷は、空海(弘法大師)が開いたと伝わる修験の霊場で、開創1300年を超える歴史を持つ大阪府唯一の温泉郷である。河内長野市の天見温泉南天苑は、東京駅を手がけた建築家・辰野金吾の設計による木造建築で、国の登録有形文化財に指定されている。池田市の伏尾温泉、貝塚市の奥水間温泉と松葉温泉、高槻市の摂津峡花の里温泉も、それぞれ異なる泉質と景観を持つ湯として地元で親しまれてきた。さらに大阪市此花区には、都市部にありながら源泉かけ流しを守る上方温泉一休のような銭湯もある。大都市の只中と山あいの秘湯が同居するのが、大阪府の温泉の面白さだ。今回は、そのなかから特に個性際立つ10か所を厳選した。


1. 天見温泉 南天苑(大阪府河内長野市)

高野山参詣の古道・紀見峠のふもと、天見川のせせらぎに寄り添うようにして建つ一軒宿、それが天見温泉 南天苑である。その歴史は南北朝時代、流谷八幡神社の宮司が開いた湯治場「極楽温泉」にまで遡るとされるが、寛延3年(1750年)の神社焼失とともに一度は忘れ去られた幻の湯であった。現在の本館が堺市大浜公園から移築されたことが判明したのは2002年のこと。設計者は、東京駅や日本銀行本店を手がけた近代建築の巨匠・辰野金吾。数寄屋風入母屋造の重厚な木造建築は、和風建築を残すことの少ない辰野作品としても貴重で、2003年に国の登録有形文化財に指定された。 南天苑の湯は、単純弱放射能泉に分類される天然ラジウム泉である。源泉温度は約20℃という冷鉱泉ながら、ラドンを含む療養泉としての効能が古くから知られ、切り傷や冷え性、神経痛、高血圧などに効くとされてきた。pHは6.55前後の中性で、無色透明・無味無臭、わずかにとろみを感じる柔らかな肌ざわりが持ち味だ。自家源泉を加温して供給し、循環ろ過や消毒剤に頼らない湯使いを守っているのも、この宿がこだわり続けてきた点である。 本館には男女別の大浴場が設けられ、三千坪におよぶ日本庭園を眺めながら湯に浸かることができる。なかでも特筆すべきは、天見川に面した離れ特別室「清流亭」。1日1組限定で、総檜造りの貸切露天風呂には正真正銘の源泉かけ流しの湯が満ちる。春は庭園を彩る桜、初夏には蛍舞う川辺、秋は燃えるような紅葉、冬は静かな雪景色と、四季を通じて表情を変える景観も魅力のひとつだ。 南天苑は日帰り利用も可能だが、会席料理とのセットプラン(8,800円〜)が基本で、入浴のみの利用はできない点に注意したい。個室は11:30〜14:00まで無料で使え、土曜・休前日は日帰り利用の時間帯が短縮される。南海高野線「天見駅」から徒歩約2分という好立地でありながら、山あいの静けさに包まれた滞在ができるのも、この宿ならではの魅力だろう。
泉質
単純弱放射能泉
温度
40℃ ~ 42℃
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 6.6
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 8800円/子供 ---円
営業時間
月火水木金土日祝
11:30 - 22:00◯◯◯◯◯11:30-14:00◯11:30-14:00
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2. 犬鳴山温泉 山乃湯(大阪府泉佐野市)

大阪府泉佐野市の山あい、樫井川の上流に広がる犬鳴山温泉郷。その最奥に位置する山乃湯は、この温泉郷すべての「湯元」にあたる日帰り入浴施設である。始まりは昭和34年(1959年)頃、現在の経営者の父が温泉掘削会社を興し、山を切り拓いて温泉を探し当てたことにさかのぼる。地下310メートルまで掘り進めてわずか1年足らずで湧出に成功し、そこから大阪府内で唯一の温泉郷としての歴史が始まった。関西国際空港の開港後は「世界に一番近い温泉」として親しまれ、犬鳴山七宝瀧寺の滝行や修験道の霊場とあわせて、近年はパワースポット巡りの目的地としても人気を集めている。 泉質は単純硫黄泉、pHは8.8前後の弱アルカリ性を示す。源泉温度は18℃前後と低く、いわゆる冷鉱泉にあたるため、動力で汲み上げたのちに加温して浴槽へ届けている。湧出量が毎分14リットルほどと限られ、周辺の温泉旅館にも配湯していることから循環方式を採用しているが、加水は一切行っていない。湯はうっすらと笹濁りし、白や茶色の細かな湯の花が舞う。かすかに硫黄の香りが立ちのぼり、肌に触れるととろりとしたぬめりを感じる、いわゆる「美肌の湯」である。 浴場は内湯がひとつのみという、いたって簡素なつくり。派手な装飾はないが、大きく取られた窓からは犬鳴山の豊かな緑を望むことができ、山間の湯治場らしい落ち着いた時間が流れる。休憩スペースには自動販売機が置かれ、名物の釜飯を注文して待ち時間を過ごす利用者も多い。派手な演出よりも、湧いたままの湯質と静かな環境を味わうための温泉だといえるだろう。 利用料金は大人700円、子供300円と手頃で、営業時間は10時から18時まで、定休日を設けず年中無休で通年営業している。新緑や紅葉の季節は周辺の渓谷歩きと組み合わせるのがおすすめで、七宝瀧寺への参拝や滝行見学と合わせて訪れる人も多い。関西国際空港からのアクセスも良く、フライトの前後に立ち寄って旅の汗を流す拠点としても重宝されている。
泉質
単純硫黄泉
温度
40℃ ~ 42℃
湧出
動力揚湯
供給
循環式
加温
加温あり
pH値
pH 8.8
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 700円/子供 300円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 18:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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3. 能勢温泉(大阪府豊能郡能勢町)

大阪市内から車でおよそ1時間、豊能郡能勢町の里山にひっそりと佇む一軒宿、それが能勢温泉である。始まりは1978年(昭和53年)、簡易保険加入者向けの保養施設「かんぽの宿能勢」としての開業だった。時代の流れとともに2007年(平成19年)2月末に一度は幕を閉じたが、「この温泉を無くしたくない」という地元住民の声に後押しされ、わずか3か月後の同年5月には民間経営の温泉旅館として再スタートを切った。閉館からの復活という異色の歴史を持つ温泉である。 泉質は単純弱放射能泉、いわゆるラジウム温泉に分類され、pHは7.9とやや上品な弱アルカリ性を示す。源泉温度は34.2℃で、大阪近郊では珍しい自家源泉100%の湯を有する。館内には加温・加水を一切行わない「源泉風呂」があり、湧き出たままの湯にじっくりと浸かることができる一方、内湯・露天風呂は41℃前後まで加温して提供される。肌への当たりが柔らかく、さらりとした湯ざわりは、繰り返し訪れたくなる魅力のひとつだ。 里山の緑に包まれた庭園露天風呂と、開放感のある大浴場が能勢温泉の湯浴みの中心である。食事処では、旅館直営の農場で収穫した米や旬の野菜をふんだんに使った季節料理が振る舞われ、湯上がりの体を優しく満たしてくれる。さらに敷地内には、2012年にオープンした離れ宿「山辺離宮」があり、楓・柊・桂の3棟それぞれに専用の露天風呂を備える。静かな時間を求める旅にはこちらもおすすめだ。 日帰り入浴は平日11:00〜21:00(大人1,000円)、土日祝は10:00〜21:00(大人1,100円)で楽しめるが、支払いは現金のみとなる点に注意したい。定休日は毎週火曜日(祝日の場合は翌日)。大阪市内からのアクセスは阪神高速11号池田線・木部出口から約30分、または阪急池田駅・能勢電鉄山下駅からの無料送迎バスも利用できる。四季を通じて里山の景色を楽しめるが、紅葉シーズンの週末は混雑するため、時間に余裕を持って訪れたい。
泉質
単純弱放射能泉
温度
34℃ ~ 41℃
供給
一部かけ流し
加温
加温あり
pH値
pH 7.9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 700円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 21:00◯×◯◯◯10:00-21:0010:00-21:0010:00-21:00
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4. 汐の湯温泉 四季(大阪府豊能郡能勢町)※閉館

https://www.tan-ken.com/ja/onsen/65be314d-7e78-46fd-8606-357870b3e979

5. 伏尾温泉 不死王閣(大阪府池田市)

大阪府池田市の山あいにひっそりと佇む伏尾温泉 不死王閣は、大阪市内から車でわずか30分という近さにありながら、深い緑に包まれた一軒宿である。その前身は昭和8年(1933年)、岡本夘一郎が街道の要所に開いた「伏尾の鮎茶屋」に遡る。昭和38年(1963年)、鉄筋コンクリート5階建ての旅館へと改築される際、二代目社長・岡本直文が着目したのが地名「伏尾」の由来だった。平安末期、地元の古刹・久安寺の賢実上人が皇后の安産を祈願し、無事に生まれた皇子が後の近衛天皇になったという言い伝えから、この地は「不死王村」と呼ばれ、やがて「伏尾村」に転じたとされる。「不死王=死なない王様とは縁起がいい」として、屋号「不死王閣」が誕生した。 温泉そのものの歴史は宿より新しく、昭和42年(1967年)のボーリングによって湧出したものだ。自家源泉「伏尾温泉2号泉」はナトリウム-炭酸水素塩泉(アルカリ性低張性冷鉱泉)で、pHは8.99というアルカリ性。源泉温度は25.3℃と低めで、無色透明ながら微かな塩素の香りが漂う。低温湧出であるため加温・加水・循環濾過・消毒のすべてを行ったうえで浴槽に届けられており、いわゆる「源泉100%かけ流し」ではないものの、アルカリ性の強い泉質は肌の角質を柔らかくする効果に優れ、古くから「美肌の湯」として親しまれてきた。効能も神経痛、筋肉痛、冷え性、アトピー性皮膚炎、リウマチ性疾患、痛風、動脈硬化、高血圧、糖尿病、慢性肝胆道疾患、外傷後遺症、疲労回復と幅広い。 浴場は大浴場のほか、寝湯やジェットバスを備えた庭園露天風呂があり、深い緑の庭園に包まれながらの入浴を楽しめる。近年はサウナも充実しており、92℃の高温サウナと20℃の水風呂、ロウリュ、外気浴まで一通り揃う。客室は露天風呂付客室19室を含む多彩な構成で、ペット同伴可能な専用客室も用意される。エステサロン「季さら」やバーベキュー施設、夏季限定のガーデンプールなど、温泉以外の滞在の楽しみも充実している。 日帰り入浴は11:00〜22:00(最終受付21:00)、大人1,800円・小人900円(税込)で利用でき、無料駐車場300台を完備する。阪急宝塚線池田駅からは無料送迎バス(要予約)が1日9便運行しており、車を持たない旅行者にも便利だ。桜や新緑、蛍、紅葉と四季折々の自然を楽しめる立地のため、大阪市内から気軽に日帰りで自然と温泉を満喫したい時期に合わせて訪れるのがおすすめである。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩泉
供給
循環式
加温
加温あり
pH値
pH 9
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1800円/子供 900円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 22:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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6. 奥水間温泉(大阪府貝塚市)

大阪府貝塚市の山あい、水間の渓流に沿ってひっそりと佇む一軒宿が奥水間温泉である。開湯は昭和18年(1943年)、地質調査によって地下に重曹泉の層が眠っていることが判明し、掘削の末に温泉が湧き出たのがはじまりとされる。戦後まもなくは地域の保養所として親しまれ、その後現在の旅館として発展を遂げた。大阪市内からわずか車で50分ながら、谷あいの静けさと川のせせらぎに包まれた「泉州の奥座敷」と称される隠れ宿である。 湧出する湯はナトリウム-炭酸水素塩泉。源泉温度は19.3℃と冷鉱泉に分類されるが、加温を施し内湯は約40℃、露天風呂は約42℃で楽しめるよう調整されている。pHは7.1のほぼ中性で、肌当たりが柔らかく、湯上がりの肌がつるりとすることから「美人の湯」、その効能の豊かさから「奇跡の湯」とも呼ばれ親しまれている。神経痛や疲労回復、慢性皮膚病など幅広い効能が期待できるとされる。 石造りの浴場には、渓流のせせらぎと緑を望む露天風呂と、開放感のある内湯が備わる。客室の一部には専用の露天風呂を設けた部屋もあり、周囲を気にせず湯浴みを楽しめる。食事は地元泉州の旬の食材を用いた会席料理が評判で、名物の温泉湯どうふをはじめ、季節ごとに趣向を凝らした献立が並ぶ。館内にはカラオケルームや卓球台、夏季限定の屋外プールなど、家族連れで一日過ごせる設備も充実している。 日帰り入浴(入浴のみ)は大人1,100円、子供(0〜12歳)660円で、11時から20時まで利用できるが、土日祝は休館となるため注意したい。会席料理付きの個室プランであれば予約制で年中無休、女子会プランなど趣向を凝らしたコースも用意される。アクセスは阪和自動車道「貝塚IC」から約8分、電車の場合は南海本線貝塚駅から水間鉄道に乗り継ぎ「水間観音駅」で下車後、無料送迎バスかタクシーで約5分。新緑や蛍が舞う初夏、紅葉が渓谷を彩る秋など、四季を通じて違った表情を見せる山里の湯として、大阪近郊からの日帰り旅行にもふさわしい。
泉質
ナトリウム-炭酸水素塩泉
温度
40℃ ~ 42℃
湧出
動力揚湯
加温
加温あり
pH値
pH 7.1
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1100円/子供 660円
営業時間
月火水木金土日祝
11:00 - 20:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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7. 松葉温泉 滝の湯(大阪府貝塚市)

大阪府貝塚市木積、近木川のせせらぎが響く山あいにひっそりと佇む「松葉温泉 滝の湯」。開湯の詳しい経緯を伝える一次資料は残っていないが、2013年(平成25年)1月に客室専用の露天風呂を備えた新棟がオープンし、それ以前から日帰り温泉として地域の人々に親しまれてきた歴史を持つ。泉州地域の温泉施設として貝塚市の公式観光サイトや泉州観光ガイドにも紹介され、地元では馴染み深い一軒として知られている。 この宿の湯は単純弱放射能泉、いわゆるラドン温泉である。地下深部の花崗岩の亀裂を通って湧き上がる源泉はpH8.4の弱アルカリ性、源泉温度は26.8℃、湧出量は毎分83.3リットルを誇る。低温の源泉であるため加温・循環ろ過・消毒を経て浴槽に届けられる循環式ではあるが、ラドン泉特有の「一度温まると湯冷めしにくい」効果は健在で、高血圧や動脈硬化、痛風などへの効能が伝えられている。 館内には男女別の内湯と屋根付き半露天風呂を用意するほか、総客室数わずか6室という贅沢な宿泊棟には、それぞれの部屋に専用の露天風呂が設けられている。日帰り入浴の客も御食事処「扇」で食事を楽しみながら、1,997円以上の注文で無料入浴券がもらえるサービスを利用できる。近木川と緑を望む半露天風呂は、新緑や紅葉の季節に特に趣を増す。 日帰り入浴は9時から21時(最終受付20時30分)まで、大人720円、子供350円で営業している(詳細は要確認)。阪和自動車道貝塚ICから車で約5分、南海貝塚駅・水間観音駅からバス利用でもアクセスできるほか、宿泊者には貝塚駅からの無料送迎もある。関西国際空港からも30分ほどの距離にあり、空港帰りや泉州観光の締めくくりに立ち寄るのにも適した一軒である。
泉質
単純弱放射能泉
湧出
自然湧出
供給
循環式
加温
加温あり
pH値
pH 8.4
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 720円/子供 350円
営業時間
月火水木金土日祝
09:00 - 21:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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8. 摂津峡花の里温泉 山水館(大阪府高槻市)

大阪府高槻市の北部、芥川が刻んだ渓谷「摂津峡」の奥深くに佇む摂津峡花の里温泉 山水館は、大阪みどりの百選にも選ばれた景勝地にただ一軒建つ温泉旅館である。摂津峡は古くから大阪近郊の避暑地・行楽地として親しまれ、渓流沿いには奇岩や滝が点在し、桜や紅葉の名所としても知られてきた。そうした景勝の地に自家源泉を掘り当て、都市近郊にいながら深山幽谷の趣を味わえる一軒宿として発展してきたのが山水館である。 山水館の魅力は、性質の異なる2本の自家源泉を持つことにある。大浴場「大岩見風呂」「花の湯」に注がれる壱号泉はラドンを含むアルカリ性単純温泉(泉温28.5℃)で、渓谷を望む露天風呂に使われる弐号泉はナトリウム-炭酸水素塩泉、いわゆる重曹泉(pH9.2、泉温42℃、重曹含有量850mg/kg以上)だ。重曹泉特有のとろりとした湯触りは肌をなめらかに整えるとされ、地元では古くから「美肌の湯」として親しまれている。神経痛や筋肉痛、冷え性、疲労回復などへの効能も知られ、日々の疲れを癒すのに適した泉質といえる。 浴場は男女別の大浴場に加え、内湯と半露天からなる貸切風呂「曲水の湯」を用意し、家族やカップルでも周囲を気にせず湯浴みを楽しめる。渓谷側の客室からは芥川のせせらぎと緑の斜面を望むことができ、四季の移ろいを間近に感じながら過ごせるのも山水館ならではの魅力だ。夕食にはダイニング「山詩 UTA」で川魚や地の食材を活かした料理が供され、多目的ホールや宴会場も備えるため、法事や宴席の利用にも対応する。 日帰り入浴は11:30〜15:00・16:00〜20:00(最終受付19:00)で楽しめ、料金は大人1,400円・子供800円(レンタルタオル付)。ただし15:00〜16:00は清掃のため入館を控える必要があり、露天風呂は天候により休止する場合もあるため訪問前の確認が望ましい。宿泊は1泊2食付き平日23,100円〜。大阪市内から車で約30分というアクセスの良さを活かし、JR高槻駅からの無料送迎バス(要予約)も利用できるため、日帰りでも宿泊でも計画しやすい。紅葉シーズンの摂津峡散策とあわせて訪れるのがおすすめだ。
泉質
アルカリ性単純温泉
ナトリウム-炭酸水素塩泉
温度
28.5℃ ~ 42℃
pH値
pH 9.2
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 可/日帰り 可
入浴料
大人 1400円/子供 800円
営業時間
月火水木金土日祝
11:30 - 20:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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9. 山空海温泉(大阪府豊能郡能勢町)

大阪府豊能郡能勢町、田尻川のせせらぎに沿って山道を進んだ先に、屋根いっぱいに描かれた赤い温泉マークが目印の一軒宿がある。山空海温泉は、鍼灸院を営んでいたオーナーが「この一帯にはかつて湯治場として源泉が湧いていた」という言い伝えを頼りに、1991年に地下約70メートルを掘り当てたことに始まる。当初は鍼灸院の患者専用の湯治・リハビリ施設だったが、1995年の阪神・淡路大震災でお風呂に入れない被災者が続出した際、無償で場所を開放したのを機に一般開放へと歩みを進めた。地下1000メートル級の掘削も珍しくない大阪府において、地下70メートルという浅さで温泉を掘り当てたこと自体が異例とされ、以来一度も湯が枯れたことがないという。 泉質は含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型)。源泉は16℃前後の冷鉱泉で、加水はせず加温のみで湯温を整え、消毒も行わない正真正銘の源泉かけ流しである。浴槽は42℃前後の熱め湯、32℃前後のぬる湯、そして無加温の16℃源泉冷泉の3種類に分かれ、蛇口(カラン)からも硫黄の香り漂う源泉がそのまま流れ出る。無色透明の湯はつるりとまとわりつくような肌当たりで、神経痛や関節痛、冷え性、皮膚病などに効くとされる。関西でこれほど硫黄の香りと味がしっかり感じられる温泉は珍しく、湯を飲むとほのかに卵の風味がするとも言われる。 施設は決して大きくはなく、洗い場は2つ、更衣室も広くはないが、その素朴さこそがこの温泉の持ち味である。長年、地元の管理人が受付から清掃、日々の湯守までを一人でこなしており、近所の人が留守番をしているかのような、どこか懐かしいアットホームな雰囲気が漂う。シャンプーやボディソープの備え付けはないため、入浴の際は各自で洗面用品を持参する必要がある。 営業時間は季節により変動し、4〜9月は月〜水曜10:00〜18:00・土曜10:00〜19:00・日祝8:00〜19:00、10〜3月はやや短縮される。定休日は木曜・金曜で、臨時休業もあるため訪問前の電話確認が望ましい。料金は大人1,000円、小人500円、幼児300円。過去に台風による浸水被害で券売機が故障して以降は現金での手渡し払いとなっており、混雑を避けたいなら平日の時間帯がおすすめだ。狭い山道を進んだ先にある「秘湯」だけに、大型車での来訪には向かないが、その分俗化されていない素朴な湯を静かに楽しむことができる。
泉質
含硫黄-ナトリウム-炭酸水素塩泉(硫化水素型)
温度
16℃ ~ 43℃
湧出
掘削自噴
供給
源泉かけ流し
加温
加温あり
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 1000円/子供 500円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 18:00◯◯◯××10:00-19:008:00-19:008:00-19:00
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10. 上方温泉 一休(大阪市此花区)

大阪湾に面した此花区酉島の、工場や倉庫が立ち並ぶ臨海部の一角に、純和風の建物がふと現れる。上方温泉一休は、ユニバーサル・スタジオ・ジャパンから車でわずか10分という立地にありながら、まるで温泉旅館を思わせるたたずまいで街の人々を迎えてきた「街の湯治場」である。大阪・京都に店舗を展開する一休グループの大阪店として、USJ帰りの観光客から近隣の常連客まで幅広く受け入れており、西九条駅やユニバーサルシティ駅からの無料送迎シャトルバスが運行していることからも、観光地と生活圏の両方に根を張った存在であることがうかがえる。 泉質は単純温泉(低張性・弱アルカリ性・高温泉)で、pHは8.06、源泉温度は50.3℃、湧出量は毎分約760リットルにのぼる。この施設が誇るのは「一切加水をしない」という湯づかいへのこだわりだ。50.3℃で湧き出す源泉を、チタン銅管を用いた二重構造の熱交換器へ通し、水を一滴も加えることなく肌に心地よい温度へ調整している。あふれた湯は再利用せず完全に放流するなど鮮度管理も徹底されており、屋外の壺湯など一部の浴槽には源泉がそのまま注がれる一方、多くの大浴槽では衛生上の理由から循環ろ過と塩素消毒を併用しているため、全体としては「一部かけ流し」の湯づかいとなっている。癖のない無色透明の湯は、肌にまとわりつくような柔らかさから古くから「美人の湯」として親しまれてきた。 館内の浴場は、男女が日替わりで入れ替わる「木のゆ」と「石のゆ」の2つに分かれる。木のゆは高野槇の香りに包まれた浴室に樽風呂や打たせ湯を配し、石のゆは源泉そのままの高温、中温、低温にコントロールされた内風呂や、岩をくりぬいたダイナミックな岩風呂、座り湯などを備える。いずれも関西最大級と称される露天風呂を併設し、世界初とうたう超微粒子ミストサウナや木の香り漂う熱気風呂など、2種類のサウナも楽しめる。入浴後は食事処「湯上り茶屋」でひと息つき、「癒しの間」でボディケアやエステを受け、「髪剪處」で身支度を整えるという一連の流れも用意されており、日帰り施設ながら小さな温泉旅を完結できる作りになっている。 営業時間は10:00から24:00(最終受付23:00)までと長く、仕事帰りやUSJ観光の締めくくりにも利用しやすい。定休日は毎月第3火曜日で、それ以外はほぼ年中無休に近い形で営業している。料金は平日が大人750円・小人400円、土日祝は大人850円・小人450円で、幼児は無料。駐車場は150台分を無料で完備しており、車での来訪も安心だ。USJ観光と組み合わせて汗を流したい旅行者にも、此花区・西淀川区周辺で日々の疲れを癒したい地元住民にも、等しく開かれた温泉といえるだろう。
泉質
単純温泉
温度
39℃ ~ 50℃
供給
一部かけ流し
加温
加温なし
pH値
pH 8.1
pH
0714
酸性中性アルカリ性
利用
宿泊 不可/日帰り 可
入浴料
大人 750円/子供 400円
営業時間
月火水木金土日祝
10:00 - 24:00◯◯◯◯◯◯◯◯
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総まとめ——大阪の湯を旅する前に知っておきたいこと

大阪府の温泉は、能勢・泉州・北摂河内・大阪市の4エリアに分けて考えると計画が立てやすい。

【能勢エリア】 能勢温泉、山空海温泉、汐の湯温泉四季(閉館)はいずれも豊能郡能勢町の山中にある。能勢電鉄妙見口駅や日生中央駅からバスに乗り継ぐか、送迎バスを利用する施設が多いため、事前に運行時刻を確認しておきたい。冬季は北摂山系特有の冷え込みと積雪で山道が凍結することがあり、車で向かう場合は防寒・滑り止め対策が要る。汐の湯温泉四季は閉館済みのため訪問先には含められないが、能勢町には他の2施設が営業を続けている。

【泉州エリア】 犬鳴山温泉山乃湯は泉佐野市の山あいにあり、南海本線・泉佐野駅からバスで山中へ向かう。犬鳴山温泉郷は七宝滝寺への参詣路と重なり、渓谷沿いの遊歩道や滝巡りと組み合わせた日帰りプランが組みやすい。夏場は登山道の虫よけ対策、冬場は渓谷特有の冷え込みに注意したい。奥水間温泉と松葉温泉滝の湯はともに貝塚市にあり、南海本線・貝塚駅から送迎バスやコミュニティバスでアクセスする施設が多い。和泉山脈のふもとという立地から、水間観音(水間寺)への参拝と合わせて巡る旅程が組みやすい。

【北摂・河内エリア】 天見温泉南天苑は南海高野線・天見駅から徒歩圏内にあり、公共交通機関だけで無理なく到達できる貴重な一軒宿だ。辰野金吾設計の建物は見学だけでも価値があるため、日帰り入浴の受付可否は事前に公式サイトで確認しておきたい。伏尾温泉不死王閣は池田市にあり、阪急宝塚線・池田駅から送迎バスやタクシーで向かう。摂津峡花の里温泉山水館はJR京都線・高槻駅からバスで摂津峡方面へ向かった先にある。摂津峡は春の桜と秋の紅葉が見どころの渓谷で、季節ごとに景観が大きく変わるため、観光と合わせて訪れるなら時期を選びたい。

【大阪市エリア】 上方温泉一休は此花区にあり、JRゆめ咲線や大阪メトロ中央線の駅から徒歩圏内という、府内で最も気軽に立ち寄れる立地にある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの立ち寄りと組み合わせた利用もしやすい。都市型の銭湯であっても源泉かけ流しを掲げる施設は珍しく、大阪市内で本格的な温泉を求める場合の選択肢になる。

全体として、能勢・泉州エリアの施設は送迎バスやコミュニティバスへの依存度が高く、本数が少ない路線もあるため、車での訪問か事前の時刻確認を推奨する。天見温泉南天苑と上方温泉一休は駅から徒歩で到達できる貴重な存在だ。訪問前には各施設の日帰り入浴の受付時間・定休日・料金を公式サイトで必ず確認しておきたい。

※本記事に掲載している情報(入浴料金・営業時間・泉質データ等)は、リサーチ時点の情報をもとに作成しています。誤りや変更が生じている可能性もあります。最新の情報については、各施設の公式サイトや観光協会等でご確認ください。

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